15 / 98
第二章
ぐっすり眠りたいんだ
しおりを挟む
今は二月、真冬だ。だから確かに寒い。
……のだが。
そろそろ寝るかと寝室に二人で入ったと同時に、一弥が俺と同じ布団に入って来ようとして慌てた。
「こらこら」
グイッと一弥の体を押し、「ああ」と思い直した。
「明後日には敷布団は来ると思うけど、その間お前がここ使うか?」
「……俺がって、なに? 健輔さんは座布団の方で寝るってこと?」
「ああ」
「――――」
譲ってやると言っているのに、一弥はぷくっと頬を膨らませて剥れた表情を作った。
「……別に。温かい方がいいとは思うけど、それじゃ意味ないもん」
「え?」
「俺は健輔さんとくっ付いて寝たいだけだし」
「…………」
「俺、健輔さんとくっ付いてると凄い嬉しいし、安心できるんだ。だから本当は……」
「――なに?」
「……なんでもない」
そう言った切り、一弥はそこから動こうとはしなかった。布団の中に入ろうとはしなくなったが、だがそこから退きたくないようで、布団の淵に正座した状態で固まっている。
「一弥」
「……なに?」
きっと、自分の所に戻れと言ったら今なら素直に聞くのだろう。だけど、それだけの冷たい対応を取るのはどうしても憚られた。
「座布団寄せてここに引っ付けろ。……俺は他人と一緒に寝るのは慣れてないし、昨夜で安眠出来ないのは実証済みだからそれは遠慮したいが、手を繋いで寝るくらいなら構わないだろ。……一弥がそれで良ければだが」
「……っ、う、うんっ!」
シュンとしていた顔が一変して、明るい表情になった。一弥はサッと立ち上がり、座布団と上布団を引っ張ってくる。
……良かった。対応、間違ってはいなかったようだな。
ぴったりと並んだ布団。そしてお互いに横から手を伸ばして握手をするように握り合った。
キュッと力を入れてみると、うれしそうに一弥の方もキュッと俺の手を握り返してきた。
こういう触れ合いで一弥が安心できるのなら……、こいつがずっとそれを望むのなら、続けてみても良いかもしれないな。
そんなことを思いながら、俺は眠りの淵へと誘われていった。
……のだが。
そろそろ寝るかと寝室に二人で入ったと同時に、一弥が俺と同じ布団に入って来ようとして慌てた。
「こらこら」
グイッと一弥の体を押し、「ああ」と思い直した。
「明後日には敷布団は来ると思うけど、その間お前がここ使うか?」
「……俺がって、なに? 健輔さんは座布団の方で寝るってこと?」
「ああ」
「――――」
譲ってやると言っているのに、一弥はぷくっと頬を膨らませて剥れた表情を作った。
「……別に。温かい方がいいとは思うけど、それじゃ意味ないもん」
「え?」
「俺は健輔さんとくっ付いて寝たいだけだし」
「…………」
「俺、健輔さんとくっ付いてると凄い嬉しいし、安心できるんだ。だから本当は……」
「――なに?」
「……なんでもない」
そう言った切り、一弥はそこから動こうとはしなかった。布団の中に入ろうとはしなくなったが、だがそこから退きたくないようで、布団の淵に正座した状態で固まっている。
「一弥」
「……なに?」
きっと、自分の所に戻れと言ったら今なら素直に聞くのだろう。だけど、それだけの冷たい対応を取るのはどうしても憚られた。
「座布団寄せてここに引っ付けろ。……俺は他人と一緒に寝るのは慣れてないし、昨夜で安眠出来ないのは実証済みだからそれは遠慮したいが、手を繋いで寝るくらいなら構わないだろ。……一弥がそれで良ければだが」
「……っ、う、うんっ!」
シュンとしていた顔が一変して、明るい表情になった。一弥はサッと立ち上がり、座布団と上布団を引っ張ってくる。
……良かった。対応、間違ってはいなかったようだな。
ぴったりと並んだ布団。そしてお互いに横から手を伸ばして握手をするように握り合った。
キュッと力を入れてみると、うれしそうに一弥の方もキュッと俺の手を握り返してきた。
こういう触れ合いで一弥が安心できるのなら……、こいつがずっとそれを望むのなら、続けてみても良いかもしれないな。
そんなことを思いながら、俺は眠りの淵へと誘われていった。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
好きな人の婚約者を探しています
迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼
*全12話+後日談1話
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします
muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。
非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。
両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。
そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。
非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。
※全年齢向け作品です。
俺を助けてくれたのは、怖くて優しい変わり者
くるむ
BL
枇々木尚哉は母子家庭で育ったが、母親は男がいないと生きていけない体質で、常に誰かを連れ込んでいた。
そんな母親が借金まみれの男に溺れたせいで、尚哉はウリ専として働かされることになってしまっていたのだが……。
尚哉の家族背景は酷く、辛い日々を送っていました。ですが、昼夜問わずサングラスを外そうとしない妙な男、画家の灰咲龍(はいざきりゅう)と出会ったおかげで彼の生活は一変しちゃいます。
人に心配してもらえる幸せ、自分を思って叱ってもらえる幸せ、そして何より自分が誰かを好きだと思える幸せ。
そんな幸せがあるという事を、龍と出会って初めて尚哉は知ることになります。
ほのぼの、そしてじれったい。
そんな二人のお話です♪
※R15指定に変更しました。指定される部分はほんの一部です。それに相応するページにはタイトルに表記します。話はちゃんとつながるようになっていますので、苦手な方、また15歳未満の方は回避してください。
婚約破棄されたら魔法使いが「王子の理想の僕」になる木の実をくれて、気付いたらざまぁしてた。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
僕は14年間の婚約者である王子に婚約破棄され、絶望で死にそうに泣いていた。
そうしたら突然現れた魔法使いが、「王子の理想の僕」になれる木の実をくれた。木の実を食べた僕は、大人しい少年から美少年と変化し、夜会へ出掛ける。
僕に愛をくれる?
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる