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第五章

竹本の隣を歩く女性 2

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店の中に入った彼女は何をするでもなく店内を眺め、暫く店の中をうろうろしていた。そして竹本らが商品を買って店を出ようとしたところで初めて声を掛けた。

こちらからでは彼女が竹本らになんと声を掛けているのか分からなかったけれど、名刺らしきものを手渡しているのが見えた。
しばらく熱心にやり取りをしているように見えていたのだが、その内竹本が連れの女性を引っ張って行こうとしたのを彼女が止めた。

……そう言えば俺、彼女の名前も聞いていなかったな。緊迫した中ですっかり忘れていたけど、……後で聞いておこう。

「俺は目立つのが嫌いなんだよ! それに用事があるから先に帰る!」

女性を連れて行くのを諦めて、竹本はさっさとその場を去って行ってしまった。

とりあえず、竹本から女性を引き離すことが出来たわけだが……。
この場合の俺は、どういう行動をとるべきなんだろう? 

どのくらいの警戒心を持てばいいのか分からなかった俺は、そのまま彼女らを追い越して本屋に入った。しばらく本屋の中をうろうろしていたら、メッセージを着信した。確認すると、『三階の駐車場で待っていてください』と書かれてあった。

どうやら正しかったようだな。

少しだけ本屋で時間を潰し、ついでだからと紳士物の肌着売り場に行き俺と一弥の分を購入して駐車場へと向かった。

ブラブラしていた最中に入っていたメッセージに従って、3-Bの柱の方まで行くと、エンジンをかける音がした。その車に二人の姿を確認し、俺は早歩きでその車に乗り込んだ。

「悪い、待たせたか?」
「いいえ、大丈夫ですよ。それより、紹介します。こちら瀬川舞子さん、それとこちらは何でも屋の川口さん」

「初めまして、川口です。竹本の素行調査をしている最中であなたをお見かけして、深入りさせてはな危いと思い、勝手ながらあなたたちの間に割り込ませてもらいました」

「……はい。先ほど、鶴田さんからその話しを伺いました」

鶴田……?

ちらっと視線を向けると、壊し屋の彼女が頷いた。

「すみません自己紹介がまだでしたね。鶴田望と言います」
「鶴田さんか。改めてよろしく」

「こちらこそ。さて、どうしましょうか? 瀬川さんに詳しく話をお聞きしたいのですよね? そちらの事務所までお送りしましょうか」

「それは助かります」

俺らの会話を聞いていた瀬川さんが、急に心配そうに鶴田さんを見た。どうやら俺をまだ信用出来ていなくて、二人になる事を危惧しているようだ。

「鶴田さん、谷塚にはどう言われてる?」
「壊す手伝いをしに行けと言われました」
「ついでに俺と一緒に瀬川さんの話しを聞くのは拙いかな?」
「それくらいは大丈夫です」
「じゃあ、頼むよ」
「了解しました」

俺らの会話を聞いて、瀬川さんの表情がやっと和らいだ。
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