拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第四章

募る愛情

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「……風呂、入るか」
「ええっ!?」

気が抜けて溜め息まじりに呟くと、案の定と言うべきか一弥が非難の声を上げた。

「平静になっちまったからな、風呂から出たら布団の中で抱きしめて温めてやるから」
「……分かった」
「先入ってこい。ここは片附けておく」
「え? でも……」
「いいから、いいから。愚図愚図してるともっと冷めちまうぞ」

戸惑う一弥の背中を押して、風呂場へと押しやった。その間に洗い物や片附けを済ませ、ついでに布団も敷いておいた。
明日行く個展のことを調べようとスマホを弄っていたところに、風呂あがりの一弥がやって来た。

「お先に」
「ああ、出たか。戸締まりもしておいたし布団も敷いてあるから、好きにしてていいぞ」
「……うん」

こくりと頷いた一弥が、目を細めて口角を上げた。久しぶりに見るその色っぽい表情に、静まりかけていたはずの雄の欲望がむくりと起き上り始めるのを感じた。




「…………」

やっぱり想像通り、風呂からあがっても一旦くすぶり始めた熱が冷めることは無かった。苦笑いを浮かべて静かにドアを開ける。
俺の視線の先には、俺の布団の中に入って気持ちよさそうに目を閉じている一弥の姿があった。

「……寝たのか?」

あんなにその気になっていて、しかも俺の布団に入っているんだ。だから俺が風呂から出てくるのを待っているつもりではあったんだろうけど。

静かに近付いて一弥の顔を覗き込む。瞼は開かなかった。
きっと色々あった疲れから、眠たくなったのだろう。一弥の眠りの邪魔をする気はないが、それでもこいつの体温を感じたくて、一弥を起こさないように気をつけながらゆっくりと布団の中に入った。

「えっ!?」

急に腕を取られて体を反転させられ驚いた。てっきり眠っているとばかり思っていた一弥が、目を細め口角を上げてゆったりと笑っている。

「驚いた?」
「ああ、驚いたよ。疲れて眠ってるかと思った」
「……そんなこと、あるわけないじゃん」

俺の上に乗っかる形になっている一弥が、笑いながら腕を曲げて唇を寄せて来た。
柔らかくて温かな唇が、ふわりと俺のそれに触れた。
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