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Stop me!
意味深な朱里さん
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バタンとドアを開けて入って来た俺たちに、朱里さんが眉を顰める。
「なに? 血相変えて出て行ったと思ったら、その子連れ戻しに行ってたわけ?」
「…………」
呆れて詰る朱里さんを無視して、灰咲さんは俺をリビングのソファに座らせた。無理矢理っぽいその態度が、ちょっと癇に障る。
「なんだよ。俺がどこに行こうが勝手だろ? さっきは、2人で俺を邪魔扱いしてたくせに」
「そーよぉ。何もこの子、連れてくることないじゃない」
「…………」
俺たちの非難に灰咲さんは何も言わずにコーヒーを啜る。
「ちょっと、聞いてんの?」
「聞こえてんのかよ、この女好きヤロー!」
「うるさい!! お前は飯でも作ってろ!」
「な……、飯ってなんだよ! そんなことの為に俺を連れ戻したのか!?」
「…………」
なんて人だよ!
灰咲さんのバカー!!
俺が睨んでいるのに、灰咲さんはまた知らんふりを決め込む。のんびりとコーヒーを飲みながら、ソファの背にに凭れかかった。
取り付く島もない灰咲さんの態度に、俺は仕方がないので剥れながらも台所に向かった。
冷蔵庫を漁り、適当に野菜を出した。何をするか考えていなかったので、お肉と一緒に野菜炒めを作ることにした。
玉ねぎを手に取り、まな板に乗せて包丁を手に取った。
……今頃、俺をリビングから追い出して朱里さんと何を話してるんだろう。
あの人、灰咲さんのこと気に入っているみたいだから、邪魔がいないのをいいことにまた灰咲さんにベタベタしてるのかもな……。
そんな事を想像していたら、はらわたが煮えくり返って来た。
なんだよ、本当に。灰咲さんのバカ!
美人だから、ベタベタされても良いってのかよ!
もう、もう、もう! 大っ嫌いだ灰咲さんなんて!!
心の中で延々とうっぷん晴らしに喚き散らす。声に出してないんだからいいだろ!
手だけはしっかりと動かして、玉ねぎをざくざくと薄いくし形に切りそろえていった。
「慣れた手つきねー」
「え?」
突然声を掛けられて驚いた。振り向くと、朱里さんが笑いながら俺の手元を覗き込んでいた。
「……一応、小さいころから作ったりしてましたから」
「へえ?」
なんだよ。
……灰咲さんにベタベタしてなかったんだ。
「坊やも大変ね。あいつ気まぐれだから」
……坊や。
一向に子ども扱いを止めようとしない朱里さんに、冷めた苦笑いが浮かぶ。
「もしよければ変わってあげてもいいわよ?」
「……え?」
戸惑う俺に、朱里さんは笑みを深くした。
「私なら龍の面倒も見慣れてるし……、きっと体の方も満足させてあげられるわ。……あなたと違って」
「…………」
意味深な表情の笑顔に、胃の辺りが冷えていくように感じた。
この人……、朱里さんって、本当のところ灰咲さんのなんなんだ?
「なに? 血相変えて出て行ったと思ったら、その子連れ戻しに行ってたわけ?」
「…………」
呆れて詰る朱里さんを無視して、灰咲さんは俺をリビングのソファに座らせた。無理矢理っぽいその態度が、ちょっと癇に障る。
「なんだよ。俺がどこに行こうが勝手だろ? さっきは、2人で俺を邪魔扱いしてたくせに」
「そーよぉ。何もこの子、連れてくることないじゃない」
「…………」
俺たちの非難に灰咲さんは何も言わずにコーヒーを啜る。
「ちょっと、聞いてんの?」
「聞こえてんのかよ、この女好きヤロー!」
「うるさい!! お前は飯でも作ってろ!」
「な……、飯ってなんだよ! そんなことの為に俺を連れ戻したのか!?」
「…………」
なんて人だよ!
灰咲さんのバカー!!
俺が睨んでいるのに、灰咲さんはまた知らんふりを決め込む。のんびりとコーヒーを飲みながら、ソファの背にに凭れかかった。
取り付く島もない灰咲さんの態度に、俺は仕方がないので剥れながらも台所に向かった。
冷蔵庫を漁り、適当に野菜を出した。何をするか考えていなかったので、お肉と一緒に野菜炒めを作ることにした。
玉ねぎを手に取り、まな板に乗せて包丁を手に取った。
……今頃、俺をリビングから追い出して朱里さんと何を話してるんだろう。
あの人、灰咲さんのこと気に入っているみたいだから、邪魔がいないのをいいことにまた灰咲さんにベタベタしてるのかもな……。
そんな事を想像していたら、はらわたが煮えくり返って来た。
なんだよ、本当に。灰咲さんのバカ!
美人だから、ベタベタされても良いってのかよ!
もう、もう、もう! 大っ嫌いだ灰咲さんなんて!!
心の中で延々とうっぷん晴らしに喚き散らす。声に出してないんだからいいだろ!
手だけはしっかりと動かして、玉ねぎをざくざくと薄いくし形に切りそろえていった。
「慣れた手つきねー」
「え?」
突然声を掛けられて驚いた。振り向くと、朱里さんが笑いながら俺の手元を覗き込んでいた。
「……一応、小さいころから作ったりしてましたから」
「へえ?」
なんだよ。
……灰咲さんにベタベタしてなかったんだ。
「坊やも大変ね。あいつ気まぐれだから」
……坊や。
一向に子ども扱いを止めようとしない朱里さんに、冷めた苦笑いが浮かぶ。
「もしよければ変わってあげてもいいわよ?」
「……え?」
戸惑う俺に、朱里さんは笑みを深くした。
「私なら龍の面倒も見慣れてるし……、きっと体の方も満足させてあげられるわ。……あなたと違って」
「…………」
意味深な表情の笑顔に、胃の辺りが冷えていくように感じた。
この人……、朱里さんって、本当のところ灰咲さんのなんなんだ?
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