拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第四章

愛おしくて仕方が無い

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強張った表情のまま俺の顔を凝視した後、一弥は諦めたように息を吐いた。

「気付いてたんだね」

そりゃ、気付くだろう。
苦笑して頷くと、一弥もそうだよね、と小さく笑みを漏らした。

「……言いたくないか」 
「そんなことないよ。ただ心配かけたくなかったから、流すつもりではいたけど」
「じゃあ教えてくれるか?」
「……カルキが、手下を連れて歩いてた」
「カルキ?」

「カイリの側近ってやつ? カイリにすごく憧れてて、俺のことを毛嫌いしてた。多分カイリが死んだ後は、あいつがトップになってるんじゃないかな」 

「そうか……。あそこはアジトが近いのか?」 
「そうでもないよ。もしかしたらあの辺一帯にも進出して、店を出しているのかもしれない」
「店?」
「うん。バーとかキャバクラとかさ、あとホストクラブもあったかな」
「そんなことにまで手を出してるのか」

「カイリが生きてた頃から少しずつ、その商売をやり始めてた。ただあの一帯までには、手を出してはいなかったんだけど」

「そうなのか……」

ああいう集団はトップが倒れてもナンバー2が上に伸し上がって、そのまま継続されていくんだな。警察もしっかり取り締まって、逮捕してくれればいいのに。
 
心の中でため息をつきながらそんなことを考えていた。ふと視線を感じて顔を上げると、和也が猫のようなクリンとした目で俺を見ている。
なんだか堪らなくなって和也に近寄り、背中に腕を回し引き寄せた。

「建輔さん?」 
「んー?」
「……どうか、した?」
「いや……」

温かくて、 そして華奢な体。こんな頼りなげな少年の心の奥に、どれだけの傷があるのかと思うとやり切れない思いだ。

「建輔さん……」

小さく掠れた声で俺を呼び、一弥も俺の背中に腕を回しぎゅっと力を込めた。その様がただただ愛おしくて、一弥を抱く腕に力を込めた。

しばらく菱と抱き合ったままでいたんだが、だんだん気持ちが昂ぶってきて抱きしめ合うだけでは済まなくなった。少しだけ体を離して一弥の名を呼び、顔を上げたところで唇を寄せた。俺の意図を察した一弥も、少し伸び上がって俺の唇を受け入れた。

夢中で一弥の甘い口腔内を犯す。
本当に夢中になって一弥を貪っていたせいで気が付かなかったが、いつのまにか俺の手の平は一弥の背中を下降して、弾力のある柔らかな尻へと移動していた。
ピクンと一弥の肩が揺れたことで自覚した。

……おっさんかよ。俺って実は結構スケベだったんだな。

「建輔さん……」

唇を離し自分のいやらしさに自嘲していた間に、一弥は放置されたと焦れていたようだ。ぐいっと俺を引き寄せて、逆に俺の首筋に吸い付いた。

「おいっ、ちょっと待て」 
「なんで? 先に誘ったのは建輔さんじゃない」
「いや、だから汗かいてるし、シャワーで汗を流してからの方がいいんじゃないのか?」
「何女の子みたいなこと言ってるんだよ。俺建輔さんのニオイ好きだから大丈夫」

そう言って一弥は、さらに俺の服を脱がそうとシャツをめくり上げた。

「コラコラコラコラ」

一弥に主導権を取られては、煽られて我慢が出来なくなるのがオチだ。しょうがないので力任せに和也を引き剥がして、お姫様抱っこで立ち上がった。急に俺に持ち上げられて、和也はびっくりして目を瞬かせる。

「ここは狭いだろう。布団の上の方がいい」
「建輔さん……、うん」 

ほっとして微笑む一弥の表情はやはり色っぽくて、きっと俺の体温は1℃は上昇している。
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