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第二章

ぐっすり眠りたいんだ

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今は二月、真冬だ。だから確かに寒い。

……のだが。

そろそろ寝るかと寝室に二人で入ったと同時に、一弥が俺と同じ布団に入って来ようとして慌てた。

「こらこら」

グイッと一弥の体を押し、「ああ」と思い直した。

「明後日には敷布団は来ると思うけど、その間お前がここ使うか?」
「……俺がって、なに? 健輔さんは座布団の方で寝るってこと?」
「ああ」
「――――」

譲ってやると言っているのに、一弥はぷくっと頬を膨らませて剥れた表情を作った。

「……別に。温かい方がいいとは思うけど、それじゃ意味ないもん」
「え?」
「俺は健輔さんとくっ付いて寝たいだけだし」
「…………」
「俺、健輔さんとくっ付いてると凄い嬉しいし、安心できるんだ。だから本当は……」
「――なに?」
「……なんでもない」

そう言った切り、一弥はそこから動こうとはしなかった。布団の中に入ろうとはしなくなったが、だがそこから退きたくないようで、布団の淵に正座した状態で固まっている。

「一弥」
「……なに?」

きっと、自分の所に戻れと言ったら今なら素直に聞くのだろう。だけど、それだけの冷たい対応を取るのはどうしてもはばかられた。

「座布団寄せてここに引っ付けろ。……俺は他人と一緒に寝るのは慣れてないし、昨夜で安眠出来ないのは実証済みだからそれは遠慮したいが、手を繋いで寝るくらいなら構わないだろ。……一弥がそれで良ければだが」

「……っ、う、うんっ!」

シュンとしていた顔が一変して、明るい表情になった。一弥はサッと立ち上がり、座布団と上布団を引っ張ってくる。

……良かった。対応、間違ってはいなかったようだな。

ぴったりと並んだ布団。そしてお互いに横から手を伸ばして握手をするように握り合った。
キュッと力を入れてみると、うれしそうに一弥の方もキュッと俺の手を握り返してきた。

こういう触れ合いで一弥が安心できるのなら……、こいつがずっとそれを望むのなら、続けてみても良いかもしれないな。

そんなことを思いながら、俺は眠りの淵へと誘われていった。
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