拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第五章

石川さんの為に出来ること 3(一弥視点)

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「ただいま」
「お帰りなさい、建輔さん」

建輔さんが帰って来たのは、お昼をかなり回っていた。一応食事は出先で済ませて来ると連絡が入っていたので、俺は軽くトーストで済ませていた。

「手応えはどうだった?」

建輔さんが上着を脱いだので、それを受け取りハンガーに掛けた。

「何とかなりそうだよ。最初はあまり相手にしてくれなかったんだが、ちょうどこの事件に前から意識を向けてくれている刑事さんに会えて、ちゃんと調べてくれるって約束してもらった」

「そっか、さすが建輔さんだ」

俺がそう言うと、建輔さんは一瞬目を見開き可笑しそうに笑った。そして俺の髪をくしゃりと撫でる。

「なに言ってるんだ。俺はただ、頼みに行っただけだぞ」
「うん、そうだけど。邪険にされてもキレない粘り強さが、功を奏したんだよ」

だって俺だったら、相手にされない時点で態度が悪くなって、余計に相手の心証を悪くしていたと思う。

「あ、そうだ建輔さん。今日俺夕方から出掛けなきゃならないんだ」
「夕方?」

着替え終えた建輔さんがリビングに戻って来て、俺の隣に座った。

「何か新しい仕事でも入ったのか?」
「そうじゃなくて竹本の尾行」
「えっ? なんでまた。あいつはそろそろ捕まるぞ?」

「だけど本人はそんな気はないだろう? 警察もすぐに竹本のことで動いてくれるかわからないから、何かあったら写真で撮っておいて証拠にしてやろうと思って。ついでに女の子がカモになりそうだったら、忠告してくる」

「う~ん。明日には石川さんも警察に行くんだろう? それならいくら何でも動いてくれるんじゃないのか? の奴と遭遇する恐れは無いのか?」

「大丈夫だよ、また変装するから」
「そうは言っても心配なんだよな。どうしても行くって言うんなら、できればついて行きたいんだが……」

「ありがとう。でも万が一尾行してることを知られたりしたら、それこそまずいから。警察が動いてくれるんならこんな事続けることないから、尾行は今日で終わりになるかもしれないけどね」

「ん~」

建輔さんはまだ渋っている。心配性で優しい人だ。

「大丈夫、無理したりしないから」
「……意志が強いな。承諾するしかないようだな」
「ありがとう。大丈夫だよ、注意して行動するから」

しっかり建輔さんに向かってそう言うと、彼は疲れたように笑った。ごめんね、心配かけて。だけどこのぐらいの報復は、俺は必要だと思うんだよ。


それから俺は早めに夕食を作り、自分はおにぎりを食べて済ませて現場となる公園へと向かった。
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