俺を助けてくれたのは、怖くて優しい変わり者

くるむ

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してはいけないこと

1人で買い物 2

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いつも灰咲さんと一緒に近所のスーパーに行く時は、灰咲さんが運転する車に乗っかるんだけど、今日は俺1人なので歩きだ。
まあ、歩いて行っても15分もすればつく距離だから、大したことは無いんだけど。

途中までスーパーに向かって歩いていたんだけど、思い直して大通りに行く道の方へと方向を変えた。

大通りには、一度だけ灰咲さんと行ったことがありそこには結構デカい書店があった。
今回のように依頼を受けて作品作りをするのは灰咲さんには初めてのことだったようで、それなりに緊張をしていたらしい。お客さんのニーズに合った作品を作れるように納得した作品を描きたいという事で、作品のモチーフとなる資料を探しに行ったのだ。
それで俺にも気分転換になるだろうと、連れて行ってくれた。

灰咲さんが資料を物色する横で、俺は一冊の気になる絵本を見つけた。
気になるものがあったら買ってやるぞと言ってくれたんだけど、匿ってもらってお金も払えない俺が、これ以上何かを強請るのは違うだろうと思って、あの時は『何もない』と答えた。

だけど、買うお金は無くても手に取って見るだけは出来る。
中身を見ることは出来ないけど、表紙だけでももう一度見たいと思ったんだ。
とても綺麗な色使いの、心癒される絵だったから。

書店の中は、それほど人はいなかった。
それに中にいる客は、立ち読みにふけっている人や真剣に本を探している人たちばかりなので、緊張しないで絵本売り場に向かうことが出来た。

離れたところからでも分かる綺麗な色。
七色の虹を背景に、様々な愛らしい大小の動物が描かれていた。
きっと親子連れの動物だ。絵本らしく、仲睦まじい親子愛が描かれているのだろう。

その絵本を手に取ってしばらく眺めた後、堪能した俺は書店を後にした。


いつものスーパーは、さっきの書店とは違って結構な人だった。俺はキャップをキュッと被りなおして、店内に入る。
あまり遅くなると灰咲さんが心配すると不味いので、書店からここまで早歩きで歩いていた。おかげで俺は無駄な汗を掻いてしまったので、中は天国の涼しさだ。
首筋に感じる汗をハンカチで拭いて、まずは野菜を物色し始める。

んー。
なんとなーく冷やしそうめんを食べたい気分……。
夏バテってわけじゃないけど。

たまには、そういうのもいいよな。

そうと決まれば……。

冷やしそうめんには、何を一緒に入れれば美味しくなるんだろう?
俺が家にいたころは、そうめんしかなかったから具なんて何にも無かったけど。

いろいろ想像しながら店内の野菜とにらめっこ。
灰咲さんも俺も特に好き嫌いは無いから、こういう時に苦労しなくていいんだよなー。


……?

何となく視線を感じたような気がして振り返った。

気のせいか?
特に誰かと目が合うことは無かったし、怪しい感じの人もいないようだし……。

灰咲さんの家に居候するようになって初めての1人での外出だから、もしかしたら知らない内に神経が過敏になっているのかもしれない。

肩の力を抜くように、フッと息を吐いて、俺はカートを押しながら店内を物色し、今夜の材料からその他にも日持ちのする野菜をいくつか物色した。もちろん野菜以外にもいろいろと見て回り、必要な物を籠に入れていった。

支払いを済ませてスーパーを出て、しばらく歩いていると誰かが足早に近づいてくる気配があった。
一瞬ビクッと緊張したのだけど、その近づいてきた足音は俺を通り越して走り去って言った。

……なんだよ。思い過ごしか……。

自意識過剰か被害者意識があり過ぎなのか……。
どちらにしてもこんなんじゃ、いつまで経っても灰咲さんの心配のタネになっちゃいそうだ。

そうだよ。もうちょっと、でんと構えなくては!

ふーっと息を細く吐き出して、気持ちを切り替えて歩き出す。
重くなってきた荷物を抱えなおしながら歩いていると、突然「ちょっと君」と声を掛けられギョッとした。
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