拾ったのは、妖艶で獰猛な猫だった

くるむ

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第一章

戻って来た一弥

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……俺も腹が減ったな。

さっき一弥に作ってやった焼きそばがまだ残っていた。
もちろん俺の夕食にもしようと思って、少し多めに作ったんだが、腹ペコの一弥にだいぶ食べられてしまい俺の一食分には少し物足りなかった。

ハッキリ言って、俺は無精者だ。
かといって大金持ちでは無いから、外食をするなんて気はさらさらない。

……しょうがねーなあ。
確かカボチャがあったから簡単に甘辛く煮るか。それだけならそう時間もかからないし。

俺はパパッと作ったカボチャの煮物と焼きそばを食べて一息つき、片づけが終わったちょうどその時、玄関でチャイムが鳴った。

誰だ、今頃。
谷塚か?

口は悪いしいい加減なところのあるやつだが、だがあいつはそれなりに俺のことを気にかけてくれていて、俺でも出来そうな仕事がある時は手伝いに呼んでくれることもあった。

もしかしたらそうかもしれんと思いつつ玄関の扉を開けると……、さっきの、一弥がちょっぴり居心地悪そうに立っていた。

「……どうした?」
「一応報告……と思って。あの店長、……俺が素直に謝ったら、一応許してくれた」
「ああ! そうか、良かったな!」

そうか、そうか!
やっぱり素直が一番だよな!

俺は素直に喜んだ。一弥は照れているのか、下を向いて頭を掻いている。

「……で、さ」
「なに?」
「あの……、俺のこと……しばらく置いてくれないかな」
「……え?」

びっくりして絶句した俺に、一弥の表情がみるみる曇っていく。

「……わり。やっぱり図々しいよな。忘れてくれていいから! ……じ、じゃあな」
「おい! ちょっと待て!」

あからさまな強がりと分かる一弥の態度に、俺は咄嗟にその手を掴んでいた。

「行くとこ無いんだろ! いいよ、泊っていけ」
「……本当に?」
「ああ、困った時はお互い様だ。とはいっても、見ての通りの狭い部屋だし何のもてなしも出来ないけどな」
「……ありがと」

一弥は俺の言葉にはにかんで、たどたどしく礼を言った。初めて顔を合わしたときの険のある態度はすっかり消えて、まるで普通にどこにでもいるあどけない少年を見ているようだ。


――コードネーム、ローザ。


……俺の勘違いか?
他人の空似で、まったくの別人なんだろうか?

だけど、こんなに綺麗なまるで少女のような容貌の少年が、そんなにゴロゴロいるとは思えない。
それに本当にローザだとしたら、ますます追い出したりなんかできないだろう。

恐らく彼には、行く当てなんてないはずなのだから。
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