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脱出
不思議な人
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熱いシャワーを体に浴びる。
石鹸を泡立てたボディタオルで、体中を擦った。
『人生の仕切り直しの手伝いをしてやる』
――仕切り直し
ギュッと自分の二の腕を掴んだ。
歯を食いしばりながら必死で目を閉じて、知らない客に抱かれた夜。何度も何度もイかされて、頭も体もおかしくなりそうにヤバかった時もあった。
そんな屈辱的な思いは、もう……しなくても良いってことなんだよな……?
……諦めかけていた自分の人生を、もう一度夢見ても良いってことなんだよな……?
シャワーを体に当てて、流れる泡を目で追った。
あの泡のように、俺の過去も流して捨ててしまえればいいのに。
『人との出会いで人生をやり直すことが出来た人を知っている』
本当だろうか?
もしかしたら俺を励ますためだけに言った言葉かもしれないけど、それでも……。
今はその言葉を信じてみたいと思う。そして俺も、その人の後に続けるように頑張るんだ。
体をタオルでざっと拭って、灰咲さんが準備してくれた着替えに手を伸ばした。
リビングに出ると、ソファでくつろでいた灰咲さんが俺に気づいてスッと立ち近づいてきた。
「向こうの部屋が寝室だ。ベッドがあるからそこに寝るといい」
「ありがとうございます。……あの、灰咲さんは1人暮らし……ですよね?」
「ああ。だから遠慮しなくていい。それと……、一応俺の方が年上だろうけど敬語はいいから。その方が肩凝らずに本音も言いやすいだろ? 俺もその方が楽だしな」
「……え? でも、いい……んですか?」
「いいって言ってる。もっと砕けて、自分の家だと思ってろ」
自分の家……?
え? でも、しばらくの間、俺が落ち着くまで匿ってくれるだけ……じゃないのか?
「お前、飯は作れるか?」
「はい。俺の母さん……だらしなかったから、ほとんど俺がご飯とか作ってました。食材がある時だけですけど……」
「そうか。じゃあ、匿う交換条件として飯作って掃除をしてくれ。それと、寝室の向かいにあるあの部屋は俺がアトリエとして使っている部屋だから、あそこには勝手に入るなよ。俺の聖地だ」
聖地……。
「はい。分かりまし……」
「だから、敬語はよせって言っている」
「……うん、わかった」
「よし」
「…………」
不思議な人だ。
どう見ても俺よりは数才年上なのに、敬語は嫌とか。しかもまだサングラス外さないし……。
「じゃあ、俺はシャワー浴びてくるから寝てていいぞ。何も考えずにぐっすり休め」
「は……、うん。ありがとう、お休みなさい」
「お休み」
灰咲さんは、そのまま片手を上げてバスルームへと向かっていった。
俺は灰咲さんの好意に甘えて、寝室に入りベッドにダイブして……。
余程疲れていたんだろう。
すぐに眠りについた俺が目覚めた時は、既に朝になっていた。
石鹸を泡立てたボディタオルで、体中を擦った。
『人生の仕切り直しの手伝いをしてやる』
――仕切り直し
ギュッと自分の二の腕を掴んだ。
歯を食いしばりながら必死で目を閉じて、知らない客に抱かれた夜。何度も何度もイかされて、頭も体もおかしくなりそうにヤバかった時もあった。
そんな屈辱的な思いは、もう……しなくても良いってことなんだよな……?
……諦めかけていた自分の人生を、もう一度夢見ても良いってことなんだよな……?
シャワーを体に当てて、流れる泡を目で追った。
あの泡のように、俺の過去も流して捨ててしまえればいいのに。
『人との出会いで人生をやり直すことが出来た人を知っている』
本当だろうか?
もしかしたら俺を励ますためだけに言った言葉かもしれないけど、それでも……。
今はその言葉を信じてみたいと思う。そして俺も、その人の後に続けるように頑張るんだ。
体をタオルでざっと拭って、灰咲さんが準備してくれた着替えに手を伸ばした。
リビングに出ると、ソファでくつろでいた灰咲さんが俺に気づいてスッと立ち近づいてきた。
「向こうの部屋が寝室だ。ベッドがあるからそこに寝るといい」
「ありがとうございます。……あの、灰咲さんは1人暮らし……ですよね?」
「ああ。だから遠慮しなくていい。それと……、一応俺の方が年上だろうけど敬語はいいから。その方が肩凝らずに本音も言いやすいだろ? 俺もその方が楽だしな」
「……え? でも、いい……んですか?」
「いいって言ってる。もっと砕けて、自分の家だと思ってろ」
自分の家……?
え? でも、しばらくの間、俺が落ち着くまで匿ってくれるだけ……じゃないのか?
「お前、飯は作れるか?」
「はい。俺の母さん……だらしなかったから、ほとんど俺がご飯とか作ってました。食材がある時だけですけど……」
「そうか。じゃあ、匿う交換条件として飯作って掃除をしてくれ。それと、寝室の向かいにあるあの部屋は俺がアトリエとして使っている部屋だから、あそこには勝手に入るなよ。俺の聖地だ」
聖地……。
「はい。分かりまし……」
「だから、敬語はよせって言っている」
「……うん、わかった」
「よし」
「…………」
不思議な人だ。
どう見ても俺よりは数才年上なのに、敬語は嫌とか。しかもまだサングラス外さないし……。
「じゃあ、俺はシャワー浴びてくるから寝てていいぞ。何も考えずにぐっすり休め」
「は……、うん。ありがとう、お休みなさい」
「お休み」
灰咲さんは、そのまま片手を上げてバスルームへと向かっていった。
俺は灰咲さんの好意に甘えて、寝室に入りベッドにダイブして……。
余程疲れていたんだろう。
すぐに眠りについた俺が目覚めた時は、既に朝になっていた。
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