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第五章

託された想い

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「竹本を捕まえてもらう ……。出来ますか? 私が警察に行った時は、自殺との因果関係を調べるから待ってくれって言われてそのままなんですけど」

「出来るようにします。竹本だけでなく、せめてそのすぐ上くらいまでは逮捕させたいと思ってます。だから警察に動いてもらうためにも、瀬川さんの知っている情報を教えて欲しいんです」

俺がそう言うと瀬川さんは唇をきゅっと噛み、スマホを取り出して俺に写真を見せた。

「この私の横に写っているのが陽菜です」

明るく楽しそうに笑う瀬川さんの横に写る、はにかんだ表情の少しおとなしそうな女の子。

「可愛らしい方ですね」

「私なんかと違って、優しくて素直な子だった……。あのっ、私の知っていることは全部話します。だから竹本を絶対警察に引き渡して下さい! お願いします!」

「わかりました、全力を尽くします」

それから瀬川さんは、些細なことも何もかも知っていることをすべて話してくれた。それは石川さんに使った手口とほぼ同じだったが、違ったのは竹本と早い段階で深い関係になってしまった点だった。心も体もあいつに溺れてしまったせいで、傷が深くなってしまったのだ。

これは本当に、このままあいつらを野放しにしておくわけにはいかないよな。

「話してくれてありがとう。絶対このままにはしないから。君ももう無茶な行動はとらないでくれよ」
「……はい。よろしくお願いいたします」

瀬川さんはぺこりと頭を下げて、俺らに礼を言った。

「さて、じゃあ私も帰りますのでついでに送って行きましょう」
「ありがとうございます」
「ありがとう、助かったよ鶴田さん」

下の駐車場まで見送ろうと、一緒に玄関を出ようとして断られた。

「こちらで結構ですよ、余計な気は使わないでください」

なんて真顔で言われたら、出にくくなっちまった。

「あー、まあそういう事なら……。ところで鶴田さん、聞いてみてもいいか?」
「なんでしょう?」
「さっきの、竹本を追い払った時なんて言ったんだ?」

「ああ……それ。タウン誌の記者だと言ったんです。それで役所や警察署とかにも置かせて貰っているので、怪しい雑誌じゃないですよって言ったんです」

「警察署……それで」

なるほどね。相手を信用させるための発言だと見せかけておいて、実は警戒させて追い払おうという戦略か。

「それじゃあ瀬川さん、今日はありがとう。何か他に思い出したことがあったら、こちらに連絡して下さい。決して自分で動かないで下さいよ」

「わかりました、こちらこそ……竹本を警察に突き出すこと、お願いします」

瀬川さんはそう言って俺に深々と頭を下げた後、鶴田さんと二人で玄関を出て行った。
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