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ノエル
どこ行った!? (灰咲視点)
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買い物を済ませて急いで家へと向かった。
今日までほとんど尚哉とまともに話もしてなかったし、邪険にし過ぎていた自覚がある。そんな反省の気持ちからも、残り少ないクリスマスイブを少しでも楽しんで欲しいと思った。
「ただいま」
鍵を開けて家に入った。
相変わらず不貞腐れたままなのか、室内はシンと静まり返ったままだった。
寝室のドアを開けて中を覗き込む。
「おい、まだ寝てるのか……!?」
尚哉?
てっきり不貞腐れて寝てるとばかり思っていた尚哉がいない。驚いて家じゅうを探し回ったが尚哉はいなかった。
ハッとして玄関で靴を確認すると、明らかに尚哉がいつも履いている靴が無くなっていた。
もう九時半を回っている。
こんな時間にどこに行ったんだ!
俺は慌てて脱いだコートを羽織り、尚哉を探そうと夜の道にまた飛び出した。
本当に必死で駆けずり回った。
いつも買い物に行くスーパーから、尚哉が一時期よく行っていた本屋まで。
もちろん屋内も隈なく探したし、何度も何度もしつこく回ってみたが、尚哉の姿はどこにもなかった。
まさかとは思うが尚哉の場合、万が一にでも危ない目に合っている可能性もあるのではないかと、嫌な考えまでが思い浮かんだ。
俺はそんな考えを否定したくて、夜になると意外と危ない場所に変わってしまう公園や、居て欲しくないと思う危なそうな飲み屋街にまで足を運び、一軒一軒ドアを開いては尚哉のいないことを確認までした。
どこ行ったんだ……。
時刻を確認すると、時計の針はそろそろ零時を刺そうとしている。
こんなことなら、尚哉にもスマホを買ってやるんだった。あいつ、俺に世話になりっぱなしだとか変に恐縮したりするから、ついつい言い出しそびれてたんだが。
――イブが終わるな。
まったく、何でこんなことになってんだか。
もしかしたら、もう家に帰って来ているかもしれない。
そうであってほしいと思いながら、俺はいったん家に戻ろうと帰路に就く。
急ぎ足で家へと向かう俺の視線の先に、「フランシス」の看板が目に飛び込んできた。
あいつのバイト先。
……もしかしたら。
居てくれよと思いながら、俺はフランシスに足を向けた。
「CLOSED」の札が掛かったドアを、ドンドンとノックする。
店は閉まっているのかもしれないけど、窓から明かりが漏れている。恐らく今日は遅くまで営業していて、片づけをしている最中なのだろう。
しばらくノックし続けていると、ようやくここの店長が顔を出した。
「あれ、あんた……」
「灰咲です。尚哉がいつもお世話になっています。あの、もしかして尚哉は……」
「ああ、居ますよ。少し前に眠そうにしていたから、あの奥の仮眠室で休んでもらって――」
「どうも」
ここに居たのかというホッとした気持ちと同時に、相変わらず行き先を告げて行かない尚哉への怒りが安心と同時に一気に押し寄せて来た。
気の逸る俺は、店長が指さした奥の方の部屋へと急いだ。
今日までほとんど尚哉とまともに話もしてなかったし、邪険にし過ぎていた自覚がある。そんな反省の気持ちからも、残り少ないクリスマスイブを少しでも楽しんで欲しいと思った。
「ただいま」
鍵を開けて家に入った。
相変わらず不貞腐れたままなのか、室内はシンと静まり返ったままだった。
寝室のドアを開けて中を覗き込む。
「おい、まだ寝てるのか……!?」
尚哉?
てっきり不貞腐れて寝てるとばかり思っていた尚哉がいない。驚いて家じゅうを探し回ったが尚哉はいなかった。
ハッとして玄関で靴を確認すると、明らかに尚哉がいつも履いている靴が無くなっていた。
もう九時半を回っている。
こんな時間にどこに行ったんだ!
俺は慌てて脱いだコートを羽織り、尚哉を探そうと夜の道にまた飛び出した。
本当に必死で駆けずり回った。
いつも買い物に行くスーパーから、尚哉が一時期よく行っていた本屋まで。
もちろん屋内も隈なく探したし、何度も何度もしつこく回ってみたが、尚哉の姿はどこにもなかった。
まさかとは思うが尚哉の場合、万が一にでも危ない目に合っている可能性もあるのではないかと、嫌な考えまでが思い浮かんだ。
俺はそんな考えを否定したくて、夜になると意外と危ない場所に変わってしまう公園や、居て欲しくないと思う危なそうな飲み屋街にまで足を運び、一軒一軒ドアを開いては尚哉のいないことを確認までした。
どこ行ったんだ……。
時刻を確認すると、時計の針はそろそろ零時を刺そうとしている。
こんなことなら、尚哉にもスマホを買ってやるんだった。あいつ、俺に世話になりっぱなしだとか変に恐縮したりするから、ついつい言い出しそびれてたんだが。
――イブが終わるな。
まったく、何でこんなことになってんだか。
もしかしたら、もう家に帰って来ているかもしれない。
そうであってほしいと思いながら、俺はいったん家に戻ろうと帰路に就く。
急ぎ足で家へと向かう俺の視線の先に、「フランシス」の看板が目に飛び込んできた。
あいつのバイト先。
……もしかしたら。
居てくれよと思いながら、俺はフランシスに足を向けた。
「CLOSED」の札が掛かったドアを、ドンドンとノックする。
店は閉まっているのかもしれないけど、窓から明かりが漏れている。恐らく今日は遅くまで営業していて、片づけをしている最中なのだろう。
しばらくノックし続けていると、ようやくここの店長が顔を出した。
「あれ、あんた……」
「灰咲です。尚哉がいつもお世話になっています。あの、もしかして尚哉は……」
「ああ、居ますよ。少し前に眠そうにしていたから、あの奥の仮眠室で休んでもらって――」
「どうも」
ここに居たのかというホッとした気持ちと同時に、相変わらず行き先を告げて行かない尚哉への怒りが安心と同時に一気に押し寄せて来た。
気の逸る俺は、店長が指さした奥の方の部屋へと急いだ。
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