46 / 158
第四章
先生を捕まえた!2
しおりを挟む
「はい、ではみんなゴールしましたね!」
開催委員の元気な声にハッとして顔を上げる。周りを見渡すと、七組全員が揃っていた。
女の先生を選んだのは結局4人で、後は俺同様男の先生を連れてきていた。
「1位は3組です! おめでとうございます」
「あ…、ども」
「えーっと、君の名前は?」
「南です」
「では、南くん。南くんの一番好きな先生は紫藤先生なんですね」
「……あー、はい」
ああ、もう。インタビューなんか要らないから!
早く帰してくれないかな。
「どこが好きなんですか?」
「えっ!?」
どこが好きって……。
もう凄く好きすぎて、全部好きってしか言えない。俺の中すべてが紫藤先生の事だけで埋まってる。
奇麗だし、色っぽいし……、それに横柄だけどちゃんと優しくて…。
「南くん?」
名前を呼ばれて我に返る。思わず本心を心の中で答えていたことに気が付いた。
とはいえ、こんな答えはさすがに言えない。
「あ、えとっ。教え方が上手いところと……、あとは優しいところかな」
「そうですかー。確かに紫藤先生は、優しいよね。では、紫藤先生。南くんに、副賞としてハグをしてあげてください!」
「えっ!?」
「キャーッ!!」
先生がハグってところに反応したんだろう。女子の悲鳴のような甲高い声が、あちらこちらから聞こえてくる。
それには流石に紫藤先生も驚いたようで、ちょっとびっくりした表情をしていた。
「では、お願いします」
委員がとにかく進行を急がせようと、紫藤先生に催促した。それには先生も仕方がないなと言うように苦笑して、俺の真正面に立つ。
「南くん、優勝おめでとう」
そう言いながら、紫藤先生が俺を優しく引き寄せた。そして俺の背中に手をまわして、ふわりと俺の体を包み込む。
久しぶりの先生の甘い匂い。
ずっと求めていて待ち焦がれていた先生の体温が嬉しい。嬉しすぎて、先生をギューッと抱きしめ返したくなる。
思わず、先生の背中に手を回そうとしたところで、先生に背中をポンポンと優しく叩かれ、と同時に女子の悲鳴のような歓声が耳に大きく届いて我に返った。
……ヤベー。
あまりに嬉しすぎて、本能のまま行動するところだった。ここは学校で、しかも公衆の面前だ。
俺は必死で理性を総動員して、上げかけた手をゆっくり下した。
先生の俺の背中に回った腕が、ゆっくり離れていく。
ああ、もう終わりなんだな……。
公衆の面前ってところは気に入らなかったけど、先生に飢えていた俺は、はっきり言ってもう少し堪能していたかった。
「俺は昼飯は、準備室で食うから」
「……え?」
俺だけにしか聞こえない、小さな小さな声。
だけどこれは空耳なんかじゃなくて。
ハグを解いた先生が、ニコリと微笑みかけた。
「紫藤先生、ありがとうございましたー。2年の1位は3組でした。皆さん、お疲れさまでした」
周りの拍手と共に、みんな自分のクラスのもとへと戻って行く。
「次は3年の借り物競争です」
後ろからのアナウンスをBGMに、俺の心はふわふわと先生の背中を追っていた。
開催委員の元気な声にハッとして顔を上げる。周りを見渡すと、七組全員が揃っていた。
女の先生を選んだのは結局4人で、後は俺同様男の先生を連れてきていた。
「1位は3組です! おめでとうございます」
「あ…、ども」
「えーっと、君の名前は?」
「南です」
「では、南くん。南くんの一番好きな先生は紫藤先生なんですね」
「……あー、はい」
ああ、もう。インタビューなんか要らないから!
早く帰してくれないかな。
「どこが好きなんですか?」
「えっ!?」
どこが好きって……。
もう凄く好きすぎて、全部好きってしか言えない。俺の中すべてが紫藤先生の事だけで埋まってる。
奇麗だし、色っぽいし……、それに横柄だけどちゃんと優しくて…。
「南くん?」
名前を呼ばれて我に返る。思わず本心を心の中で答えていたことに気が付いた。
とはいえ、こんな答えはさすがに言えない。
「あ、えとっ。教え方が上手いところと……、あとは優しいところかな」
「そうですかー。確かに紫藤先生は、優しいよね。では、紫藤先生。南くんに、副賞としてハグをしてあげてください!」
「えっ!?」
「キャーッ!!」
先生がハグってところに反応したんだろう。女子の悲鳴のような甲高い声が、あちらこちらから聞こえてくる。
それには流石に紫藤先生も驚いたようで、ちょっとびっくりした表情をしていた。
「では、お願いします」
委員がとにかく進行を急がせようと、紫藤先生に催促した。それには先生も仕方がないなと言うように苦笑して、俺の真正面に立つ。
「南くん、優勝おめでとう」
そう言いながら、紫藤先生が俺を優しく引き寄せた。そして俺の背中に手をまわして、ふわりと俺の体を包み込む。
久しぶりの先生の甘い匂い。
ずっと求めていて待ち焦がれていた先生の体温が嬉しい。嬉しすぎて、先生をギューッと抱きしめ返したくなる。
思わず、先生の背中に手を回そうとしたところで、先生に背中をポンポンと優しく叩かれ、と同時に女子の悲鳴のような歓声が耳に大きく届いて我に返った。
……ヤベー。
あまりに嬉しすぎて、本能のまま行動するところだった。ここは学校で、しかも公衆の面前だ。
俺は必死で理性を総動員して、上げかけた手をゆっくり下した。
先生の俺の背中に回った腕が、ゆっくり離れていく。
ああ、もう終わりなんだな……。
公衆の面前ってところは気に入らなかったけど、先生に飢えていた俺は、はっきり言ってもう少し堪能していたかった。
「俺は昼飯は、準備室で食うから」
「……え?」
俺だけにしか聞こえない、小さな小さな声。
だけどこれは空耳なんかじゃなくて。
ハグを解いた先生が、ニコリと微笑みかけた。
「紫藤先生、ありがとうございましたー。2年の1位は3組でした。皆さん、お疲れさまでした」
周りの拍手と共に、みんな自分のクラスのもとへと戻って行く。
「次は3年の借り物競争です」
後ろからのアナウンスをBGMに、俺の心はふわふわと先生の背中を追っていた。
1
お気に入りに追加
255
あなたにおすすめの小説

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる