俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ

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フリは終わり

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上向かされ、後頭部を陽翔の掌で支えられてなす術もない。
驚いて、どうしていいのか分からずに引っ込めていた俺の舌に、陽翔のそれが甘く絡みつく。
縮こまる俺の舌に執拗に絡まり、かと思うと形を確かめるかのように撫でて吸い付く。

俺は頭を真っ白にさせ、さっきから体は固まったままだ。
ただ、俺のバカな心臓だけが恐ろしいくらいの大きな音を響かせながら忙しなく動いていた。



「……由羽人」

ガチガチに固まっていた俺の体をやっと解放した陽翔が、未だ至近距離で俺の名を呼ぶ。

なかなか我に返る事の出来ない俺が呆然としていると、何を思ったのか陽翔はまた俺に顔を近づけてキスをしようとした。


「ちょ、ちょっと待って陽翔!」

咄嗟に感じた危機感に、俺の両手が反応した。
グイッと陽翔の両肩を押して、俺からいったん遠ざける。

「――何だよ、由羽人」

凄く不機嫌な顔。
だけど、だけどそれはこっちのセリフだ!


ドキドキして、ドキドキしすぎて体まで震えて来た。それに半端ない顔の熱さ。
俺は息を細く細く吐いて、何とか自分を落ち着かせた。


「……とにかくちょっと、ちょっとこっち来て」

みんなの前でフリの話をするわけにはいかないと思った俺は、熱い顔と未だにバクバクと煩い心臓を必死で無視して、陽翔を引っ張ってそのまま教室を出た。



人気のない校舎裏まで引っ張って、掴んでいた手を離す。
さっきの深いキスの感触が未だに俺の唇に残っていて、恥ずかしくて陽翔の顔をまっすぐ見られない。

「由羽人?」

陽翔が一歩近づいて、離した俺の指先を軽くつまんだ。
途端にピクンと反応する俺の体。
……どこまで過剰反応なんだよ……、恥ずかしすぎる。


「あ、あのさ!」

恥ずかしさを紛らわそうと大声を出した俺の緊張が伝わったのか、陽翔が訝しい顔をして小首を傾げた。


「キスは、……キスはもう止めよう」


「……え?」

まるで何を言われたのか分からないと言った表情で、陽翔が俺を見た。
その表情に一瞬怯みそうにはなったけれど、これは俺の死活問題だ。

……そうだよ、死活問題だ。
これ以上陽翔に翻弄され続けたら、きっととんでもない事になってしまうから。

「だって、ホラ。もう俺らが付き合ってるってみんなに知れ渡っているだろ? だったら別に――」
「嫌だったのか?」

「……え?」

不機嫌そうに陽翔が口を挟んだ。しかも何故だか少し咎めるような表情だ。


――て、何で協力者の俺が責められてる気分にならなきゃなんないの?
なんだかもの凄く腑に落ちない状況に、俺の眉間にも、きっと今しわが寄った。


「……いい、わけ……無いじゃん。俺ら男同士だし……、それに親友だろ? だ、だからさ……っ」
「分かった」

また俺が全部言い終わらないうちに陽翔が言葉をかぶせる。


は終わりだ。――みんなには、由羽人とは別れたって言っておく」

「え……? ちょ、ちょっと待ってよ陽翔……、別に俺はそんなこと……、陽翔っ!!」


俺が言い終わらないうちに陽翔は踵を返して走り出した。

「ちょっと待ってってば、陽翔!!」


大声で呼び止める俺の言葉も聞かずに、陽翔は俺からどんどん遠ざかっていく。




1人残された俺は、去っていく陽翔の後ろ姿を呆然と見続けていた。
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