俺を助けてくれたのは、怖くて優しい変わり者

くるむ

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Stop me!

威嚇しあって負けた……ムカツク!

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互いに猫が威嚇するときのような警戒心満載の表情を崩さない俺たちに、灰咲さんはため息を吐きながら頭を掻く。
だけどすぐに、朱里とかいうこの人が灰咲さんを問いただし始めた。

 「ちょっと―、何よ、あの子。龍が誰かを居候させるだなんて、聞いて無いわよ、私」

はあっ? なに、この人。
聞いてないって何。そんな関係なのか、灰咲さん!

何だか分からないけど腹が立って来た俺は、思わず口を尖らせて灰咲さんを睨んでしまった。

……いや、確かに俺は居候だよ?
しかも匿ってもらってる身だから、文句なんて言える筋合いじゃあ無いけど……。

「こいつは尚哉だ。……俺の昔世話になった人の息子で、しばらくこっちで預かってるんだ」
「なぁに? 訳あり?」
「そんなたいそうな事じゃない。家で揉めてて、頭冷やしにここに来ただけだ」
「……ふうん」

納得したのかしないのか、チラリと視線をこちらに向ける。

「尚哉、こいつは朱里だ。前に……」
「元カノよ。しばらく厄介になるからね!」

……え? 元……カノ?

「おい。変な嘘、吹き込むな。こいつは俺が昔……、ここに引っ越してくる前に住んでいた家の……、隣に住んでいた奴だ」
「……幼馴染?」
「いや、そこまで子供では無かったな」

……?
何だろう、歯切れが悪いな。

「そぉよー。子供じゃなかったから、いろいろ面倒見てあげたじゃない」
「面倒見たのは、こっちだろう。変な男ばかり引っ掛けやがって」
「ヤダー、焼いてたのぉ?」
「はあ? バカか」

俺に分からないことを、2人は延々と話し続けている。しかも、この朱里さんって人は灰咲さんにベタベタ引っ付くしなんだか気分が悪い。

「……あんた、灰咲さんの何なの? さっきからベタベタ引っ付いてるけど、見てるこっちまで暑苦しいからやめてくんないかな?」
「ハア? なによ。あんたには分かんない関係なのよ! 子供は黙ってなさい」

俺の言葉に明らかにカチンときた朱里さんは、余計さらに灰咲さんに引っ付いた。

「わかんない関係ってなんだよ。灰咲さんのお人好しに付け込んでストーカーでもしてんじゃねーの?」
「ストーカーって何よ! 私はねぇ……!」
「おい! こら、待て待て! 尚哉っ!」

ヒートアップしそうな俺らに灰咲さんが止めに入る。だけど叱りつけた相手は朱里さんじゃなくて俺だった。

「なにもお前が口出すことじゃないだろ。大人しくしてろ!」
「そーよ、そーよ! 子供は邪魔なの。部外者は引っ込んでなさい」
「なんだよ、あんた! さっきから子供子供って……、ガキ扱いしてんじゃねーよ!」
「……おい、尚哉! ……とりあえずお前、ちょっと部屋にでも行って頭冷やしてろ」

……な、なんだよそれ!
何でそんな突然やって来た女の方の肩持つわけ?

「……わかったよ」

灰咲さんの言葉に不愉快になった俺は、言われた通り少し頭を冷やそうと二人から離れた。だけど部屋には行かず、そのまま玄関から外へと出た。
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