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第二章
先生の悪友
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先生の部屋のドアの前。
どういう訳か、渚さんまで俺らの後に付いて来ていた。
「おい、もう用は済んだんだろ? なんでお前まで付いてくるんだよ?」
「えー? 俺だけ仲間外れにしようとするわけー? せっかくみんなの伝言を伝えに来てやったのに」
「何がせっかくだよ」
「"せっかく"だろ? とにかく入れろよ。お前のコーヒー絶品だし」
先生がどんなに邪険にしても帰る気が無い渚さんを、嫌そうにチラリと横目で見て、先生はドアを開けた。
そして俺らにリビングに行ってろと一言言って、先生はキッチンへと歩いて行った。
その先生の後姿を確認して、渚さんが俺に小さな声で話しかける。
「ごめんな。二人っきりになりたかっただろうけど、俺、南くんとも話してみたいと思ったんだ」
「……え? 俺と?」
何だろう……。生徒のくせに教師を好きになるのは止めとけとか……、そんな事だろうか?
身構える俺に、渚さんはニコリと笑う。
「緊張させてごめんなー。俺の事は恋人の親友だって思ってくれていいから」
「あ、はっはい」
愛好を崩して人懐っこく笑う姿は、さっきも思ったけど、なんだか安心させてくれる。
そうか。もしかしたら味方だよって、思ってくれているのかもしれない。
「澪の本性、もしかしてさっき知ったばっか?」
本性……。
「……はい」
「びっくりしただろ」
「う……、はい」
うん。マジでびっくりした。
だって、初めて会った時からさっきまで、俺は先生のことを守ってあげたいほど優しくてお人好しで、庇護欲をそそる存在だとばかり思っていたんだ。
まさか、まさかあんなにふてぶてしくて、俺様っぽい人種だとは思わなかった……。
「そうだよなあ。俺も、びっくりしたー」
そう言って、渚さんがハハハと楽しそうに笑った。
「とは言っても、俺のビックリは別の事なんだけどさ」
興味津々といった感じで俺の顔を覗き込んでくるから、ちょっと戸惑う。
別の意味って……?
「あいつ、恋愛に関して全く興味ない奴でさ、ホントそういうとこ欠落してるんだよ。基本的に、あんまり他人に興味ない奴だから」
「…………」
「だから澪の口から、君の話題が出た時にはびっくりしたんだ。しかも一度や二度じゃないぞ。楽しそうに何度も何度も話すからさ」
「え……?」
先生が俺の事、楽しそうに何度も?
嬉しくって、でも信じられなくて、俺は先生を振り返った。
「恥ずかしい事、勝手にベラベラばらすな」
先生がコーヒーを三人分運びながら、渚さんを睨む。
インスタントのそれと違い、凄くいい匂いが漂って来た。
「おい、お前は邪魔者なんだからもう少し離れて座れ。南に引っ付いてるんじゃねーよ」
先生のあんまりな物言いに、俺はやっぱり慣れてなくてドギマギする。だけど言われた当人は慣れた物らしく、機嫌を悪くするでも無く楽しそうに爆笑していた。
「いやーっ、すっげー良い! お前のその姿、他の奴らにも見せてやりてぇ」
「あぁ?」
渚さんのからかいに、眉間にしわを寄せ低い声で返す先生。
……ああ、ホントに先生はこっちが素なんだな……。
もう、あまりに崩壊しすぎて、俺の頭の中は混乱中……。
「まあ、良いから、良いから。いっただっきまーす」
混乱している俺の頭を、渚さんの明るい声が吹き飛ばした。
どういう訳か、渚さんまで俺らの後に付いて来ていた。
「おい、もう用は済んだんだろ? なんでお前まで付いてくるんだよ?」
「えー? 俺だけ仲間外れにしようとするわけー? せっかくみんなの伝言を伝えに来てやったのに」
「何がせっかくだよ」
「"せっかく"だろ? とにかく入れろよ。お前のコーヒー絶品だし」
先生がどんなに邪険にしても帰る気が無い渚さんを、嫌そうにチラリと横目で見て、先生はドアを開けた。
そして俺らにリビングに行ってろと一言言って、先生はキッチンへと歩いて行った。
その先生の後姿を確認して、渚さんが俺に小さな声で話しかける。
「ごめんな。二人っきりになりたかっただろうけど、俺、南くんとも話してみたいと思ったんだ」
「……え? 俺と?」
何だろう……。生徒のくせに教師を好きになるのは止めとけとか……、そんな事だろうか?
身構える俺に、渚さんはニコリと笑う。
「緊張させてごめんなー。俺の事は恋人の親友だって思ってくれていいから」
「あ、はっはい」
愛好を崩して人懐っこく笑う姿は、さっきも思ったけど、なんだか安心させてくれる。
そうか。もしかしたら味方だよって、思ってくれているのかもしれない。
「澪の本性、もしかしてさっき知ったばっか?」
本性……。
「……はい」
「びっくりしただろ」
「う……、はい」
うん。マジでびっくりした。
だって、初めて会った時からさっきまで、俺は先生のことを守ってあげたいほど優しくてお人好しで、庇護欲をそそる存在だとばかり思っていたんだ。
まさか、まさかあんなにふてぶてしくて、俺様っぽい人種だとは思わなかった……。
「そうだよなあ。俺も、びっくりしたー」
そう言って、渚さんがハハハと楽しそうに笑った。
「とは言っても、俺のビックリは別の事なんだけどさ」
興味津々といった感じで俺の顔を覗き込んでくるから、ちょっと戸惑う。
別の意味って……?
「あいつ、恋愛に関して全く興味ない奴でさ、ホントそういうとこ欠落してるんだよ。基本的に、あんまり他人に興味ない奴だから」
「…………」
「だから澪の口から、君の話題が出た時にはびっくりしたんだ。しかも一度や二度じゃないぞ。楽しそうに何度も何度も話すからさ」
「え……?」
先生が俺の事、楽しそうに何度も?
嬉しくって、でも信じられなくて、俺は先生を振り返った。
「恥ずかしい事、勝手にベラベラばらすな」
先生がコーヒーを三人分運びながら、渚さんを睨む。
インスタントのそれと違い、凄くいい匂いが漂って来た。
「おい、お前は邪魔者なんだからもう少し離れて座れ。南に引っ付いてるんじゃねーよ」
先生のあんまりな物言いに、俺はやっぱり慣れてなくてドギマギする。だけど言われた当人は慣れた物らしく、機嫌を悪くするでも無く楽しそうに爆笑していた。
「いやーっ、すっげー良い! お前のその姿、他の奴らにも見せてやりてぇ」
「あぁ?」
渚さんのからかいに、眉間にしわを寄せ低い声で返す先生。
……ああ、ホントに先生はこっちが素なんだな……。
もう、あまりに崩壊しすぎて、俺の頭の中は混乱中……。
「まあ、良いから、良いから。いっただっきまーす」
混乱している俺の頭を、渚さんの明るい声が吹き飛ばした。
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