92 / 97
新しい関係
期待と緊張
しおりを挟む
ピザを頬張り、サラダとスープも堪能して、満福でいい気分だ。
「美味しかった! ごちさうさまー。たまにはこういう夕飯もいいな!」
「ご馳走様。ああ、たまにはな」
「ん?」
「……いや、美味いは美味いんだが、……尚哉が飯作って、それを食べてる時の方が幸せ度は上かなと思ったんだよ」
「…………!!」
や、やっぱり……!
灰咲さんがいつもと違うっっ!
いや、一緒かもしれないけど糖度が高いだろ!!
ぽっぽと熱くなった顔で、灰咲さんをおずおずと見た。
目が合って、……目が合った灰咲さんが可笑しそうに笑った。
「ほら、来いよ」
グイッと引き寄せられて、灰咲さんに背後から抱きしめられる格好で座らされた。背中からじわじわと温かさがしみ込んできて、体温が上昇する。
その温かさと背中にピタリと密着する灰咲さんの感触が、嬉しくて恥ずかしくてドキドキした。
……不思議だ。
同じ状況でも、ただ人が違うだけで、こんなにも湧き出る感情が違うものなんだ。
背後から俺の腹の前に回っている灰咲さんの両手に、俺の両手を重ねた。
一瞬ピクンと動いた彼の手が、さらにキュッと力を込めて抱きしめる。
……気持ちいいや。
ドキドキするけど、恥ずかしいけど、灰咲さんの腕の中はやっぱり俺が一番安心して寛げる場所だ。
お腹いっぱいの安ど感も伴って、俺の瞼が段々と重くなってきた。
うん、幸せ……。
「……哉、尚哉」
揺さぶられ、ペチペチと頬を軽くたたかれた。
「……ん~」
ぼんやりと目を開けると、背後から至近距離で灰咲さんが覗き込んでいる。
「眠くなっちまったか? ……今日、バイトは忙しかったのか?」
「あ~、ううん。……そんなことないよ。なあに?」
俺は、よいしょと向きを変えてソファに乗りあがり、灰咲さんと真正面から抱き合うような形でしがみ付いた。
へへっ。
「……そろそろ、風呂にしようかと思ったんだが」
「ああ、うん……。そうだねー」
「……しょうがねーなあ、もう」
灰咲さんは呆れ声だったけど、それでも無理やり俺を剥がすことは無かった。
だから俺は、しっかり目が覚めるまで灰咲さんに抱き付いて、その体温を味わっていたんだ。
☆☆☆☆☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆☆☆☆☆☆
「……上がったぞ。入れよ」
「うん」
灰咲さんが風呂から上がって来た。今度は俺が入れ替わりに浴室へと向かう。
……うん、なんか緊張してきた。
ザッとお湯を被って、モコモコに泡立ったボディタオルで体を擦る。
腕や胸を擦りながら、緊張のあまりため息が零れた。
こんな緊張感って初めてだ。
だって、今まで経験してきた怖いとか嫌だとかそういうネガティブな冷や汗の出る緊張感じゃなくて、期待と不安と恥ずかしさと……、幸せの中にちょっとだけ恐怖感のようなものが入り混じった微妙でどこか疼きを伴った緊張感なんだ。
……ううう。モゾモゾするよぉ。
だけど。
『ずっと我慢してた』
ほうっ…とため息が零れる。
俺だけじゃなかったんだ。
恋焦がれて戸惑って我慢していたのは。
ぽちゃんとお湯につかり数を数えた。
百数えたら、灰咲さんの下に行くんだと、そう思いながら。
「美味しかった! ごちさうさまー。たまにはこういう夕飯もいいな!」
「ご馳走様。ああ、たまにはな」
「ん?」
「……いや、美味いは美味いんだが、……尚哉が飯作って、それを食べてる時の方が幸せ度は上かなと思ったんだよ」
「…………!!」
や、やっぱり……!
灰咲さんがいつもと違うっっ!
いや、一緒かもしれないけど糖度が高いだろ!!
ぽっぽと熱くなった顔で、灰咲さんをおずおずと見た。
目が合って、……目が合った灰咲さんが可笑しそうに笑った。
「ほら、来いよ」
グイッと引き寄せられて、灰咲さんに背後から抱きしめられる格好で座らされた。背中からじわじわと温かさがしみ込んできて、体温が上昇する。
その温かさと背中にピタリと密着する灰咲さんの感触が、嬉しくて恥ずかしくてドキドキした。
……不思議だ。
同じ状況でも、ただ人が違うだけで、こんなにも湧き出る感情が違うものなんだ。
背後から俺の腹の前に回っている灰咲さんの両手に、俺の両手を重ねた。
一瞬ピクンと動いた彼の手が、さらにキュッと力を込めて抱きしめる。
……気持ちいいや。
ドキドキするけど、恥ずかしいけど、灰咲さんの腕の中はやっぱり俺が一番安心して寛げる場所だ。
お腹いっぱいの安ど感も伴って、俺の瞼が段々と重くなってきた。
うん、幸せ……。
「……哉、尚哉」
揺さぶられ、ペチペチと頬を軽くたたかれた。
「……ん~」
ぼんやりと目を開けると、背後から至近距離で灰咲さんが覗き込んでいる。
「眠くなっちまったか? ……今日、バイトは忙しかったのか?」
「あ~、ううん。……そんなことないよ。なあに?」
俺は、よいしょと向きを変えてソファに乗りあがり、灰咲さんと真正面から抱き合うような形でしがみ付いた。
へへっ。
「……そろそろ、風呂にしようかと思ったんだが」
「ああ、うん……。そうだねー」
「……しょうがねーなあ、もう」
灰咲さんは呆れ声だったけど、それでも無理やり俺を剥がすことは無かった。
だから俺は、しっかり目が覚めるまで灰咲さんに抱き付いて、その体温を味わっていたんだ。
☆☆☆☆☆ミ☆ミ☆ミ☆ミ☆☆☆☆☆☆
「……上がったぞ。入れよ」
「うん」
灰咲さんが風呂から上がって来た。今度は俺が入れ替わりに浴室へと向かう。
……うん、なんか緊張してきた。
ザッとお湯を被って、モコモコに泡立ったボディタオルで体を擦る。
腕や胸を擦りながら、緊張のあまりため息が零れた。
こんな緊張感って初めてだ。
だって、今まで経験してきた怖いとか嫌だとかそういうネガティブな冷や汗の出る緊張感じゃなくて、期待と不安と恥ずかしさと……、幸せの中にちょっとだけ恐怖感のようなものが入り混じった微妙でどこか疼きを伴った緊張感なんだ。
……ううう。モゾモゾするよぉ。
だけど。
『ずっと我慢してた』
ほうっ…とため息が零れる。
俺だけじゃなかったんだ。
恋焦がれて戸惑って我慢していたのは。
ぽちゃんとお湯につかり数を数えた。
百数えたら、灰咲さんの下に行くんだと、そう思いながら。
11
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説

聖女の力を搾取される偽物の侯爵令息は本物でした。隠された王子と僕は幸せになります!もうお父様なんて知りません!
竜鳴躍
BL
密かに匿われていた王子×偽物として迫害され『聖女』の力を搾取されてきた侯爵令息。
侯爵令息リリー=ホワイトは、真っ白な髪と白い肌、赤い目の美しい天使のような少年で、類まれなる癒しの力を持っている。温和な父と厳しくも優しい女侯爵の母、そして母が養子にと引き取ってきた凛々しい少年、チャーリーと4人で幸せに暮らしていた。
母が亡くなるまでは。
母が亡くなると、父は二人を血の繋がらない子として閉じ込め、使用人のように扱い始めた。
すぐに父の愛人が後妻となり娘を連れて現れ、我が物顔に侯爵家で暮らし始め、リリーの力を娘の力と偽って娘は王子の婚約者に登り詰める。
実は隣国の王子だったチャーリーを助けるために侯爵家に忍び込んでいた騎士に助けられ、二人は家から逃げて隣国へ…。
2人の幸せの始まりであり、侯爵家にいた者たちの破滅の始まりだった。

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。
無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して――
最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。
死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。
生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。
※軽い性的表現あり
短編から長編に変更しています
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる