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これが初恋
意外過ぎる結末 2
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「望月さん! ダメだよ、こんなとこに来ちゃ!!」
「大丈夫だ。サングラスの相棒が出たのを確かめてから来たんだぜ」
「そんなことじゃないよ! ニュースで言ってたあれって、やっぱ制裁かなんかで殺されたんだろ?」
「ああ。金の持ち逃げと、逃亡に失敗してな」
「やっぱり! ダメだよ。二人で会ってるとこ見られたら、望月さんまでヤバいじゃないか!」
俺だって逃亡者なのに、こんな時にのんびりと俺に会いに来る図太い神経の望月さんには驚いてしまう。俺は、焦って望月さんの体をグイグイと押して急いで帰るように促した。
それなのに望月さんは一向に帰ろうとはせず、怪訝な顔をして俺の手を取った。
「なんだ、知らないのか? お前。昨日幹部から全員に、尚哉に手を出すのは止めろって通達があったぞ?」
……え?
驚いた。驚きすぎて、言葉が上手く呑み込めない。
……どういうこと、それ。
俺はもうお咎めなしで、自由に好き勝手出来るって事……?
信じらんない……。
俺はとっさに玄関を開けて、望月さんを中に入れた。ちゃんと話を聞きたいと思ったから。
「本当なの?それ……」
腹の底からふつふつと高揚感が湧き上がってくる。信じられない展開に、泣きたい思いで望月さんを見上げた。
「ああ。だからもうお前は、本当の意味で自由だ」
…………!!
体が震えて来た。信じられないという戸惑いと、でもそれ以上の嬉しさが俺の体を満たしていく。
「良かったな」
「……も、望月さん……」
ボロボロと涙が零れ落ちて来た。感極まって嗚咽を上げる俺を、望月さんが優しい目で見ている。
「……あ、ありがとう……」
リセット出来るんだ……! 夢のような事だと、それでもそんな奇跡が起こってくれたらいいと切望していた人生のリセットが!
誰に感謝していいのか分からない。だけど俺は初めて、存在なんて信じていなかった神様に、心の中で何度も何度もお礼を言った。
そうやって感激にひとしきり泣いて喜びを噛みしめて……。だけど、とふと思った。
やっぱりどうしても湧き上がる疑問。
どうして俺は許された?
だって、あの執念深い店長の様子からしても、幹部に執り成し俺を許そうだなんて……、マジでそんなことあり得ない。
「ねえ俺……、心当たりが何にも無いんだけど、どうして許してもらえたと思う?」
「――そうだよな」
どうやら望月さんもそのことだけはどうにも解せないようで、眉根を寄せて口元に手をやり考える仕草を見せた。
「俺にもそこが、よくわからないんだよな。……なんでも、幹部より上の人間から命令があったようなんだ」
「……え?」
「悪いな。俺も詳しいことは知らないんだ。……でも、何はともあれ助かったんだ。運に感謝して頑張るんだな」
そう言いながら望月さんが俺の頬に手をやり、優しく撫でる。
――運に感謝して……。
そうだよな。俺にとっては信じられないくらいの幸運だ。
疑ったり戸惑ったりばかりじゃ、きっと罰が当たる。
「うん……」
神妙に返事をする俺に、望月さんが一歩近づき俺を引き寄せた。
え? と思う間もなく、そのまま顔が近づいて来て望月さんの唇が俺の唇に重なった。
「も……」
一瞬引こうとした俺を、望月さんの力強い腕がそれを制した。
そのまま俺の口中に、望月さんの舌が入り込んでくる。
「…………」
店にいたころと変わらない望月さんのキス。
それを絶対にイヤだとか止めろとか俺が思わないのは、きっとそれこそあの頃のキスに、望月さんなりのあやしだったり慰めだったりとそんな意味合いがあったからだ。
そして多分、それが慣れたものだとして俺の中にインプットされているから……。
だけど――、
ガチャリ。
「ただい……」
ドアの開く音と、灰咲さんの声にビクリとして咄嗟に望月さんを押して体を離した。
「灰咲さん……」
押し離したとはいえ望月さんの手は俺の背中に回っているし、どう考えても密着し過ぎている俺たちに、灰咲さんの雰囲気が瞬時に変わった。
「……二度と来るなと言ってあったはずだが……?」
「別にあんたに会いに来たんじゃないんだぜ」
「――――」
「わかったよ、帰るさ。じゃあな」
望月さんは俺に手を上げて合図をした後、開いたままになっている玄関から出て行った。
残された俺に突き刺さる、灰崎さんの視線。
この感じだと、……やっぱ見られちゃったみたいだ……。
「大丈夫だ。サングラスの相棒が出たのを確かめてから来たんだぜ」
「そんなことじゃないよ! ニュースで言ってたあれって、やっぱ制裁かなんかで殺されたんだろ?」
「ああ。金の持ち逃げと、逃亡に失敗してな」
「やっぱり! ダメだよ。二人で会ってるとこ見られたら、望月さんまでヤバいじゃないか!」
俺だって逃亡者なのに、こんな時にのんびりと俺に会いに来る図太い神経の望月さんには驚いてしまう。俺は、焦って望月さんの体をグイグイと押して急いで帰るように促した。
それなのに望月さんは一向に帰ろうとはせず、怪訝な顔をして俺の手を取った。
「なんだ、知らないのか? お前。昨日幹部から全員に、尚哉に手を出すのは止めろって通達があったぞ?」
……え?
驚いた。驚きすぎて、言葉が上手く呑み込めない。
……どういうこと、それ。
俺はもうお咎めなしで、自由に好き勝手出来るって事……?
信じらんない……。
俺はとっさに玄関を開けて、望月さんを中に入れた。ちゃんと話を聞きたいと思ったから。
「本当なの?それ……」
腹の底からふつふつと高揚感が湧き上がってくる。信じられない展開に、泣きたい思いで望月さんを見上げた。
「ああ。だからもうお前は、本当の意味で自由だ」
…………!!
体が震えて来た。信じられないという戸惑いと、でもそれ以上の嬉しさが俺の体を満たしていく。
「良かったな」
「……も、望月さん……」
ボロボロと涙が零れ落ちて来た。感極まって嗚咽を上げる俺を、望月さんが優しい目で見ている。
「……あ、ありがとう……」
リセット出来るんだ……! 夢のような事だと、それでもそんな奇跡が起こってくれたらいいと切望していた人生のリセットが!
誰に感謝していいのか分からない。だけど俺は初めて、存在なんて信じていなかった神様に、心の中で何度も何度もお礼を言った。
そうやって感激にひとしきり泣いて喜びを噛みしめて……。だけど、とふと思った。
やっぱりどうしても湧き上がる疑問。
どうして俺は許された?
だって、あの執念深い店長の様子からしても、幹部に執り成し俺を許そうだなんて……、マジでそんなことあり得ない。
「ねえ俺……、心当たりが何にも無いんだけど、どうして許してもらえたと思う?」
「――そうだよな」
どうやら望月さんもそのことだけはどうにも解せないようで、眉根を寄せて口元に手をやり考える仕草を見せた。
「俺にもそこが、よくわからないんだよな。……なんでも、幹部より上の人間から命令があったようなんだ」
「……え?」
「悪いな。俺も詳しいことは知らないんだ。……でも、何はともあれ助かったんだ。運に感謝して頑張るんだな」
そう言いながら望月さんが俺の頬に手をやり、優しく撫でる。
――運に感謝して……。
そうだよな。俺にとっては信じられないくらいの幸運だ。
疑ったり戸惑ったりばかりじゃ、きっと罰が当たる。
「うん……」
神妙に返事をする俺に、望月さんが一歩近づき俺を引き寄せた。
え? と思う間もなく、そのまま顔が近づいて来て望月さんの唇が俺の唇に重なった。
「も……」
一瞬引こうとした俺を、望月さんの力強い腕がそれを制した。
そのまま俺の口中に、望月さんの舌が入り込んでくる。
「…………」
店にいたころと変わらない望月さんのキス。
それを絶対にイヤだとか止めろとか俺が思わないのは、きっとそれこそあの頃のキスに、望月さんなりのあやしだったり慰めだったりとそんな意味合いがあったからだ。
そして多分、それが慣れたものだとして俺の中にインプットされているから……。
だけど――、
ガチャリ。
「ただい……」
ドアの開く音と、灰咲さんの声にビクリとして咄嗟に望月さんを押して体を離した。
「灰咲さん……」
押し離したとはいえ望月さんの手は俺の背中に回っているし、どう考えても密着し過ぎている俺たちに、灰咲さんの雰囲気が瞬時に変わった。
「……二度と来るなと言ってあったはずだが……?」
「別にあんたに会いに来たんじゃないんだぜ」
「――――」
「わかったよ、帰るさ。じゃあな」
望月さんは俺に手を上げて合図をした後、開いたままになっている玄関から出て行った。
残された俺に突き刺さる、灰崎さんの視線。
この感じだと、……やっぱ見られちゃったみたいだ……。
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