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ノエル

初出勤 2

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ふわ~、疲れた。

ランチタイムが終了して、やっと俺らの昼休憩だ。
と言っても、既にここには店長の柿沢さんもシェフの栗谷さんもいない。彼らは既に昼休憩に入っていて、今は俺と木庭さんだけだ。

「みんな働く時間帯が少しずつ違うんだね」

「うん、そうなの。最初は割と重なる時間帯が多かったんだけどね。でもそうなると、負担が栗谷さんや店長に結構かかっちゃってて。それじゃ仕事に支障が出ちゃうってことで、いろいろ工夫したのよ。枇々木君が入る前はこの時間も店長がいたんだけど、やっぱりちょっとしんどかったんだねー」

「そうなんだ……」

俺と木庭さんは、ランチに出たメニューとほぼ同じものを賄いとして食べている。ほぼ、というのは、目玉焼きが無いからだ。

「でも、このハンバーグ美味いな」
「店長も栗谷さんも料理抜群に上手い物。ここで食べると、他のお店で食べたいとかあまり思わなくなっちゃうわよ」

「へー、でも、うん分かる気がする」

ホクホクしながらハンバーグをぱくついている俺を、木庭さんがなんだか言いたそうにじっと見ている。

「? なに?」
「あ、あの、ええっと……。昨日さ……」
「うん?」
「昨日一緒に来てた……、灰咲さんって人、カッコいいよね……」

「……あー、うん。そうだね……」

昨日しっかり素顔見てるもんな。あの顔見て、ドキドキしない女の子なんてきっといないよな……。

「何してる人なの?」
「ああ、画家。絵描いたり、ウエブデザイン手掛けてたりするみたいだよ?」
「そうなの? 凄い! 画家かぁ……」

何だか夢見る乙女みたいに頬を染めているのが可愛くて、なぜか俺は変な焦ったような気持に陥る。

灰咲さんもこんな可愛らしい女の子がもし身近にいたら、やっぱり惹かれたりするんだろうか?

……ヤだな、それ。モヤモヤする。


あー、独占欲強すぎだよな、俺。
灰咲さんは、別に俺のモノなんかじゃないのに、誰かがこんなふうに憧れたりするのを目の当たりにすると居ても立っても居られないような焦燥感に陥っちまう。

朱里さんの時もそうだったけど、もしも本格的に灰咲さんのことを好きな人が現れたら、俺……どうするんだろう……。
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