綺麗な先生は好きですか?

くるむ

文字の大きさ
上 下
106 / 158
第六章

2泊目の朝

しおりを挟む
「……まだ時間があるからゆっくり考えていればいい。お休み、南」
「うん。お休み、先生」

言った通り、俺に腕枕をしてくれた先生は、もう一方の手を俺の背中に回して抱き込んでくれた。暖かい腕の中に囲われて、とっても幸せな気分だ。

……ねえ、先生。
俺だって、しっかり先生に溺れてるんだよ。そういう事、ちゃんと分かってるのかな?

そう心の中で呟いた時、偶然なんだろうけれど、先生が俺を抱く腕にギュッと力を込めた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「ん……」

意識が浮上して目が覚めた。ぽかぽかと温かい中でぼんやりする。
目の前には先生のパジャマがあって、ずっと腕の中で寝てたんだなーと心もほっこり。
先生の顔を見ようと、顔を上げた。

……。
長い睫毛だなぁ。閉じた唇も色っぽいし……。

ジーッと見ていたら、先生の瞼がピクリと動いた。

「……南? 起きてた……のか」
「うん。さっき」

少し寝ぼけた感じの顔が可愛い。そんな表情をこんなに近くで見られるなんて、やっぱり特別な存在って良いなーって再実感。
少し起き上がって顔を覗き込もうと動いたら、先生がピクリと顔を顰めた。

「……って。痺れてギシギシする」

そう言って、先生が腕をギギギと動かしている。

「あ、ごめん俺のせい……」
「んんー? いいよ。まあ、幸せの痛みだろ?」
「――――っ」

起こした体をまた先生に向かってダイブした。だって、幸せが伝染して俺の中を満たしてくれたから。じっとなんてしてられなかった。
抱きついて、またぎゅうぎゅうと引っ付く。

「っ、ててて。おいこら、痺れてるんだってば」
「あ、そうだった」

慌てて先生の腕を揉んであげると、代わりに先生は俺の頭をくしゃりと撫でてくれた。


「ほら、着替えたら顔洗いに行くぞ」
「あ、はい」

たたんだパジャマを慌てて置いて、先生の後に続いて部屋を出た。
下に降りると渚さんがちょうど顔を洗い終えたところだった。

「おはよう、澪。南くん」
「おはよう」
「おはようございます」

まだみんな、起きて来てそう時間が経っていないようで、のんびりした雰囲気だ。
柳瀬さんたちは、椅子に座ってのんびりとお茶を飲んでいる。
先生は、先に顔を洗いに行った。

「南くん」
先生が洗面所に入ったのを見届けて、渚さんにそっと呼ばれた。

「はい、何ですか?」
「昨日は大変だったけど、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。……先生や渚さんに助けてもらったし、嫌がらせは、かなり気持ちは悪かったですけど」

その時のことを思い出して床に目を落としたら、渚さんが俺の頭を軽くポンポンと叩く。
小さな子供にするような、優しい仕草だ。

「あいつ、遠山は元々自意識とプライドの高い奴だったんだが、彼女のせいで澪に変なライバル心を植え付けられてしまっていたんだな」

「もう、解放されましたよね?」
「ああ、大丈夫だろ。あの時の遠山の顔は完全に憑き物が落ちたような顔だったし」
「そう、ですよね……」

渚さんの言葉に、俺は素直にホッとした。
確かにあの時の遠山さんは、夢から覚めたような表情だった。

「澪も、これで少しは南くんの恋人として、学習出来たんじゃないか?」
「え?」
「ああ、いやいや。これは南くんが気にする事じゃなかったな。あ、ほら。顔、洗い終わったみたいだぞ、行ってきたら?」

振り返ると、先生がタオルと歯ブラシを片手に洗面所から出てきていた。

「あ、はい」

なんだか気になる事を言われたのに、さらりと胡麻化された気分だ。
でも、ひらひらと手を振って俺を追いやる渚さんは、たぶん聞いても答えてはくれないだろう。
しょうがないので俺は、洗面所へと向かった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

処理中です...