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第二章
奇跡的な存在
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「……ったく、しょーがない奴だな」
そう言って、先生は俺の隣でコーヒーを啜る。
先生の長くて綺麗な指。
思わずじっと見ていたら、先生が俺の視線に気が付いて顔を上げた。
「何、見てるんだよ」
いつもよりぶっきらぼうな物言いだし意地悪な表情だけど、それでもその先生の醸し出す雰囲気はどことなく甘い。
学校での姿が演技だとしても、俺に対する気持ちまでが演技では無いんだと、それとなく紫藤先生の態度が教えてくれている。
「うん……。その、綺麗な指だなぁって……」
「はあ?」
「ぶはっ!!」
先生の甘い雰囲気につい気が緩んで本音を言ったら、渚さんが勢いよく噴き出した。(注:コーヒーは噴き出していませんw)
焦って振り返ると、顔を真っ赤にして悶絶している。
……どうやら、笑いを堪えているようだ(汗)
そんな渚さんを先生は、なんとも言えない表情で見つめている。
そして必死で笑いをこらえて数十秒。渚さんはお腹を擦りながら顔を上げた。そしてハアッと息を吐きだして、まだ残っているコーヒーをグイッと飲み干した。
「あー、わりっ。南くん、お邪魔だろうから俺もう帰るわ」
そう言って、そそくさと立ち上がる。
明らかに気を遣ってくれている渚さんに何だか悪い気がして、俺は慌てて立ち上がろうとした。だけどそんな俺に、渚さんは良いからと手で制して、先生に視線を合わせた。
「柳瀬たちには、澪は忙しくて行けそうにないって言っておいてやるよ」
「そうしてくれ」
「だけど、お前もたまには顔出せよ。結構マジでみんなお前に会いたがってるんだから」
「……気が向いたらな」
本当に興味の無さそうな先生の返事に、渚さんは肩を竦めた。ヤレヤレと言った表情だ。
「しょうが無い奴だなぁ。まあ、いい。南くんのことは、ちゃんと大事にしてやれよ?お前にとっては奇跡と言ってもいいくらいの子だろ?」
え? き、奇跡?
嬉しいけれど、それは言い過ぎじゃあ……?
そう思って先生を振り返ったら、目が合った。凄く、凄く優しい先生の瞳と……。
「ああ、分かってるよ」
紫藤先生の返事に、渚さんは満足したような表情で軽く手を上げ、「じゃあ、またな」と言って玄関を出て行った。
胸の内がジンとする。
横柄でふてぶてしくて、そのせいでどこか近寄りがたい雰囲気にも思えなくも無いのに、それでも先生が醸し出す雰囲気は、学校に居る時よりも、もしかしたら俺のことが特別だと訴えてくれているような気もする。
「南」
俺を呼ぶ硬質で綺麗な先生の声。
振り返ると、先生の顔がすぐ近くにある。
……あ、これって……。
キスのタイミングだ……。
近づく先生の顔に、軽く目を閉じたら――
柔らかい先生の唇が、俺のそれにふわりと重なった。
そう言って、先生は俺の隣でコーヒーを啜る。
先生の長くて綺麗な指。
思わずじっと見ていたら、先生が俺の視線に気が付いて顔を上げた。
「何、見てるんだよ」
いつもよりぶっきらぼうな物言いだし意地悪な表情だけど、それでもその先生の醸し出す雰囲気はどことなく甘い。
学校での姿が演技だとしても、俺に対する気持ちまでが演技では無いんだと、それとなく紫藤先生の態度が教えてくれている。
「うん……。その、綺麗な指だなぁって……」
「はあ?」
「ぶはっ!!」
先生の甘い雰囲気につい気が緩んで本音を言ったら、渚さんが勢いよく噴き出した。(注:コーヒーは噴き出していませんw)
焦って振り返ると、顔を真っ赤にして悶絶している。
……どうやら、笑いを堪えているようだ(汗)
そんな渚さんを先生は、なんとも言えない表情で見つめている。
そして必死で笑いをこらえて数十秒。渚さんはお腹を擦りながら顔を上げた。そしてハアッと息を吐きだして、まだ残っているコーヒーをグイッと飲み干した。
「あー、わりっ。南くん、お邪魔だろうから俺もう帰るわ」
そう言って、そそくさと立ち上がる。
明らかに気を遣ってくれている渚さんに何だか悪い気がして、俺は慌てて立ち上がろうとした。だけどそんな俺に、渚さんは良いからと手で制して、先生に視線を合わせた。
「柳瀬たちには、澪は忙しくて行けそうにないって言っておいてやるよ」
「そうしてくれ」
「だけど、お前もたまには顔出せよ。結構マジでみんなお前に会いたがってるんだから」
「……気が向いたらな」
本当に興味の無さそうな先生の返事に、渚さんは肩を竦めた。ヤレヤレと言った表情だ。
「しょうが無い奴だなぁ。まあ、いい。南くんのことは、ちゃんと大事にしてやれよ?お前にとっては奇跡と言ってもいいくらいの子だろ?」
え? き、奇跡?
嬉しいけれど、それは言い過ぎじゃあ……?
そう思って先生を振り返ったら、目が合った。凄く、凄く優しい先生の瞳と……。
「ああ、分かってるよ」
紫藤先生の返事に、渚さんは満足したような表情で軽く手を上げ、「じゃあ、またな」と言って玄関を出て行った。
胸の内がジンとする。
横柄でふてぶてしくて、そのせいでどこか近寄りがたい雰囲気にも思えなくも無いのに、それでも先生が醸し出す雰囲気は、学校に居る時よりも、もしかしたら俺のことが特別だと訴えてくれているような気もする。
「南」
俺を呼ぶ硬質で綺麗な先生の声。
振り返ると、先生の顔がすぐ近くにある。
……あ、これって……。
キスのタイミングだ……。
近づく先生の顔に、軽く目を閉じたら――
柔らかい先生の唇が、俺のそれにふわりと重なった。
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