拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第五章

竹本との遭遇

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今日から、一弥と仕事は別になる。あいつは朝早く飯を食った後、石川さんを密かに守るため変装して早々に出て行った。何かあったら必ず連絡をする事だけは約束して。

俺の方は通常通り、片付け事や修理など以前と変わらない仕事をこなしていく。今までほぼ一弥が担当していたムムとリクとの散歩をも。

「失礼します。ありがとうございました」

散歩を終えて前原さんの家を出た。今日はもう、その後のスケジュールは何もないので適当に寄り道をして帰ることにする。

……と、ちょっと待てよ。せっかくだから谷塚の事務所まで寄ってみるか。色々と聞きたい事もあるし。

谷塚の事務所は駅の近くだ。ここからならわざわざ家に戻って車に乗るよりも電車で行った方が早い。俺は踵を返し、駅へと向かった。
駅の近くは繁華街になっていてお洒落な店も結構ある。お陰でそこかしこに、仲良さそうなカップルが歩いている。

……俺らは男同士だから外でこんな風にいちゃついたり出来ないけど、それでも何かちょっと考えてやりたいよな。……何とかお金を貯めて、温泉にでも誘うか?

なんてそんな事を悠長に考えながら歩いていると、目の前を見覚えのある男が可愛らしい女の子を連れて歩いていた。一瞬心臓がドクンと嫌な音を放つ。

竹本だ……!

これはもう谷塚の所に行くのは止めだ。だけど……見た感じ、あの二人はまだどことなくぎこちない。深みに入る前に助けられれば、何とかなるんじゃないか?
だけどどうする? 突然俺が出しゃばるのは不自然だ。だが放ってはおけん。

悶々としつつ後をつけながら、谷塚に電話を入れた。何を話すかとは考えていなかったけれど、どうにかするヒントが欲しかった。

「川口か? どうした」

挨拶も愛想もない電話の取りようだが、こういう時は単刀直入でありがたい。

「谷塚、急にすまん。今例の大学生が、新しいターゲットらしき女性と一緒に歩いているのを追い掛けている最中なんだが」

「……何してるんだよ、お前は」
「いや、だってこれ以上被害者を増やすわけにはいかないじゃないか」
「……で?」
「で……って、俺が急に入って引き離すわけにはいかないし、何か策はないかと……」

俺の返事に谷塚は、嫌味ったらしく大きなため息を吐いた。

「……慈善事業じゃない。金は取るぞ」
「分かった。協力してくれるのか?」
「優秀な壊し屋を向かわせる。場所を言え」
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