拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

文字の大きさ
上 下
11 / 98
第二章

揶揄われているだけだ…

しおりを挟む
リビングに戻り一弥の横顔を見ている内に、ふと思い出した。
昨夜一弥は、俺の布団に入り込んできたんだよな。しかも寒いからと言って、俺にぴったりとくっ付いて……。

敷布団、もう一枚買うかな……。
痛い出費だが、毎晩毎晩ああやって同じ布団で寝る羽目になってはこっちの心臓が持ちそうにない。
パソコンの前で布団を物色しながら唸っていると、ひょいっと一弥が覗き込んできた。

「なに見てるの? 布団?」
「ん? ああ。座布団並べて敷布団代わりじゃ、眠り辛いだろうと思ってさ」
「……俺のため?」
「まあなぁ」

一弥のためとも思ってはいるが、一番は自分のためだ。
だってコイツ……、妙な色気があるんだ。俺はソノ気なんて無いはずだが、それなのにそんな俺でさえ妙な気分にさせられてしまう。
……あれは、いろいろと拙い。

「……いらないのに」
「えっ、はあ?」
「余分な出費だろ? ……2人でくっ付いて寝てる方が、暖かいじゃない」
「……っ、そういう訳にはいかないだろ! だいたいこっちが寝不足に……!」

口走ってしまってから、しまったと思った。
一弥が一瞬目を見開いて、嬉しそうな揶揄うような含みのある笑顔に変わっていったから。

……俺の悶々とした気持ち、絶対バレた。

「いいのに。……俺、健輔になら何されてもいいよ」

背後からピトリとくっ付いて一弥が頬を擦り付けて来た。声音も妙な色気を含んでいる。
しかも、なんだ、急に呼び捨て!

「……な、なに言ってんだっ。揶揄うな」
「揶揄ってないし、本心なんだけどなあ」

ぐうぅぅぅ……。

どうしてだか分からないが、絶対一弥の奴、俺のことを揶揄いがいのある面白いおもちゃだと思っているぞ。翻弄されてる俺も俺だが。

ぽちっ。

「ああっ、もったいない―」
「いいんだ。必要なものは買わないと」
「……いいって言ってるのに」

そんな唇を尖らせて俺を見るな。上目遣いなその表情も止めろ!

――随分懐かれてるよな。


……本当に、そうなんだろうか?
ただ揶揄われているだけのような気がするんだが。

何だか、ドッと疲れた俺だった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

カランコエの咲く所で

mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。 しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。 次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。 それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。 だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。 そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る

112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。 ★本編で出てこない世界観  男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。

雪を溶かすように

春野ひつじ
BL
人間と獣人の争いが終わった。 和平の条件で人間の国へ人質としていった獣人国の第八王子、薫(ゆき)。そして、薫を助けた人間国の第一王子、悠(はる)。二人の距離は次第に近づいていくが、実は薫が人間国に行くことになったのには理由があった……。 溺愛・甘々です。 *物語の進み方がゆっくりです。エブリスタにも掲載しています

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。

琉海
BL
 不仲な兄の代理で出席した他国のパーティーで愁玲(しゅうれ)はその国の王子であるヴァルガと出会う。弟をバカにされて怒るヴァルガを愁玲は嘲笑う。「兄が弟の事を好きなんて、そんなこと絶対にあり得ないんだよ」そう言う姿に何かを感じたヴァルガは愁玲を自分の番にすると宣言し共に暮らし始めた。自分の国から離れ一人になった愁玲は自分が何も知らない事に生まれて初めて気がついた。そんな愁玲にヴァルガは知識を与え、時には褒めてくれてそんな姿に次第と惹かれていく。  しかしヴァルガが優しくする相手は愁玲だけじゃない事に気づいてしまった。その日から二人の関係は崩れていく。急に変わった愁玲の態度に焦れたヴァルガはとうとう怒りを顕にし愁玲はそんなヴァルガに恐怖した。そんな時、愁玲にかけられていた魔法が発動し実家に戻る事となる。そこで不仲の兄、それから愁玲が無知であるように育てた母と対峙する。  迎えに来たヴァルガに連れられ再び戻った愁玲は前と同じように穏やかな時間を過ごし始める。様々な経験を経た愁玲は『知らない事をもっと知りたい』そう願い、旅に出ることを決意する。一人でもちゃんと立てることを証明したかった。そしていつかヴァルガから離れられるように―――。  異変に気づいたヴァルガが愁玲を止める。「お前は俺の番だ」そう言うヴァルガに愁玲は問う。「番って、なに?」そんな愁玲に深いため息をついたヴァルガはあやすように愁玲の頭を撫でた。

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

処理中です...