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第四章
初めての外食
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「それじゃあ、そろそろ出かけるか」
「うん」
北条美術工芸大学までは歩いて行ける距離ではないので、車を出すことにした。アパートの駐車場まで歩いて行くと、 一弥がちょっぴり驚いた顔をする。
「どうした?」
「あ、いや。車持ってるんだなって思って」
「ハハ。手軽な体力作りのためにも、俺は歩き派だからな。遠出じゃない限りはわざわざ車を出さないし」
「そうなんだ。でも建輔さんらしいね」
車と言ったって、かなり古い軽自動車だ。パタンと乗り込んで発進した。
大学に行く途中にボックスバーガーがあるので、そこに寄った。一瞬ドライブスルーにしようかとも思ったのだが、一弥が一度も外食をしたことがないと言っていたので店内で食べることにした。
「いらっしゃいませー」
可愛らしい女性の声が店内に響く。一弥はちょっとびっくりしたようだ。
可愛いなと思ったがあえてそこには触れず、テーブルの上に貼られているメニュー表を指差した。
「何が食いたい?」
「えっと……」
一弥はメニュー表を見ながら考え込んでいる。もしかしたらハンバーガーを食べるのも、初めてなのかもしれない。手助けのつもりで、俺のものを先に選ぼうと思った。
「先に注文するな。ええっと、この特製ボックスバーガーとサラダとスープのセットで」
「かしこまりました。お召し上がりは店内でなさいますか?」
「ああ」
「ありがとうございます。お会計は――、」
まとめて会計でも良かったのだが、見ると一弥はまだ迷い中だったようなので、先に自分のぶんだけ支払っておいた。
「決まったか?」
「え、あ、ごめん。えっと俺は、このチーズバーガーにサラダとスープのセット」
「チーズバーガーにサラダとスープのセットですね。店内でお召し上がりでよろしいですか?」
「はい」
「ではお会計は――、」
会計を済ませ、すぐに出来上がってきたので、それぞれトレーを持ち空いてる席へと向かった。
店内は約半分ぐらいが埋まっている。お昼時なので近くの会社員らしき人も何人かいたが、小さな子供連れの若い母親たちが結構いた。
熱々のハンバーガーをガブッと一噛み。 一弥の目がちょっぴり大きくなり、幸せそうに綻ぶ。もぐもぐもぐもぐ咀嚼してごくんと飲み込んだ。
「美味っ!」
「そうか、よかったな」
「うん。いいなあ、みんな。普通にこうやって食べてるんだね」
「……まあ、そうだが。だけど俺は、一弥の作る食事の方がずっと美味いと思うがな」
「えっ?」
「ああ、すまんすまん。本音なんだが、でも余裕のある時は、たまにはこうやって外食でもするか。一人での外食は寂しいが、二人でならやっぱり楽しいもんな」
「建輔さん……。うん、そうだね」
ちょっぴりはにかんで微笑む一弥が可愛い。
サクッと食事を済ませた後、俺らはまた車に乗り込んで、北条美術工芸大学へと向かった。
「うん」
北条美術工芸大学までは歩いて行ける距離ではないので、車を出すことにした。アパートの駐車場まで歩いて行くと、 一弥がちょっぴり驚いた顔をする。
「どうした?」
「あ、いや。車持ってるんだなって思って」
「ハハ。手軽な体力作りのためにも、俺は歩き派だからな。遠出じゃない限りはわざわざ車を出さないし」
「そうなんだ。でも建輔さんらしいね」
車と言ったって、かなり古い軽自動車だ。パタンと乗り込んで発進した。
大学に行く途中にボックスバーガーがあるので、そこに寄った。一瞬ドライブスルーにしようかとも思ったのだが、一弥が一度も外食をしたことがないと言っていたので店内で食べることにした。
「いらっしゃいませー」
可愛らしい女性の声が店内に響く。一弥はちょっとびっくりしたようだ。
可愛いなと思ったがあえてそこには触れず、テーブルの上に貼られているメニュー表を指差した。
「何が食いたい?」
「えっと……」
一弥はメニュー表を見ながら考え込んでいる。もしかしたらハンバーガーを食べるのも、初めてなのかもしれない。手助けのつもりで、俺のものを先に選ぼうと思った。
「先に注文するな。ええっと、この特製ボックスバーガーとサラダとスープのセットで」
「かしこまりました。お召し上がりは店内でなさいますか?」
「ああ」
「ありがとうございます。お会計は――、」
まとめて会計でも良かったのだが、見ると一弥はまだ迷い中だったようなので、先に自分のぶんだけ支払っておいた。
「決まったか?」
「え、あ、ごめん。えっと俺は、このチーズバーガーにサラダとスープのセット」
「チーズバーガーにサラダとスープのセットですね。店内でお召し上がりでよろしいですか?」
「はい」
「ではお会計は――、」
会計を済ませ、すぐに出来上がってきたので、それぞれトレーを持ち空いてる席へと向かった。
店内は約半分ぐらいが埋まっている。お昼時なので近くの会社員らしき人も何人かいたが、小さな子供連れの若い母親たちが結構いた。
熱々のハンバーガーをガブッと一噛み。 一弥の目がちょっぴり大きくなり、幸せそうに綻ぶ。もぐもぐもぐもぐ咀嚼してごくんと飲み込んだ。
「美味っ!」
「そうか、よかったな」
「うん。いいなあ、みんな。普通にこうやって食べてるんだね」
「……まあ、そうだが。だけど俺は、一弥の作る食事の方がずっと美味いと思うがな」
「えっ?」
「ああ、すまんすまん。本音なんだが、でも余裕のある時は、たまにはこうやって外食でもするか。一人での外食は寂しいが、二人でならやっぱり楽しいもんな」
「建輔さん……。うん、そうだね」
ちょっぴりはにかんで微笑む一弥が可愛い。
サクッと食事を済ませた後、俺らはまた車に乗り込んで、北条美術工芸大学へと向かった。
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