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頑張れ由羽人(蒼空からのエール)
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それからの陽翔は、まるで取り付く島もないと言った風情で、話しかける隙も与えてはくれない。
唯、俺にとっての救いは、陽翔がまだ特定の相手を作っていないところだ。
「まーったく、陽翔の奴なに考えてるんだか……」
「…………」
あれからずっとギクシャクし続けている俺らの事を、蒼空はずっと気にかけてくれていた。
最近の陽翔は昼休みすら俺とは一緒に取ってくれなくて、あんなに嫌がっていた学食でご飯を済ますようになっていた。
だから今、ほとんど誰もいない教室で蒼空と一緒にお弁当を食べている。
「由羽人とのフリを止めてからもう10日も経つのに、陽翔の奴いったいいつまで拗ねてんだ」
「……分かんない。……? え? あれって怒ってるんじゃなくて拗ねてるの?」
俺が驚いて聞き返すと、蒼空は目を丸くして俺を見た。
「なんだ、お前気付いて無いの? 陽翔の奴、時々チラチラと由羽人の方を見てるだろ」
「え!? ほ、ホントに?」
「……マジかよ。お前どんだけ鈍感なんだ? いくら何でもこれじゃあ陽翔も気の毒だろ」
「え、だって……!」
俺だって気にして陽翔の方を見てるのに、一度も目が合ったことなんてない。だから陽翔の中の俺の存在なんて大したことなんて無いんだと思ってた。
それが俺の今の認識だから、陽翔が俺の方をチラチラ見てるなんて気が付きもしなかった。
「じゃあ、何で……。何であんな風に俺のこと突き放したりするんだろう……」
ため息交じりに呟くと、蒼空が「う~ん」と肘をついた。
「由羽人さ、陽翔になんて言ったの?」
「え?」
「だから、陽翔が急に冷たくなる前、なに言ったか覚えてる?」
「……あー、えっと」
アノ時は……。
陽翔にキスされて……。
うわっ。思い出したらまた顔が熱くなった。
陽翔の甘い舌が俺の……。うわわわわ。
火照って仕方がない俺の頬を冷まそうと、パタパタと両手で風を送る。忙しなく手を動かしながら蒼空に目を向けると、蒼空は呆れた表情で俺を見ていた。
「あー、もういいや。何を言ったのかは分からないけど、何となく察した。……まあ、あれだ。お前陽翔に自分の気持ちをちゃんと伝えろ」
「……え? は、……ええっ?」
こ……、こいつ今何って言った!?
自分の気持ち? って、俺の気持ち!?
えーーーーーーーーー!?
ボムッって音でもしたんじゃないかと思うくらい、一挙に顔が熱くなった。
だって、だって!!
何で蒼空が俺の気持ちを知ってるんだよ!?
あんなに必死で隠してたのに!!
「由羽人の気持ちなんてバレバレだよ」
嘘だろー―――――!!
……て、あ。
だから?
だから陽翔は冷たくなったのか?
フリだけのはずなのに俺の気持ちに気が付いて……。
「あ、それは無いから」
「!?」
「ななな、なんだよ蒼空! 俺、なにも言って無いだろ! お前人の気持ち読めんの!?」
「――ばーか。んなわけねーだろ。由羽人が顔に出すぎんだよ」
か、顔に出すぎ……。
うわ~、マジかよ。それはそれで恥ずかしすぎる……。
「とにかく由羽人はさ、陽翔のこと好きなんだろ? だったら頑張って好きだって打ち明けてみれば?」
「……でも、……陽翔は虫よけが欲しかったんだよ? それなのに当の俺が、陽翔のこと好きだって言ったら、やっぱりいらないって言われちゃうだろ……」
「そんなこと無いと思うけどな。だってさー、俺から見れば陽翔の方が由羽人と恋人になりたがっていたような気がするし」
「えっ!?」
驚く俺に、蒼空が苦笑して言葉を続ける。
「でなきゃさ、あんな風に嫉妬したり拗ねたり、自分からキスしたりしないだろ? 俺はあれは、由羽人は自分のものだっていう陽翔なりのアピールだったと思うけどな」
「……うそ」
「嘘なんて言わないよ。多分さ、陽翔は必死で計画練って、由羽人と付き合いたかっただけなんじゃないかな。だけどそれを途中で由羽人自身に拒絶されて、盛大に拗ねちゃったんだよ、きっと」
蒼空に説き伏せるようにそう言われて、俺の心臓がまたバクバクと煩くなる。
「俺で助けてやれるんならいいけど、ああなった陽翔は俺の言う事も素直に聞いてくれないからな……。だから! 陽翔が好きなら頑張れ由羽人!」
「……だ、だけどさ……」
蒼空にそう言われても、自信なんて無い俺は蒼空の言葉をうのみには出来ない。ドキドキおろおろする俺に、蒼空が嫌な爆弾を落とした。
「あいつが自分の気持ちに面倒くさくなって、『どうでもいいや』って投げ遣りになる前に救い出してやってくれよ。……中学時代のような陽翔なんて、やっぱあんま見たくないからさ」
中学時代の陽翔。
陽翔が二度と戻りたくないと言っていた暗黒時代だ。
掌から嫌な汗が滲みだす。
俺は脳裏に浮かぶ陽翔の冷たい顔に、キュッと唇を噛んだ。
唯、俺にとっての救いは、陽翔がまだ特定の相手を作っていないところだ。
「まーったく、陽翔の奴なに考えてるんだか……」
「…………」
あれからずっとギクシャクし続けている俺らの事を、蒼空はずっと気にかけてくれていた。
最近の陽翔は昼休みすら俺とは一緒に取ってくれなくて、あんなに嫌がっていた学食でご飯を済ますようになっていた。
だから今、ほとんど誰もいない教室で蒼空と一緒にお弁当を食べている。
「由羽人とのフリを止めてからもう10日も経つのに、陽翔の奴いったいいつまで拗ねてんだ」
「……分かんない。……? え? あれって怒ってるんじゃなくて拗ねてるの?」
俺が驚いて聞き返すと、蒼空は目を丸くして俺を見た。
「なんだ、お前気付いて無いの? 陽翔の奴、時々チラチラと由羽人の方を見てるだろ」
「え!? ほ、ホントに?」
「……マジかよ。お前どんだけ鈍感なんだ? いくら何でもこれじゃあ陽翔も気の毒だろ」
「え、だって……!」
俺だって気にして陽翔の方を見てるのに、一度も目が合ったことなんてない。だから陽翔の中の俺の存在なんて大したことなんて無いんだと思ってた。
それが俺の今の認識だから、陽翔が俺の方をチラチラ見てるなんて気が付きもしなかった。
「じゃあ、何で……。何であんな風に俺のこと突き放したりするんだろう……」
ため息交じりに呟くと、蒼空が「う~ん」と肘をついた。
「由羽人さ、陽翔になんて言ったの?」
「え?」
「だから、陽翔が急に冷たくなる前、なに言ったか覚えてる?」
「……あー、えっと」
アノ時は……。
陽翔にキスされて……。
うわっ。思い出したらまた顔が熱くなった。
陽翔の甘い舌が俺の……。うわわわわ。
火照って仕方がない俺の頬を冷まそうと、パタパタと両手で風を送る。忙しなく手を動かしながら蒼空に目を向けると、蒼空は呆れた表情で俺を見ていた。
「あー、もういいや。何を言ったのかは分からないけど、何となく察した。……まあ、あれだ。お前陽翔に自分の気持ちをちゃんと伝えろ」
「……え? は、……ええっ?」
こ……、こいつ今何って言った!?
自分の気持ち? って、俺の気持ち!?
えーーーーーーーーー!?
ボムッって音でもしたんじゃないかと思うくらい、一挙に顔が熱くなった。
だって、だって!!
何で蒼空が俺の気持ちを知ってるんだよ!?
あんなに必死で隠してたのに!!
「由羽人の気持ちなんてバレバレだよ」
嘘だろー―――――!!
……て、あ。
だから?
だから陽翔は冷たくなったのか?
フリだけのはずなのに俺の気持ちに気が付いて……。
「あ、それは無いから」
「!?」
「ななな、なんだよ蒼空! 俺、なにも言って無いだろ! お前人の気持ち読めんの!?」
「――ばーか。んなわけねーだろ。由羽人が顔に出すぎんだよ」
か、顔に出すぎ……。
うわ~、マジかよ。それはそれで恥ずかしすぎる……。
「とにかく由羽人はさ、陽翔のこと好きなんだろ? だったら頑張って好きだって打ち明けてみれば?」
「……でも、……陽翔は虫よけが欲しかったんだよ? それなのに当の俺が、陽翔のこと好きだって言ったら、やっぱりいらないって言われちゃうだろ……」
「そんなこと無いと思うけどな。だってさー、俺から見れば陽翔の方が由羽人と恋人になりたがっていたような気がするし」
「えっ!?」
驚く俺に、蒼空が苦笑して言葉を続ける。
「でなきゃさ、あんな風に嫉妬したり拗ねたり、自分からキスしたりしないだろ? 俺はあれは、由羽人は自分のものだっていう陽翔なりのアピールだったと思うけどな」
「……うそ」
「嘘なんて言わないよ。多分さ、陽翔は必死で計画練って、由羽人と付き合いたかっただけなんじゃないかな。だけどそれを途中で由羽人自身に拒絶されて、盛大に拗ねちゃったんだよ、きっと」
蒼空に説き伏せるようにそう言われて、俺の心臓がまたバクバクと煩くなる。
「俺で助けてやれるんならいいけど、ああなった陽翔は俺の言う事も素直に聞いてくれないからな……。だから! 陽翔が好きなら頑張れ由羽人!」
「……だ、だけどさ……」
蒼空にそう言われても、自信なんて無い俺は蒼空の言葉をうのみには出来ない。ドキドキおろおろする俺に、蒼空が嫌な爆弾を落とした。
「あいつが自分の気持ちに面倒くさくなって、『どうでもいいや』って投げ遣りになる前に救い出してやってくれよ。……中学時代のような陽翔なんて、やっぱあんま見たくないからさ」
中学時代の陽翔。
陽翔が二度と戻りたくないと言っていた暗黒時代だ。
掌から嫌な汗が滲みだす。
俺は脳裏に浮かぶ陽翔の冷たい顔に、キュッと唇を噛んだ。
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