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第五章

言葉を用いない会話

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ベッドのない我が家では、色気のない事この上ない。
一旦寝室まで連れて行ったものの、布団を敷いてやらなければならない。

「ちょっと待っててな」と言って一弥を下ろし、押し入れを開けようとする俺の背後にぺたりとくっつく者がある。

「一弥……」
「そのままでもいいのに」
「俺が気になる」
「優しいんだから」
「……っ」

一弥は更にピッタリとくっ付き、シャツのすき間から掌をしのばせる。

「おい……」
「気がそがれると嫌だから」
「大丈夫だから……布団、敷かせろ」
「んー、……わかった」

俺の言葉に一弥は素直に少し身体を引いた。だが俺が布団を敷くとすぐに、襲うように俺の上に乗っかってきた。

「こら」
「建輔さん……」

少し落ち着けと言おうとしたのにどうやら聞く耳もたないようで、一弥は俺の顎を上向かせ唇を合わせ舌を潜り込ませてくる。
俺の口腔内を、なぞり、絡め、吸って。縦横無尽だ。

一弥にこんな風に請われて煽られない奴なんていない。俺はキスをしたまま強引に態勢を入れ替えて、一弥を組みふせた。
急な俺の行動に驚いたのか、一弥が俺のシャツをギュッと握る。

可愛い……。

いったん唇をついばんだ後、首筋に手のひらを這わせそこに吸いついた。一弥は「は……っ」と、かすれた色っぽい吐息を吐く。更にシャツをめくって脇腹を撫であげると、ピクンと体を震わせてキュッと唇を噛んだ。

慣れた仕草をしながらも、時おり見せる一弥の可愛い表情に堪らなくなる。だから俺はよけいに理性を失って、一弥をついつい貪ってしまうんだ。

一弥の滑らかな肌を手の平で感じ唇で探る。それに一弥は、甘い吐息とせわしなく上下する胸の動きで応えてくれた。
俺はこの抱き合うという行為は、愛する者同士の言葉を用いない会話だと思っている。
無防備に、そして素直に、お互いの気持ちをさらけ出すんだ。愛していると――。

「建輔さん……」
「どうした。……きついのか?」

指をちょうど増やしたところだった。時おり漏れる甘い声に、油断したか?

「……がう」
「何?」
「進んで……、もう」

もう待てないというような切羽詰まったような一弥の甘く可愛い顔。どうやら知らないうちに俺は焦らしていたようだ。

ゆっくりと沈むように腰を進めると、一弥は一際甘い声を漏らした。
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