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第一章

出会い

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「終わりました」

水漏れはパッキンを交換して終了。大したことは無かった。

「ありがとう。お世話様。川口さんは仕事が丁寧だから助かるわ。近いうちに剪定せんていもしてもらいたいから、また連絡するわね」
「はい、ありがとうございます」

代金をもらい、向坂さんの家を後にした。

真面目で堅物な性格が、たまには功を奏することがある。
仕事だけは丁寧に仕上げたい。そんな俺の姿勢に好感を持ってくれる向坂さんのようなお客さんもたまにいて、気が付くと常連さんが何人かついていたのだ。

……とは言っても単価はたかが知れているので、懐が潤うというほどまでには至らないところが悲しいところだ。

仕事がないよりはましだよなぁ。
HPだけじゃなく、たまにはチラシ配りとかもした方がいいんだろうか……。

考え事をしながらペットショップの前を通りかかったら、ギャンギャンと煩い犬の鳴き声と怒声が聞こえて来た。
え? と思って振り返った途端、誰かにぶつかりもふもふの毛玉の塊が顔の辺りを掠める。

「お兄さん! そこのあんた! その犬捕まえて!!」

必死の形相で言い募るその人の迫力に押されて指した指の先を見ると、まだちっちゃな子犬がひっくり返った状態で投げ出されていた。きっとさっきのもふもふの毛玉だ。
見ると今にも起き上がって走り出しそうな気配だったので、慌ててタックルするように子犬を抱きかかえた。

「ハア―。ありがとうございました、助かりましたー」

エプロンをしたおじさんがホッとした表情で近寄って来た。どうやらペットショップの店員のようだ。

「ああ、いや。捕まえられて良かったです」
「テメー、このヤロー! 何邪魔しやがってんだよ!」

子犬を無事に店員に渡せたと思ったら、横から胸倉をつかむくらいの勢いで怒鳴られた。

「なに言ってんだお前! この人が捕まえてくれたから助かったんだろうが! 来い! 警察に通報するからな!」

え? え? え?
何がどうなってるんだ?

……あ?
この子、どこかで……。あっ! さっきの、谷塚が見せてくれた少年じゃないか!

俺がそう気づいた瞬間、その少年は走って逃げだした。

「おい! 待ちなさい、……ああっ」

店員の慌てる声を背に、俺は気がついたら反射的にその少年の後を追いだしていた。
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