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第四章

募る愛情 2

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何度も何度も重ね合わされる唇。それがだんだん深くなり、互いに貪りあった。
無意識に一弥の首裏に手をのばしてキスに没頭している俺の両肩を、一弥がグイッと少し強めに押した。おかげで唇が引き離されて少しムッとする。

「一弥……」

どれだけ欲っしているのか、俺の声はかすれていた。一弥の目が猫のように細められる。

「今日は少し、俺の好きなようにさせて。建輔さんの体、触りたい」
「え? ……っ!」

言っている意味を呑み込めないうちに、一弥の唇が俺の首筋に移動した。それと同時に温かな手のひらが、愛おしそうに俺の胸を撫でる。

「かず……っ!」
「好き……、大好きなんだ、建輔さん……」

肌を啄み舌を這わせる合い間にしゃべるものだから吐息がかかる。おかげで体が勝手にビクンと跳ねて、恥ずかしかった。

「大好き……」

一弥はなおもうわ言のように呟きながら夢中になって体中に唇を這わせ、時折まるでこれは自分のものだと言うようにぎゅっと俺を抱きしめる。

やっぱりあのカルキという奴のことが気になって不安なんだろうか。
一弥のことを安心させたくて、俺もこいつの背中に腕を回して出来るだけ優しくしっかりと抱きしめた。

「建輔さん?」
「俺も大好きだよ。一弥のなにもかもすべてが大事なんだ」

一弥の過去の傷も、頑なで純真な心も、俺はその何もかもが愛しい。
俺のそんな気持ちを、一弥はちゃんと気附いているだろうか?

そっと体を離して、一弥の顔を覗き込んでみた。目が合うと、少し目を見開いた一弥が、段々と表情を崩して泣きそうな顔になってきた。
その頬にそっと掌をあて、愛しい気持ちのままに親指でなぞる。そして、俺はもう一度唇を寄せて一弥のそれを覆った。

どうやら滾る欲望よりも愛情の方が勝ってしまったらしい。俺を触りたいと言う一弥の思うようにさせながら、同時に俺も自分の気持ちを伝えるために一弥の体中を優しく愛撫し続けた。
互いの肌に唇を這わせ、愛撫しあい、時に目を合わせ見つめ合って暖かな時間が過ぎていく。

「どうしよう」
「なに?」
「……わからない。わからないけど、泣きたいくらい幸せ」
「一弥……」
「来て、建輔さん。来て……」

切羽詰まった表情で一弥が両腕を伸ばした。
気が付いていなかったが、どうやら俺も限界が近かったらしい。請われるまま引き寄せられて、一弥の中へと腰を進めた。
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