拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

第五章

拙い事態 2

「建輔さん、俺も行く！」
「ダメだ、一弥は石川さんの傍にいてくれ！　万が一のことがあるだろう！」

俺がそう怒鳴ると一弥は顔をしかめた。だけど俺の言うことには納得したみたいで、小さく息を吐く。

俺はそのまま玄関から走って外に出て、駐車場に着くまで刑事に再度連絡を取ろうとスマホを手にした。

いや、待て。その前に谷塚だ。

谷塚に連絡を入れるとワンコールですぐに電話を取った。

「川口か、石川さんは……」
「すまん、谷塚！　鶴田さんが拉致られた」
「はあっ？　どういう状況だ！」
「本当に、すまん！　今から車で追うところだ」
「……わかった！　車に乗ったらもう一度俺に電話しろ、ナビるから」
「えっ？」
「こういう仕事だ。万が一の時のために、GPSのアプリを使ってる」
「わかった！」

俺は急いで車に乗り込んで、谷塚に電話を入れようとした途端に着信して驚いた。ディスプレイには、松藤刑事と表示されている。

「はい、川口です」
「松藤だ。何かあったか？」
「女性が一人、男達に拉致られてしまいました。今から追うところです！」
「わかった、俺もすぐ追う。場所はどこだ」
「さらわれた女性は同業者で、GPSの連絡待ちなんです。すぐに折り返します」
「わかった、待機してる」

電話を切った後すぐに谷塚に電話する。ワンコールで出た。

「現在M交差点を右に向かった所だ。その先には埠頭があって倉庫がたくさん並んでいるから、そこに向かっているんだと思う」

「ありがとう、すぐに向かう」
「頼む。俺も今向かってる」

車を発進させ、すぐに一弥に電話を入れた。そして鶴田さんが連れて行かれるかもしれない埠頭を知らせると、一弥はすぐに「そこで間違いないと思う」と言った。

「13番倉庫に行ってみて。多分そこだと思う」
「わかった」

手早く電話を切って、今度は松藤刑事に連絡し埠頭と倉庫の話をした。すぐに向かうという返事にホッとし、俺もアクセルを踏んだ。