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ケジメをつけるために
無礼講の夜 2
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料理が進み酒も進み、ほぼ宴会状態の場はいいように出来上がってきていた。叔母さんが適当なところで席を立ってからは、さらに酒が進んで行く。
雅高も、自分で酒を注ぎどんどんグラスを空けていた。
「……雅高さん、もういい加減になさった方がよろしいかと」
そう言いながら、北原が雅高のグラスを取り上げようとする。
「ああ? まだまだ序の口だ。邪魔するなよ」
「ですが体が揺れてますよ。ふらふらしてるじゃないですか」
「それは―、楽しいからに決まってんだろー。ほらぁ、お前も飲めよ」
言いながら、雅高は北原のグラスに酒を注いだ。そして飲め飲めと囃し立てる。これはどう見ても、酔っ払いが絡んでいるようにしか見えない。
北原は、ハアッとため息を吐いた後一気にそれをあおり、雅高の背後から手を差し込んでグイッと彼を無理やり立たせた。
「ああ? ちょっと、何?」
「おやっさん、雅高さんを部屋に連れて行きます」
「あー、悪いな。頼むわ」
「はい」
「ええっ!? なんだよ、親父まで! 俺は酔ってなんか無いぞー、まだまだ飲むんだ。放せよー」
ジタバタもがいてはいるが、やはりどう見ても酔っぱらっている雅高に力は入らない。ずるずると北原に引きずられて部屋を出て行った。
「可愛いですね」
「……え?」
隣の杉藤が、二人を目で追いながら笑っている。
「雅高さんですよ。なんだかんだと若頭を慕っておいでなのですよ」
「……それ、雅高が北原を慕っていること、当の北原も気づいていると思うか?」
「だと思いますけどね。……ああいう奴ですから、全然態度には表れてないですけど。でも、悪い気はしてないと思いますよ?」
「そうか?」
「はい。……龍さんがこの家を出てからしばらく、若頭は殻に籠ったように増々寡黙になっていたんですけど。雅高さんに慕われて、少しずつ変わりましたからね」
「…………」
「今ではしっかりお互い信頼しきっていて、良い主従関係ですよ」
「そう……か」
「おい、こら、そこそこ! 龍は、喋ってばかりいないでしっかり飲んで食っていけよ。ムラたちの作った料理を無駄にするな」
「ハハ、はい、そうします」
よいしょと、手を伸ばしサラダや炒め物を皿に取った。
俺にとっては、自分の元実家とはいえ敷居の高い家だ。ある程度寛いでいるとはいえ、心底ゆったりとした気分というわけでは無い。
北原の強い口調に、己の甘さを突かれ苦い気持ちになったのも事実だ。
だが、ここは俺の居場所ではない。
負い目や借りを作りながらも、それを実感できたことは俺にとっては有り難いことだった。
雅高も、自分で酒を注ぎどんどんグラスを空けていた。
「……雅高さん、もういい加減になさった方がよろしいかと」
そう言いながら、北原が雅高のグラスを取り上げようとする。
「ああ? まだまだ序の口だ。邪魔するなよ」
「ですが体が揺れてますよ。ふらふらしてるじゃないですか」
「それは―、楽しいからに決まってんだろー。ほらぁ、お前も飲めよ」
言いながら、雅高は北原のグラスに酒を注いだ。そして飲め飲めと囃し立てる。これはどう見ても、酔っ払いが絡んでいるようにしか見えない。
北原は、ハアッとため息を吐いた後一気にそれをあおり、雅高の背後から手を差し込んでグイッと彼を無理やり立たせた。
「ああ? ちょっと、何?」
「おやっさん、雅高さんを部屋に連れて行きます」
「あー、悪いな。頼むわ」
「はい」
「ええっ!? なんだよ、親父まで! 俺は酔ってなんか無いぞー、まだまだ飲むんだ。放せよー」
ジタバタもがいてはいるが、やはりどう見ても酔っぱらっている雅高に力は入らない。ずるずると北原に引きずられて部屋を出て行った。
「可愛いですね」
「……え?」
隣の杉藤が、二人を目で追いながら笑っている。
「雅高さんですよ。なんだかんだと若頭を慕っておいでなのですよ」
「……それ、雅高が北原を慕っていること、当の北原も気づいていると思うか?」
「だと思いますけどね。……ああいう奴ですから、全然態度には表れてないですけど。でも、悪い気はしてないと思いますよ?」
「そうか?」
「はい。……龍さんがこの家を出てからしばらく、若頭は殻に籠ったように増々寡黙になっていたんですけど。雅高さんに慕われて、少しずつ変わりましたからね」
「…………」
「今ではしっかりお互い信頼しきっていて、良い主従関係ですよ」
「そう……か」
「おい、こら、そこそこ! 龍は、喋ってばかりいないでしっかり飲んで食っていけよ。ムラたちの作った料理を無駄にするな」
「ハハ、はい、そうします」
よいしょと、手を伸ばしサラダや炒め物を皿に取った。
俺にとっては、自分の元実家とはいえ敷居の高い家だ。ある程度寛いでいるとはいえ、心底ゆったりとした気分というわけでは無い。
北原の強い口調に、己の甘さを突かれ苦い気持ちになったのも事実だ。
だが、ここは俺の居場所ではない。
負い目や借りを作りながらも、それを実感できたことは俺にとっては有り難いことだった。
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