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体が勝手に動きました……
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昼休みが終わるころに、陽翔が教室に戻って来た。
ぞろぞろと凄い人数を引き連れて、怠そうに歩いている。
……最近の陽翔の感じはいつもああだ。なんだか投げ遣りで、楽しい事なんて何もないって言ってるみたいで見ている俺もやりきれなくなる。
俺らと一緒の時はあんなんじゃ無かったのにな……。
甘えたり笑ったり、時には拗ねたりもしたけれど、それでもあんな風に何もかもが面白くないってそんな表情をしたことなんて一度も無かった。
『俺から見れば、陽翔の方が由羽人と恋人になりたがっていたような気がするし』
『陽翔が好きなら頑張れ由羽人!』
「…………」
――陽翔に気持ちを伝える。
うわっ。
ドキドキドキドキドキドキドキドキ。
ドキドキドキドキドキドキドキドキ。
ううううう。
……か、考えただけで、心臓が死にそうになる。
こっそり陽翔の方に視線を向ける。
同じクラスの羽柴が、陽翔の肩に腕を回して抱き寄せようとしていた。
ムカッとして一瞬席を立ちそうになったけど、その前に陽翔が腕を払いのけたおかげで我に返った。
分からない。
蒼空が言っていることが全部当たっているのかなんて分からない。
だけど、一つだけわかっていることがある。
俺は、あんな陽翔は見ていたくない。
見ていたくないんだよ!!
授業が終わってすぐに、俺は素早く席を立って陽翔の席へ向かった。
なのに、俺の行動を察知したみんなも陽翔の所に集まって来た。
「陽翔、もう帰るだろ。今日は俺と帰ろう」
「それより、そろそろ誰と付き合うか決めようぜ」
まるで俺を陽翔に近づかせないようにとしているようで、みんなが俺の前に立ちふさがる。
「陽翔!!」
たまらなくなって大声で陽翔を呼んだら、ちゃんと陽翔の耳にも俺の声が届いたようだ。一瞬だけど陽翔の体がピクンと反応した。
反応して、俺を振り返った陽翔の表情はまだ拗ねたままだった。
ビビりそうになったけど、汗ばんだ掌をギュッと握りしめて気合を入れる。
「話があるんだ、陽翔」
真っ直ぐ陽翔の目を見つめ返してそう言うと、陽翔の瞳が微妙に揺らいだ。
戸惑っているような警戒しているような、何とも言えない表情だ。
「陽翔、俺――」
ドキドキドキドキドキドキ。
ドキドキドキドキドキドキ。
煩い!!
何でこんな大事な時にドキドキドキドキ鳴るかな!
し、心臓が壊れそうだ!!
「ごめん、陽翔、俺っ、俺さ……っ」
ああ~、もう!
俺、誰かにこんな風に自分の気持ちを伝えたことって無いんだよ!
『好きだ』って、たった一言いう事がこんなに大変な事だったなんて知らなかった。
ウロウロ言い淀む俺の表情を見ていた陽翔の表情が、なぜだかさっきより曇ってきた。
「いいよ、由羽人。――こっちこそ、ごめん。もう、あの話は気にしなくていいから。……帰ろうか、田中」
「お、おう!! 帰ろうぜ!」
!!?
諦めたような表情の陽翔が、みんなを連れ立って帰ろうとした。
ちょっと待て!
俺はまだ何も陽翔に伝えてないんだよ!!
「好きだ! 俺、陽翔のことが好きなんだよ!!」
叫ぶ俺にみんなが驚いた顔で振り向いた。もちろん陽翔も。
だけど当の陽翔は俺の言葉を信じてはくれないようだった。俺が陽翔を拒否したと思い込んでしまっているようで、陽翔とのフリをし続けなければいけないと俺が思い込んでいると勘違いしているようだった。
「だから、もういいんだって――!?」
陽翔の言葉は俺が塞いだ。
うん。体が勝手に動いてた。
気がついたら俺は、陽翔の腕を引き寄せて、陽翔の唇に俺の唇を重ね合わせていた。
ぞろぞろと凄い人数を引き連れて、怠そうに歩いている。
……最近の陽翔の感じはいつもああだ。なんだか投げ遣りで、楽しい事なんて何もないって言ってるみたいで見ている俺もやりきれなくなる。
俺らと一緒の時はあんなんじゃ無かったのにな……。
甘えたり笑ったり、時には拗ねたりもしたけれど、それでもあんな風に何もかもが面白くないってそんな表情をしたことなんて一度も無かった。
『俺から見れば、陽翔の方が由羽人と恋人になりたがっていたような気がするし』
『陽翔が好きなら頑張れ由羽人!』
「…………」
――陽翔に気持ちを伝える。
うわっ。
ドキドキドキドキドキドキドキドキ。
ドキドキドキドキドキドキドキドキ。
ううううう。
……か、考えただけで、心臓が死にそうになる。
こっそり陽翔の方に視線を向ける。
同じクラスの羽柴が、陽翔の肩に腕を回して抱き寄せようとしていた。
ムカッとして一瞬席を立ちそうになったけど、その前に陽翔が腕を払いのけたおかげで我に返った。
分からない。
蒼空が言っていることが全部当たっているのかなんて分からない。
だけど、一つだけわかっていることがある。
俺は、あんな陽翔は見ていたくない。
見ていたくないんだよ!!
授業が終わってすぐに、俺は素早く席を立って陽翔の席へ向かった。
なのに、俺の行動を察知したみんなも陽翔の所に集まって来た。
「陽翔、もう帰るだろ。今日は俺と帰ろう」
「それより、そろそろ誰と付き合うか決めようぜ」
まるで俺を陽翔に近づかせないようにとしているようで、みんなが俺の前に立ちふさがる。
「陽翔!!」
たまらなくなって大声で陽翔を呼んだら、ちゃんと陽翔の耳にも俺の声が届いたようだ。一瞬だけど陽翔の体がピクンと反応した。
反応して、俺を振り返った陽翔の表情はまだ拗ねたままだった。
ビビりそうになったけど、汗ばんだ掌をギュッと握りしめて気合を入れる。
「話があるんだ、陽翔」
真っ直ぐ陽翔の目を見つめ返してそう言うと、陽翔の瞳が微妙に揺らいだ。
戸惑っているような警戒しているような、何とも言えない表情だ。
「陽翔、俺――」
ドキドキドキドキドキドキ。
ドキドキドキドキドキドキ。
煩い!!
何でこんな大事な時にドキドキドキドキ鳴るかな!
し、心臓が壊れそうだ!!
「ごめん、陽翔、俺っ、俺さ……っ」
ああ~、もう!
俺、誰かにこんな風に自分の気持ちを伝えたことって無いんだよ!
『好きだ』って、たった一言いう事がこんなに大変な事だったなんて知らなかった。
ウロウロ言い淀む俺の表情を見ていた陽翔の表情が、なぜだかさっきより曇ってきた。
「いいよ、由羽人。――こっちこそ、ごめん。もう、あの話は気にしなくていいから。……帰ろうか、田中」
「お、おう!! 帰ろうぜ!」
!!?
諦めたような表情の陽翔が、みんなを連れ立って帰ろうとした。
ちょっと待て!
俺はまだ何も陽翔に伝えてないんだよ!!
「好きだ! 俺、陽翔のことが好きなんだよ!!」
叫ぶ俺にみんなが驚いた顔で振り向いた。もちろん陽翔も。
だけど当の陽翔は俺の言葉を信じてはくれないようだった。俺が陽翔を拒否したと思い込んでしまっているようで、陽翔とのフリをし続けなければいけないと俺が思い込んでいると勘違いしているようだった。
「だから、もういいんだって――!?」
陽翔の言葉は俺が塞いだ。
うん。体が勝手に動いてた。
気がついたら俺は、陽翔の腕を引き寄せて、陽翔の唇に俺の唇を重ね合わせていた。
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