拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第四章

澄んだ世界

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ソファの上で窮屈だったこともあり、俺は我に返ることができた。
もうそろそろ昼になろうかという時間だ。こんな時間から、いくら一弥が可愛く色っぽいからと言って溺れているわけにはいかない。

一弥を抱き寄せるようにして起き上がらせ、ぽんと腿を叩いた。

「さてと、どう動くか」
「手っ取り早く、その別荘に入っちゃおう」
「おい? ……まさか本気で不法侵入する気か?」
「うん」
「~~~~~~~~」

当然のように軽くうなずく一弥に、俺は頭が痛くなった。

「あのな、法を犯しちゃいけないと……」

「そんなこと言ってたら、穏便に解決なんてできないよ? そりゃこっそり他人の住居に侵入するのは悪いことかもしれないけど、物を盗みに行くわけじゃないし。取り返しに行くだけだろ?」

「…………」

一弥はそう言って出かける支度に入ったが、こんなに簡単に動いてしまっていいのかという気持ちが俺の中で渦巻いている。
もちろん、佐孝さんの話を疑っているわけではないが。

「一弥、その前に」
「え?」
「一応裏を取ろう」
「…………」
「彼女を信じてないわけじゃない。だが仮にも法に触れることをしようというんだ。しっかり調べて納得してからじゃないと駄目な気がする」

俺が真顔でそういうと、一弥の表情が一瞬止まった。そして少しずつそれは綻んで、一弥の表情に小さな笑みが浮かぶ。

「……やっぱり建輔さんだ」
「何?」

ちょっぴりムッとした俺を見て、一弥が近寄ってきた。

「揶揄ってるんじゃない。俺と違って澄んだところに生きてきた人なんだなって……、そう思っただけだよ」
「一弥……」
「建輔さんと一緒に居たら、俺も……、俺もその場所に近づくことができるのかな」
「何言ってんだ!」
「――え?」
「お前はっ、お前の中にだって澄んだものはちゃんとあるだろ! 偏りすぎてたり気づけなかったりしても、初めて会った時から一弥にはちゃんと生き物を慈しむ優しい気持ちがあったじゃないか」

「……建輔さん」

一弥の顔がクシャリと歪んだ。下を向いて肩を小刻みに震わせている。
そっと引き寄せると、一弥は下を向いたまま俺に凭れかかった。

「……大好き」
「ああ。偶然だな、俺も大好きだ」

一弥の手が、俺の背中に回った。
その手は、小刻みに震えていた。
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