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第四章
だってしょーがないじゃんよ!
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俺が落ち込んでいようがどうしようが、時間だけはしっかり過ぎていく。
そして今日は、新入生歓迎スポーツ大会の日だ。
先生と仲直りしようと頑張っていたあの時の気力は底をついたまま、俺は未だ怠さを引きずっていた。
ダラダラと歩きながら、教室へと向かう。
今日は授業がないという解放感からか、なんとなく周りの雰囲気はいつもより騒がしいようだ。
いいよなー、みんな。
なーんにも悩みなんて無くって。
俺なんて、あれからろくに先生の姿も見てないしさ(不貞腐れ過ぎて勝手に先生を見ないようにしていただけだけど)
教室の近くで、女子がたむろしている。甲高い甘えるような耳障りな声に、余計に気分が悪くなった。
(……やさぐれてるな、俺も…)
溜息吐きながら下を向いて歩いていたんだけど、不意に顔を上げたらその輪の中に先生が居て、俺のことをじっと見つめていた。
「……」
いつもの計算された表情じゃなくて。
だけど、しっかり俺のところを見ていて。
心臓が、切なく甘くキュウッと痛んだ。本当に、どんだけ先生のことが好きなんだよ、俺。
「おはよう、南くん」
「……っ、お、おはよう」
絞り出すように返事を返して、俺はつい、そのまま教室の中へと駆け込んでしまった。
…………だって!
だってしょーがないじゃんよ!
突然来られたって、急に素直になんてなれねーよ!
あああ、もうっ!
溜息と自己嫌悪に圧し潰されそうになる。
しばらく俺は、机の上に突っ伏したまま、顔を上げられそうに無かった。
◇◇◇◇◇
「パン食い手繋ぎ競争に出る人は、前に出てください」
ラジオ体操を終えたところでアナウンスが入る。利一と田畑亜美、それともう2組が出て行った。
「頑張れよー、利一ー」
俺らの声援に手を振って、利一は田畑と2人、手を繋いでスタートラインに着いた。
みんなワーワーと声援を送り、手を繋いでダッシュする彼らに笑いながら声援を送る。
以外に盛り上がっているけれど、俺は出ている利一達よりも紫藤先生の方が気になって、キョロキョロと辺りを見渡していた。
どこ居るんだろう先生。
背は高い方だから、すぐに見つかるはずなんだけど。
競技そっちのけで先生を探していたら、赤井に肩を叩かれた。
「おいおい、見ろよ。利一と田畑、結構頑張ってるじゃん」
「あ、うん」
言われて前に視線を向けると、利一と田畑が手を繋いだままパンに食らいつこうと頑張っていた。
競技のルールとしては、絶対に手を離してはいけなくて、しかも2人揃ってパンに食らいつかないといけないという事で、揺れるパンにみんなかなり苦戦を強いられていた。
あちらこちらから声援と共に、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
女装よりマシかもしれないけど、これもかなりやってる方は恥ずかしいに違いない。
ホントに、生徒会はろくでもない事を考えてくれるよな。
そう思って、ハタと思う。
……借り物競争には、一体どんな支持が待っているんだろう。
そして今日は、新入生歓迎スポーツ大会の日だ。
先生と仲直りしようと頑張っていたあの時の気力は底をついたまま、俺は未だ怠さを引きずっていた。
ダラダラと歩きながら、教室へと向かう。
今日は授業がないという解放感からか、なんとなく周りの雰囲気はいつもより騒がしいようだ。
いいよなー、みんな。
なーんにも悩みなんて無くって。
俺なんて、あれからろくに先生の姿も見てないしさ(不貞腐れ過ぎて勝手に先生を見ないようにしていただけだけど)
教室の近くで、女子がたむろしている。甲高い甘えるような耳障りな声に、余計に気分が悪くなった。
(……やさぐれてるな、俺も…)
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いつもの計算された表情じゃなくて。
だけど、しっかり俺のところを見ていて。
心臓が、切なく甘くキュウッと痛んだ。本当に、どんだけ先生のことが好きなんだよ、俺。
「おはよう、南くん」
「……っ、お、おはよう」
絞り出すように返事を返して、俺はつい、そのまま教室の中へと駆け込んでしまった。
…………だって!
だってしょーがないじゃんよ!
突然来られたって、急に素直になんてなれねーよ!
あああ、もうっ!
溜息と自己嫌悪に圧し潰されそうになる。
しばらく俺は、机の上に突っ伏したまま、顔を上げられそうに無かった。
◇◇◇◇◇
「パン食い手繋ぎ競争に出る人は、前に出てください」
ラジオ体操を終えたところでアナウンスが入る。利一と田畑亜美、それともう2組が出て行った。
「頑張れよー、利一ー」
俺らの声援に手を振って、利一は田畑と2人、手を繋いでスタートラインに着いた。
みんなワーワーと声援を送り、手を繋いでダッシュする彼らに笑いながら声援を送る。
以外に盛り上がっているけれど、俺は出ている利一達よりも紫藤先生の方が気になって、キョロキョロと辺りを見渡していた。
どこ居るんだろう先生。
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「おいおい、見ろよ。利一と田畑、結構頑張ってるじゃん」
「あ、うん」
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競技のルールとしては、絶対に手を離してはいけなくて、しかも2人揃ってパンに食らいつかないといけないという事で、揺れるパンにみんなかなり苦戦を強いられていた。
あちらこちらから声援と共に、クスクスと笑い声が聞こえてくる。
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