俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ

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それは演技なんだってば

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陽翔の情報は、あっという間に広がる。

おかげで陽翔が俺と付き合い始めたという事が、ほぼ学校中に知れ渡ってしまったらしい。だって、顔も知らない上級生らしき人たちまでが、俺の事を遠くから指さしながら憎らし気に睨みつけるんだぞ。勘弁してくれ……。

「はーっ」

頬杖付きながら大きくため息を吐いていると、蒼空がにょきっと手を伸ばして俺の頭を撫でてくれた。

あーっ、慰めてくれてる~。
やっぱ、蒼空って良い奴♪

気持ちいい手の感触にほのぼのして、机の上に突っ伏してだら~んとする。きっと犬が飼い主に甘えてる時って、こんなダレた気分なんだろう。そんなまったり気分でクツロいでいたら、低~い低~い不機嫌な陽翔の声が聞こえて来た。

「蒼空……、それ俺の」

ソレ?
何だろ? 陽翔の好きなチョコでも奪ったのか?

不思議に思って顔を上げようとした時、蒼空が「ごめん、ごめん」と笑い出した。
そして俺の頭から手が離れていく。

撫でられる感触に癒されてたのに……と、強請る気持ちで視線を斜め上に持っていくと、離れた蒼空の手の代わりに陽翔が嬉しそうに俺の頭を撫で始めた。

うわっ、え!? 陽翔の手!?

うわわわわ。……て、何? どゅこと?
さっきのって、俺の事だったのか!?

とくん、とくん、とくん、とくん。


ちょっと待て、俺。
陽翔の発言には何の意味も無いんだぞ!
これは演技なんだから、みんなにただ恋人なんだって思われるようにしているだけなんだからな!

悶々としながらチラッと視線を陽翔に向けたら陽翔もこちらをジッと見ていて、パチリと目が合った。
目が合って、……その顔が甘く綻びていく。

……マメ過ぎんだろ。

演技過剰だよ、バカ。


そんな悪態でも心の中で吐いていなければ、俺の中の何か分からない厄介なものが顔を出してしまいそうで怖かった。
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