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第六章
怖い遠山さん
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「おーし、みんな揃ったな。そろそろ焼くぞ」
渚さんが機嫌よくそう言って、トングで肉を掴んだ。
お皿をみんなに配っていた志緒利さんが「あっ」と声を上げる。
「ポン酢忘れちゃってる。タレも!」
「あ、じゃあ、俺行ってきます」
スッと立ち上がった俺に、志緒利さんがすまなそうに眉を寄せた。
「ごめんね。冷蔵庫の横にある小さなかごに、全部入れてあるはずだから。それ持ってきてくれる?」
「分かりました」
焼こうとしている渚さんを待たせるのも悪い気がして、俺は走ってコテージへと向かった。
「ええっと、冷蔵庫の横の……。ああ、あれか」
志緒利さんが言っていた通り冷蔵庫の横に小さな籠があり、中には焼き肉のタレやポン酢、ケチャップやソースまで入っていた。
「結構、足早いんだね」
突然後ろから声を掛けられて、びっくりして振り向いた。
そこには、どういう訳か遠山さんが立っている。
「……? どうしたんですか? 何か忘れものでも?」
他にも持って行かなきゃならないものがあるんだろうか。
キョロキョロと辺りを見回してみるが、それらしきものは何も無いようだった。
「いや。……南くんさ、君、紫藤とデキてるんだろ」
「……は?」
突然思いもよらない事を言われて、体が一瞬にして氷のように冷えた。
恐る恐る遠山さんの顔を見ると、無表情にも思われる冷たい顔で俺を見ている。
「何……、言ってるんですか」
かろうじて絞り出した声は、妙に掠れてしまっていて余計に焦った。遠山さんは、何を考えているのか分からない無表情の顔を崩さないまま、俺に近づいてくる。
「変だと思ってたんだよ。あの紫藤が、個人的に生徒なんかと普通に親しくなんてなるわけないもんな」
「…………」
「今朝起きてきた南くんの顔を見て、疑念が確信に変わったんだよ。可愛いだけじゃなく、変な色気があったもんな。……抱かれたんだろ、紫藤に」
「……!! ば、馬鹿なこと言わないでください! 俺と先生はそんなんじゃないです!」
バクバクと心臓が一気に煩くなった。それと同時に血の気もザッと引く。
「へえ? じゃあ見せてみてよ。君の体に、証拠残ってんだろ?」
「……は?」
気味の悪いことを言って、俺に一歩、また一歩と近づいてくる遠山さんが凄く怖い。俺はじりじりと後ずさり、何とかしてこの場を離れなきゃと焦りながら考えていた。
渚さんが機嫌よくそう言って、トングで肉を掴んだ。
お皿をみんなに配っていた志緒利さんが「あっ」と声を上げる。
「ポン酢忘れちゃってる。タレも!」
「あ、じゃあ、俺行ってきます」
スッと立ち上がった俺に、志緒利さんがすまなそうに眉を寄せた。
「ごめんね。冷蔵庫の横にある小さなかごに、全部入れてあるはずだから。それ持ってきてくれる?」
「分かりました」
焼こうとしている渚さんを待たせるのも悪い気がして、俺は走ってコテージへと向かった。
「ええっと、冷蔵庫の横の……。ああ、あれか」
志緒利さんが言っていた通り冷蔵庫の横に小さな籠があり、中には焼き肉のタレやポン酢、ケチャップやソースまで入っていた。
「結構、足早いんだね」
突然後ろから声を掛けられて、びっくりして振り向いた。
そこには、どういう訳か遠山さんが立っている。
「……? どうしたんですか? 何か忘れものでも?」
他にも持って行かなきゃならないものがあるんだろうか。
キョロキョロと辺りを見回してみるが、それらしきものは何も無いようだった。
「いや。……南くんさ、君、紫藤とデキてるんだろ」
「……は?」
突然思いもよらない事を言われて、体が一瞬にして氷のように冷えた。
恐る恐る遠山さんの顔を見ると、無表情にも思われる冷たい顔で俺を見ている。
「何……、言ってるんですか」
かろうじて絞り出した声は、妙に掠れてしまっていて余計に焦った。遠山さんは、何を考えているのか分からない無表情の顔を崩さないまま、俺に近づいてくる。
「変だと思ってたんだよ。あの紫藤が、個人的に生徒なんかと普通に親しくなんてなるわけないもんな」
「…………」
「今朝起きてきた南くんの顔を見て、疑念が確信に変わったんだよ。可愛いだけじゃなく、変な色気があったもんな。……抱かれたんだろ、紫藤に」
「……!! ば、馬鹿なこと言わないでください! 俺と先生はそんなんじゃないです!」
バクバクと心臓が一気に煩くなった。それと同時に血の気もザッと引く。
「へえ? じゃあ見せてみてよ。君の体に、証拠残ってんだろ?」
「……は?」
気味の悪いことを言って、俺に一歩、また一歩と近づいてくる遠山さんが凄く怖い。俺はじりじりと後ずさり、何とかしてこの場を離れなきゃと焦りながら考えていた。
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