拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第五章

石川さんの為に出来ること 4(一弥視点)

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竹本が自宅に帰るのは結構バラバラだった。だけど五時よりも早い時間に帰ることはまずない。特に今日なんかは石川さんに対して失敗しているので、他でばん回しようと考えているはずだ。だから今日は遅い時間になるんじゃないかと思っている。

竹本があいつらにどう報告しているかだよなあ。
獅子の怖さに気づいていたら、絶対にしくった話しは報告しないだろう。それよりも、もっといいターゲットを見つけたから、そっちに変えたと言った方が具合いがいいはずだ。

竹本の自宅付近に着いて、辺りを窺った。よん、ビーム、ニッカと名乗る三人らしき人物が、もうどこかに潜んでいるはずだから。
一応彼らも初対面なので、お互いに相手を認識するようにと何でもいいから赤い物を持っていくようにと伝えておいた。

俺としてはこちらで確認できなければ、公園で確認してもいいのだけど……。

あっ!

一台の車が道路の脇に止まり一人の男が降りてきた。手には赤いボールを握っている。そいつがそれを手でポンポンと毬つきのように跳ねさせると、ゆっくりと別方向から手に赤いものを持った男たちが近寄って来た。

ちょうどいい時に来たようだな。俺は3人に気付かれないように彼らの写真を撮り、ついでに車の写真を撮った。

三人は少し打ち合わせをした後、それぞれ自分の車へと戻っていく。
まあ竹本が帰って来ないと、動きようがないものな。
それは俺も同じなので、駅で拝借しておいたバイクの横に腰を下ろして竹本の帰りを待った。

それから四時間近く経ってやっと竹本と新井がやって来た。新井が一緒なことにホッとする。彼の家はここから歩いて五分くらいのところにあるので、竹本と一緒に行動していさえいれば同時に拉致できると期待していたからだ。

さらに運良く周りには誰もいない状態だったので、彼らは素早く動いた。
二人を同時に背後から羽交い絞めにし、暴れる前に残った一人が腹を殴る。竹本はそのまま引きずられ、新井の方は腹を殴った男が素早く両足を抱え、まるで荷物を運ぶように車の中に押し込んだ。そしてあっという間に車は発進した。

俺もすぐにバイクで後を追い、彼らに気づかれないようにバイクは少し離れた所で駐車した。

傍まで確認に行かなくていいかな。一応動画を送るようにとは言ってあるし。

見つからないようにと遠巻きに見ていたら、三人が竹本らを車から引きずり出し始めた。

こういう場面はちゃんと撮っておかないと。建輔さんには言わずに買った高性能のデジカメで、脅し用としてしっかり収めた。

「ああ、暴れてるなあ。ちゃんと黙らせないと……あっ、踏んづけた。あれ、くるんだよなー」

何発か殴ったり蹴ったりした後、彼らは公園の奥へと消えて行った。

「さて、帰るかな」

証拠の動画が後から送られてくるわけだから長居は無用だ。
俺は一度駅前によりバイクを返し、建輔さんの待つアパートへと向かった。
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