拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第四章

谷塚の訪問

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布団の上の方が良いと言って寝室に連れてきたはいいが、家にベッドは無いので布団は畳んで押入れにしまっていた。寝室一面に広がる畳を見て、二人とも苦笑いが溢れる。

「いいよ。布団なんか敷かなくても」
「フローリングよりはマシかもしれないが……」 
「うん。ずっとまし」

畳の上に下ろしてすぐに 、一弥は俺の背に腕を回して強請るように引き寄せた。引き寄せられるままに唇を重ね、何度も何度も啄む。だが、これからというところで思わぬ邪魔が入った。

ピンポーン
ピンポーン

誰だ? こんな時間に。

「出るの?」
ピンポーン、ピンポンピンポン、ピンポーン

「…………」 

あの傍若無人な感じはきっと谷塚だろう。 だがああやって無遠慮な時はたいてい、彼にとって何か重要な用件がある時だ。

仕方がないと起き上がる俺に、一弥が恨めしそうな視線を向けた。

「出るんだ」
「悪いな、多分谷塚だ。何かあったのかもしれん」

俺が立ち上がって玄関に向かうと、ため息をつきながら一弥も起き出した。
訪問者はやはり谷塚だった。

「何だ、こんな時間に」 
「悪いな。お前んとこのロ……、坊やのことで話がある」 
「一弥の?」 
「入ってもいいか?」
「あ? ああ」

ここで谷塚をあげたりしたら一弥の機嫌が悪くなりそうだったが、そんなことは言っていられない。さっき一弥から古巣の犯罪集団のことを聞いたばかりだ。嫌な予感にとらわれながら、俺は谷塚を部屋にあげた。
 
「何しに来たんだよ、おっさん」
「おっさんは、酷いな。川口とそう歳は変わらないぞ」

一弥の悪態に苦笑いをしながらも、谷塚はそれを軽くかわした。一弥は余計にムッとした表情になる。

「一弥、谷塚は一弥のことで知らせることがあるそうだ」
「俺の?」

一弥は自分の為に谷塚が来てくれたと知らされ、怪訝な顔をした。それでもせっかくの二人の時間を邪魔された気持ちの方が強いのだろう。一弥は俺の隣にドカッと腰を下し、これ見よがしに俺の腕を取りべったりと引っ付いた。
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