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第二章
たらしの本領発揮
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今度は俺も大人しく車の中で自宅へのナビをし、無事に自宅に送り届けてもらった。
先生は、遅くなったこともあり自分のせいで怪我までさせてしまったからと言って、挨拶をするからと俺と一緒に玄関まで来てくれた。
俺は俺で、先生には内緒でちょっとした企みがあったので、内心では小躍りしてたんだけど、それはあえて顔に出さないようにと真面目な顔を作っていた。
玄関を開けると、真っ先に妹の和葉が顔を出した。和葉は俺より6歳年下の小学五年生だ。
「お帰りー、お兄ちゃん……」
ニコニコ笑いながら走り寄って来た和葉が、隣の先生を見て固まった。
「こんばんは。妹さんかな?」
お得意の先生の外の顔だ。優しくにっこり笑いかけられて、和葉の顔が真っ赤に染まる。
……兄弟だな、やっぱ。完璧にやられてる。
ホレるなよ。これは、兄ちゃんのだからな。
「こ、こんばんは」
和葉はモゴモゴ言いながら、手もモジモジさせている。そして、タタタッと奥の方に走って行った。
「陽太、お帰りなさい。……陽太から聞きました。先生には、お手数かけてしまったようで、すみませんでした」
タオルで手を拭きながら、母さんが慌てて出て来た。
そして顔を上げた途端、呆けた表情になる。
先生のことだから、きっとその母さんの表情に気が付いたはずなんだけど、そ知らぬ顔で更に爽やかに母さんに笑顔を見せる。
「いいえ、こちらこそ。南くんは、僕と生徒とのいざこざに巻き込まれたようなものなんです。大事なご子息に怪我を負わせてしまうようなことになってしまい、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる先生に、母さんは慌てた。
「気にしないでください」とかなんとか色々言って、先生の顔を上げさせた後、「お一人なんですってね。是非、一緒にご飯を食べて行って下さい」と言った。
「え、あ……、いえ。そんなご迷惑を掛けるわけにはいきませんから……。僕はお詫びを伝えに来ただけですので……」
「何遠慮してんだよ、先生。母さんの飯美味いんだからな。食ってけよ。今日は、色々俺だって先生に迷惑かけてるんだから」
「そうですよ。ご遠慮なさらず。さ、どうぞ」
そう言って母さんがさっさと中に入って行く。それでも戸惑って中に入ろうとしない先生に、俺は業を煮やして先生の腕を引っ張った。
「いいじゃん、せっかくなんだし。……家族と仲良くなってくれたら、俺も嬉しいし」
上目遣いに先生を見て、ちょっと甘えた声を出したら、先生は横を向いて頭を掻いた。
甘えすぎて引かれたかなと心配になったけど、その手をゆっくり下した先生が、今度は俺の頭をクシャっと撫でる。
「……ったく、ホントお前には参るな」
――きゅううっん
な、なんだ俺。
乙女か!
参るのは、俺だよ先生!
だってこれ反則だろ。
硬質で綺麗な先生の、蕩けるような甘い声。
そしてその声と同じような計算されてない先生の、素のままの甘い顔。
母さんに催促されて、家の中に入って行く先生の後姿を眺めながら、俺は一人先生の甘い毒にやられていた。
先生は、遅くなったこともあり自分のせいで怪我までさせてしまったからと言って、挨拶をするからと俺と一緒に玄関まで来てくれた。
俺は俺で、先生には内緒でちょっとした企みがあったので、内心では小躍りしてたんだけど、それはあえて顔に出さないようにと真面目な顔を作っていた。
玄関を開けると、真っ先に妹の和葉が顔を出した。和葉は俺より6歳年下の小学五年生だ。
「お帰りー、お兄ちゃん……」
ニコニコ笑いながら走り寄って来た和葉が、隣の先生を見て固まった。
「こんばんは。妹さんかな?」
お得意の先生の外の顔だ。優しくにっこり笑いかけられて、和葉の顔が真っ赤に染まる。
……兄弟だな、やっぱ。完璧にやられてる。
ホレるなよ。これは、兄ちゃんのだからな。
「こ、こんばんは」
和葉はモゴモゴ言いながら、手もモジモジさせている。そして、タタタッと奥の方に走って行った。
「陽太、お帰りなさい。……陽太から聞きました。先生には、お手数かけてしまったようで、すみませんでした」
タオルで手を拭きながら、母さんが慌てて出て来た。
そして顔を上げた途端、呆けた表情になる。
先生のことだから、きっとその母さんの表情に気が付いたはずなんだけど、そ知らぬ顔で更に爽やかに母さんに笑顔を見せる。
「いいえ、こちらこそ。南くんは、僕と生徒とのいざこざに巻き込まれたようなものなんです。大事なご子息に怪我を負わせてしまうようなことになってしまい、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる先生に、母さんは慌てた。
「気にしないでください」とかなんとか色々言って、先生の顔を上げさせた後、「お一人なんですってね。是非、一緒にご飯を食べて行って下さい」と言った。
「え、あ……、いえ。そんなご迷惑を掛けるわけにはいきませんから……。僕はお詫びを伝えに来ただけですので……」
「何遠慮してんだよ、先生。母さんの飯美味いんだからな。食ってけよ。今日は、色々俺だって先生に迷惑かけてるんだから」
「そうですよ。ご遠慮なさらず。さ、どうぞ」
そう言って母さんがさっさと中に入って行く。それでも戸惑って中に入ろうとしない先生に、俺は業を煮やして先生の腕を引っ張った。
「いいじゃん、せっかくなんだし。……家族と仲良くなってくれたら、俺も嬉しいし」
上目遣いに先生を見て、ちょっと甘えた声を出したら、先生は横を向いて頭を掻いた。
甘えすぎて引かれたかなと心配になったけど、その手をゆっくり下した先生が、今度は俺の頭をクシャっと撫でる。
「……ったく、ホントお前には参るな」
――きゅううっん
な、なんだ俺。
乙女か!
参るのは、俺だよ先生!
だってこれ反則だろ。
硬質で綺麗な先生の、蕩けるような甘い声。
そしてその声と同じような計算されてない先生の、素のままの甘い顔。
母さんに催促されて、家の中に入って行く先生の後姿を眺めながら、俺は一人先生の甘い毒にやられていた。
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