俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ

文字の大きさ
上 下
17 / 30

恋をしていた

しおりを挟む
「よー、由羽人。陽翔ー」

廊下の向こうから、大きく手を振りながら蒼空が登校してきた。

「蒼空だ!」

遅いよ蒼空ー!
俺の精神安定剤!

陽翔と偽装恋愛をし始めてから、俺の精神状態は乱高下している。
陽翔は偽装工作とばかりに他のみんなにイチャイチャしているところを見せつけようと画策するものだから、されてる俺はフリでの行為だと分かっているのに、それでもドキドキすることを止められない。

……これって、マジで不味い気がするんだよな……。

とにかく!
俺が拙いことにならないうちに、早く精神状態を戻さねばと蒼空に向かって早く来いと手招きをした。
……んだけど、なぜだか急に俺を抱きしめていた陽翔の腕の力が強くなった。

「陽翔?」

抱きしめられて腕の中に顔が埋まったせいで声がくぐもる。

「……お前さー」
耳元で吹き込むように囁かれ、ぞくりと背筋を何かが駆け上がった。

ピクン!

み、耳!!
耳に柔らかいものが……っ

うわあああ~陽翔ぃ!!!
み、耳に唇くっつけんなぁ!!!

叫ぶに叫べず俺は心の中で喚きながら体を強張らせ、陽翔の腕をギュウッと掴む。


だけど俺の心の声に気が付くはずもない陽翔は、さらに吐息交じりの声で俺を非難した。


「……お前、誰の恋人だと思ってんだよ……?まさか、蒼空のこと俺より好きだって……言わないよな?」


は、はああっ!?

んなわけないじゃん!
蒼空に同じことされても、こんなドキドキなんてするわけないだろ!
俺は……!


……え?

俺……?



拙いと思ってなるべく深く考えては駄目だと思っていたことが、俺の心の奥深くからムクリと顔を上げ始めた。


俺の中で一番大事で、……そして何よりも、振り回されてもどんなことがあっても守りたいと思っていたこの俺の親友に、俺はそれだけではない別の思いを抱いていたことに気付いてしまった。



俺は、きっと知らないうちに、




陽翔への思いが溢れださないようにと、心に蓋をしていたんだ。


俺は本当は、ずっと前から陽翔に恋をしていた――
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

処理中です...