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ソレ、俺のファーストキス……
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むにゅ。
……この擬音が適切かどうかは分からないけど、柔らかくて暖かいものが俺の唇に触れた。
俺の目には、相変わらずのぼやけたドアップの陽翔の顔が映っている。
……つまり、つまりこれって……。
瞬きも忘れて呆然としていたら、俺の唇に触れていたそれがゆっくりと離れていく。
「目、閉じろよ。……びっくりした?」
「は……陽、翔……」
シーンと静まり返った廊下。遠くの方からの喧騒は聞こえてくるけれど、周りでさっきまで俺に怒鳴っていた奴らも呆然と固まっているようだ。
「あ~、もう! ホント可愛い」
固まるみんなを余所に、陽翔だけが嬉しそうな表情で俺を見ている。そしてスッと手を伸ばして俺を抱き寄せギュッと抱きしめる。
「は、は、陽翔!!」
ギュウッと力強く抱きしめられる腕の感触に、俺の体はようやく再起動を始めた。
再起動と同時に、俺の心臓が今まで聞いたことも無いような爆音を鳴り響かせる。
ドッドツドッドッドッドッドッ。
ドッドツドッドッドッドッドッ。
し、死ぬの!?
俺、もしかしたらこのまま心臓が勢いよく動いて膨らんで、破裂して死んじゃうのか!?
顔も火がついたように熱くなってきたし、息苦しいんですけど!
「由羽人?」
もうほとんどパニクり状態の俺を陽翔が覗き込んできた。
俺の目に新たに飛び込んできた陽翔の赤い唇。
さっきの柔らかな感触を思い出して、思わず口を覆った。
ギャーーーーーーー!!
そうだよ、そうだよこいつ!
「お、お前! お前、俺のファーストキス!!」
「由羽人!」
俺が真っ赤になって抗議してるのに、陽翔の奴、嬉しそうな顔をしてやがる。
「あ~、やっぱそうだったかー。そうだよなあ、ファーストキスかあ。すっげー、嬉しい」
え?
ギュウーーーンッ!!
な、なんだこの心臓!
またわけの分からない変な音を立てやがった!
陽翔の一挙手一投足に俺がこんなに翻弄されてることも知らずに、陽翔はニコニコ顔で俺を見ている。
そして腕を伸ばして俺を再度抱きしめなおし、頬を俺の髪に嬉しそうに擦り合わせるものだから、俺は体から力が抜けてきてふにゃふにゃなタコのような気分だ。
……きっと今の俺、タコ同様全身真っ赤に違いない……。
「ごめんなあ、由羽人」
……ホントに悪いと思っていますか?陽翔さん。
甘い声で謝りながら、陽翔は俺を抱きしめたまま頭をなでなでしている。
「反省してるから許してな。せっかくのファーストキスを人前で済ませちゃって。でも、お前がみんなに責められてるの見てたら腹立っちゃってさ、……そしたら何でか急にキスしたくなっちゃったんだよなあ」
悪びれる風も無く俺の頭を撫でながら謝罪する陽翔に、呆然と見ていたこいつらが1人、また1人とこの場を離れていった。
全然気が付かなかったけど、最初の時よりは周りにいる人たちが減っているような気がする。恐らく大半のヤローたちは、途中で陽翔の熱演に耐え切れなくなって去って行ったんだろう。
陽翔の思惑は、少しずつだけど功を奏し始めているようだった。
……この擬音が適切かどうかは分からないけど、柔らかくて暖かいものが俺の唇に触れた。
俺の目には、相変わらずのぼやけたドアップの陽翔の顔が映っている。
……つまり、つまりこれって……。
瞬きも忘れて呆然としていたら、俺の唇に触れていたそれがゆっくりと離れていく。
「目、閉じろよ。……びっくりした?」
「は……陽、翔……」
シーンと静まり返った廊下。遠くの方からの喧騒は聞こえてくるけれど、周りでさっきまで俺に怒鳴っていた奴らも呆然と固まっているようだ。
「あ~、もう! ホント可愛い」
固まるみんなを余所に、陽翔だけが嬉しそうな表情で俺を見ている。そしてスッと手を伸ばして俺を抱き寄せギュッと抱きしめる。
「は、は、陽翔!!」
ギュウッと力強く抱きしめられる腕の感触に、俺の体はようやく再起動を始めた。
再起動と同時に、俺の心臓が今まで聞いたことも無いような爆音を鳴り響かせる。
ドッドツドッドッドッドッドッ。
ドッドツドッドッドッドッドッ。
し、死ぬの!?
俺、もしかしたらこのまま心臓が勢いよく動いて膨らんで、破裂して死んじゃうのか!?
顔も火がついたように熱くなってきたし、息苦しいんですけど!
「由羽人?」
もうほとんどパニクり状態の俺を陽翔が覗き込んできた。
俺の目に新たに飛び込んできた陽翔の赤い唇。
さっきの柔らかな感触を思い出して、思わず口を覆った。
ギャーーーーーーー!!
そうだよ、そうだよこいつ!
「お、お前! お前、俺のファーストキス!!」
「由羽人!」
俺が真っ赤になって抗議してるのに、陽翔の奴、嬉しそうな顔をしてやがる。
「あ~、やっぱそうだったかー。そうだよなあ、ファーストキスかあ。すっげー、嬉しい」
え?
ギュウーーーンッ!!
な、なんだこの心臓!
またわけの分からない変な音を立てやがった!
陽翔の一挙手一投足に俺がこんなに翻弄されてることも知らずに、陽翔はニコニコ顔で俺を見ている。
そして腕を伸ばして俺を再度抱きしめなおし、頬を俺の髪に嬉しそうに擦り合わせるものだから、俺は体から力が抜けてきてふにゃふにゃなタコのような気分だ。
……きっと今の俺、タコ同様全身真っ赤に違いない……。
「ごめんなあ、由羽人」
……ホントに悪いと思っていますか?陽翔さん。
甘い声で謝りながら、陽翔は俺を抱きしめたまま頭をなでなでしている。
「反省してるから許してな。せっかくのファーストキスを人前で済ませちゃって。でも、お前がみんなに責められてるの見てたら腹立っちゃってさ、……そしたら何でか急にキスしたくなっちゃったんだよなあ」
悪びれる風も無く俺の頭を撫でながら謝罪する陽翔に、呆然と見ていたこいつらが1人、また1人とこの場を離れていった。
全然気が付かなかったけど、最初の時よりは周りにいる人たちが減っているような気がする。恐らく大半のヤローたちは、途中で陽翔の熱演に耐え切れなくなって去って行ったんだろう。
陽翔の思惑は、少しずつだけど功を奏し始めているようだった。
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