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ケジメをつけるために
従弟との再会
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雅高は俺の顔を見て感慨深い表情をした後、ガシッと俺に抱き付いた。
「なんだよ、もう! ずっと待ってたのに! やっぱり考え直した、この家で暮らすって、そう言って戻って来るって……俺ずっとそう信じてたんだぞ!」
「雅高……」
「それなのに、何だよ……。やっと連絡してきたと思ったら、枇々木だかなんだか知らない坊主を助けて欲しいだなんて! バカにすんなよ、もうっ!」
「おい、おい。雅高……」
余程腹に据えかねていたのか、雅高の俺に抱き付く強さは半端ない。ギリギリと音でもしているんじゃないかと思うくらいの強さで俺を締め付ける。
「雅高さん、それくらいで勘弁してやってください。坊ち……、龍さんの骨が折れてしまいますよ」
「……あ、ワリ!」
杉藤に窘められ、雅高がパッと体を離した。
バツの悪そうな顔をする雅高に、苦笑する。
「――いい体つきになったな。大きくなった」
「……当たり前だろ。龍兄が出てった時、俺まだ中学生にもなって無かったんだぞ」
「そうだったな。今、大学に通ってるんだって?」
「うん。周防大学のITコース。北原に相談したら、そこがいいんじゃないかって言うからさ」
「……そう言えば北原は、頭の切れる奴だったよな」
「はい。今は皆が認める若頭ですよ」
「凄いんだぜ、北原は。時代に合わせて俺らが食っていけるようにって、いろんな勉強してるしさ」
「勉強?」
確かにあいつは昔から、頭が切れるだけではなく実際に学力も知識も高い奴だったような記憶はあるが。
「そ。でも、今の龍兄には言えない。――なあ、戻ってくる気は本当に無いのかよ? 俺、龍兄が戻って来るんなら、龍兄の下で働くのだってかまわないんだぜ」
「……それは無いな。――それに、俺が出たり入ったりしてみろ。それこそ、変な火種を持ち込む元だ。お前は知らなかったかもしれないが、当時、俺を推す者ばかりじゃなくて叔父を推す者も多数いたんだ」
「……分かってるよ。北原もそれを知っているから、龍兄が去った後は自分を押し殺して耐えたんだろ? 今では気持ちを切り替えて、俺らの為に心血注いでくれてるけどさ」
「…………」
『俺は! 俺がついて行くと決めているのは龍坊ちゃんだけです! 親父さんが龍さんに厳しくしていたのも、龍さんを買っていたからに他ありません!』
「北原には、悪いことをしたよな」
「……そんなことは、ありませんよ。――あいつだって、ちゃんと分かっていましたよ。龍さんがこの家に残ることは無いだろうってことは」
「……そうかもしれないが」
誰かが戸をノックしたので、俺の言葉は途中で途切れた。
「若頭が参りました」
その一言で、俺の背筋がスッと伸びた。
「なんだよ、もう! ずっと待ってたのに! やっぱり考え直した、この家で暮らすって、そう言って戻って来るって……俺ずっとそう信じてたんだぞ!」
「雅高……」
「それなのに、何だよ……。やっと連絡してきたと思ったら、枇々木だかなんだか知らない坊主を助けて欲しいだなんて! バカにすんなよ、もうっ!」
「おい、おい。雅高……」
余程腹に据えかねていたのか、雅高の俺に抱き付く強さは半端ない。ギリギリと音でもしているんじゃないかと思うくらいの強さで俺を締め付ける。
「雅高さん、それくらいで勘弁してやってください。坊ち……、龍さんの骨が折れてしまいますよ」
「……あ、ワリ!」
杉藤に窘められ、雅高がパッと体を離した。
バツの悪そうな顔をする雅高に、苦笑する。
「――いい体つきになったな。大きくなった」
「……当たり前だろ。龍兄が出てった時、俺まだ中学生にもなって無かったんだぞ」
「そうだったな。今、大学に通ってるんだって?」
「うん。周防大学のITコース。北原に相談したら、そこがいいんじゃないかって言うからさ」
「……そう言えば北原は、頭の切れる奴だったよな」
「はい。今は皆が認める若頭ですよ」
「凄いんだぜ、北原は。時代に合わせて俺らが食っていけるようにって、いろんな勉強してるしさ」
「勉強?」
確かにあいつは昔から、頭が切れるだけではなく実際に学力も知識も高い奴だったような記憶はあるが。
「そ。でも、今の龍兄には言えない。――なあ、戻ってくる気は本当に無いのかよ? 俺、龍兄が戻って来るんなら、龍兄の下で働くのだってかまわないんだぜ」
「……それは無いな。――それに、俺が出たり入ったりしてみろ。それこそ、変な火種を持ち込む元だ。お前は知らなかったかもしれないが、当時、俺を推す者ばかりじゃなくて叔父を推す者も多数いたんだ」
「……分かってるよ。北原もそれを知っているから、龍兄が去った後は自分を押し殺して耐えたんだろ? 今では気持ちを切り替えて、俺らの為に心血注いでくれてるけどさ」
「…………」
『俺は! 俺がついて行くと決めているのは龍坊ちゃんだけです! 親父さんが龍さんに厳しくしていたのも、龍さんを買っていたからに他ありません!』
「北原には、悪いことをしたよな」
「……そんなことは、ありませんよ。――あいつだって、ちゃんと分かっていましたよ。龍さんがこの家に残ることは無いだろうってことは」
「……そうかもしれないが」
誰かが戸をノックしたので、俺の言葉は途中で途切れた。
「若頭が参りました」
その一言で、俺の背筋がスッと伸びた。
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