63 / 98
第四章
別荘のガサ入れ 2
しおりを挟む
それぞれの部屋をくまなく探したがやっぱり無い。
まさか本当に一弥の言う通り、自宅の庭に埋まってるって言わないよな。
本当にそうだったら敵わないなと思いながら階段を降りた。
「見付かりそうか?」
「あ、建輔さん。うーん、こっちも難しい。さっぱりだよ」
「そうか……。隠すとしたらとんでもない所だろうとは思うんだが……」
「ううーん」
おそらく一弥は、絶対にこの別荘にあるはずだと確信を持っていたのだろう。一向に見つからない天女像に苛立ったのか、乱暴に頭を掻いている。
「庭とかも見てみるか?」
「……ああ、うん。そうだね」
はっきり言って、何となく家の中よりも外の方が確率は低いと思っている。だけど隅から隅まで調べておかないと、別荘にないという現実を受け入れ難かったのだ。
二人して地面を注視し、土の色や違和感、掘り起こした跡がないかと必死で調べた。だけど、腰が痛くなるほど這いつくばって調べても、違和感のあるような場所は探すことは出来なかった。
「これはもう、自宅の庭説か。それとも……」
「それとも、何?」
「いや、ひろ美の必死さに追い付いていないのかなって」
「どういうこと?」
「んー、つまりな、本当に一弥の言う通り天女像を叩き壊していないのなら、ひろ美はそれこそ本当に必死で考えたと思うんだ。誰にも見つからないようにな」
「そう……か。ってことは――」
一弥は突然表情を変えて、すごい勢いで別荘の中へと入って行った。俺も慌てて後を追う。
「一弥、どうした?」
「建輔さんのさっきの言葉で思い付いた。俺らがこんな所にはないと思っていたところ! 俺はトイレをもう一回見るから、建輔さんは風呂場を探して!」
「お、おう」
確かに、他の部屋に比べて探す場所も少ないから、あまり熱心に調べもしなかったけど。
浴室の扉を開けて、「う~ん」と呻る。
この室内のどこに潜んでいると言うのだ。
とにかくもう一度悔いのないように調べようとスリッパを履きかけた時、「あったー!」と一弥の大声が聞こえて来た。
俺は履きかけたスリッパを放り投げ、一弥の許へと走った。
「見てよこれ、こんな所に!」
一弥が手にしていたのは、ポリ袋に入った天女像だ。水タンクの蓋が開いていて、その中に隠されていたことが分かった。
「考えもしなかったな、そんなトコ」
「……執念だよね」
愛する人の物だから壊したくない、だけど綺麗にしまっておく必要もない。
そこに、ひろ美の峯野さんに対する執着とも取れる愛憎が見え隠れするように思えた。
まさか本当に一弥の言う通り、自宅の庭に埋まってるって言わないよな。
本当にそうだったら敵わないなと思いながら階段を降りた。
「見付かりそうか?」
「あ、建輔さん。うーん、こっちも難しい。さっぱりだよ」
「そうか……。隠すとしたらとんでもない所だろうとは思うんだが……」
「ううーん」
おそらく一弥は、絶対にこの別荘にあるはずだと確信を持っていたのだろう。一向に見つからない天女像に苛立ったのか、乱暴に頭を掻いている。
「庭とかも見てみるか?」
「……ああ、うん。そうだね」
はっきり言って、何となく家の中よりも外の方が確率は低いと思っている。だけど隅から隅まで調べておかないと、別荘にないという現実を受け入れ難かったのだ。
二人して地面を注視し、土の色や違和感、掘り起こした跡がないかと必死で調べた。だけど、腰が痛くなるほど這いつくばって調べても、違和感のあるような場所は探すことは出来なかった。
「これはもう、自宅の庭説か。それとも……」
「それとも、何?」
「いや、ひろ美の必死さに追い付いていないのかなって」
「どういうこと?」
「んー、つまりな、本当に一弥の言う通り天女像を叩き壊していないのなら、ひろ美はそれこそ本当に必死で考えたと思うんだ。誰にも見つからないようにな」
「そう……か。ってことは――」
一弥は突然表情を変えて、すごい勢いで別荘の中へと入って行った。俺も慌てて後を追う。
「一弥、どうした?」
「建輔さんのさっきの言葉で思い付いた。俺らがこんな所にはないと思っていたところ! 俺はトイレをもう一回見るから、建輔さんは風呂場を探して!」
「お、おう」
確かに、他の部屋に比べて探す場所も少ないから、あまり熱心に調べもしなかったけど。
浴室の扉を開けて、「う~ん」と呻る。
この室内のどこに潜んでいると言うのだ。
とにかくもう一度悔いのないように調べようとスリッパを履きかけた時、「あったー!」と一弥の大声が聞こえて来た。
俺は履きかけたスリッパを放り投げ、一弥の許へと走った。
「見てよこれ、こんな所に!」
一弥が手にしていたのは、ポリ袋に入った天女像だ。水タンクの蓋が開いていて、その中に隠されていたことが分かった。
「考えもしなかったな、そんなトコ」
「……執念だよね」
愛する人の物だから壊したくない、だけど綺麗にしまっておく必要もない。
そこに、ひろ美の峯野さんに対する執着とも取れる愛憎が見え隠れするように思えた。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
好きな人の婚約者を探しています
迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼
*全12話+後日談1話
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします
muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。
非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。
両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。
そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。
非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。
※全年齢向け作品です。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
俺を助けてくれたのは、怖くて優しい変わり者
くるむ
BL
枇々木尚哉は母子家庭で育ったが、母親は男がいないと生きていけない体質で、常に誰かを連れ込んでいた。
そんな母親が借金まみれの男に溺れたせいで、尚哉はウリ専として働かされることになってしまっていたのだが……。
尚哉の家族背景は酷く、辛い日々を送っていました。ですが、昼夜問わずサングラスを外そうとしない妙な男、画家の灰咲龍(はいざきりゅう)と出会ったおかげで彼の生活は一変しちゃいます。
人に心配してもらえる幸せ、自分を思って叱ってもらえる幸せ、そして何より自分が誰かを好きだと思える幸せ。
そんな幸せがあるという事を、龍と出会って初めて尚哉は知ることになります。
ほのぼの、そしてじれったい。
そんな二人のお話です♪
※R15指定に変更しました。指定される部分はほんの一部です。それに相応するページにはタイトルに表記します。話はちゃんとつながるようになっていますので、苦手な方、また15歳未満の方は回避してください。
婚約破棄されたら魔法使いが「王子の理想の僕」になる木の実をくれて、気付いたらざまぁしてた。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
僕は14年間の婚約者である王子に婚約破棄され、絶望で死にそうに泣いていた。
そうしたら突然現れた魔法使いが、「王子の理想の僕」になれる木の実をくれた。木の実を食べた僕は、大人しい少年から美少年と変化し、夜会へ出掛ける。
僕に愛をくれる?
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる