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13巻

13-3

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 4 お茶会


 しばらく時間が経つと、イーファは徐々に落ち着きを取り戻していった。
 小さな湯呑でお茶を飲みながら、静かに和菓子を頬張っている。
 そんなイーファの様子を眺めつつ、タクマは呟く。

「それにしてもだ。瀬川雄太が魔族側の召喚者で、しかも魔族の勘違いで放置されていたとはな……だけど、なぜ失敗と勘違いしたんだろう。ヴェルド様に気が付かれないような対策を講じていたからといって、邪神まで瀬川雄太に気が付かないなんて事あるのか? 邪神が気付いていれば、瀬川雄太を魔族のところに連れていきそうなもんだ」

 タクマの疑問を聞いたナビが、控えめに口を開く。

「マスター、私の予想を聞いていただけますか?」

 タクマが促すと、ナビは自分の推測を話し始めた。

「魔族たちがヴェルド様に認識されない召喚術を作ったという話ですが、実際は違うのかもしれません。もしかしたら魔族たちはヴェルド様から認識されないようにしたつもりで、神に認識されない術式を作ってしまったのではないでしょうか」
「……あ、そういう事か!」

 タクマはハッとする。ヴェルドと同じく、邪神も神だ。ヴェルドが召喚者を認識できない仕掛けによって、邪神も瀬川雄太を認識できなかった可能性がある。

「他にも理由があるのかもしれませんが、これまでの情報で考えられるのはその辺りかと」

 ナビはそう言って、ため息を吐いた。
 タクマは、改めて瀬川雄太に尊敬の念を抱く。

(逆境でしかない状況で、瀬川雄太は同郷の者たちを心配できる優しい男だった。もし俺が同じ状況でヴェルドミールに投げ出されたとしたら……日本にいた時のような人間不信のままだったとしたら……俺は瀬川雄太とは正反対の行動をしていたに違いない)

 そう考えて、タクマは思わず口にした。

「彼は強いな……俺にはない強さだよ」

 ナビは複雑な表情でタクマを見る。

「マスター……」
「……彼の遺志を俺が受け取ったのは、意味があるのかもしれないな……彼に代わって転移者や召喚者を救う。俺は自分にできる事しかやれないが、もしこの世界にまだ同郷の者がいるのなら……」

 タクマはそう呟くと、これから先、万が一同郷の者たちと接触する機会があれば、できる限りの事をしようと決意した。

「マスターさん、ごちそうさま!」

 ふいに、イーファの元気な声がした。
 タクマが見ると、イーファは和菓子を食べ終わっていた。

「和菓子っておいしいんだねぇ。口がすっかり幸せになっちゃった!」

 イーファは甘いものの力で、すっかり立ち直れたようだ。そう思ったタクマは、微笑みながら言う。

「そうか。それなら和菓子を出してよかったな。それで、どうだった? ヴェルド様に言いたい事は言えたか?」
「うん! 私の言いたかった事は大体言えたよ……あとは、創造主様の伝言を告げるだけ」
「そうか……だが、役目も大事だろうが、イーファの気持ちも大事だぞ。イーファ自身は、伝言を告げても、過去に折り合いをつけられそうなのか?」

 タクマは、イーファにそう尋ねた。
 伝言の中には、瀬川雄太の辛い気持ちが含まれている事も予想できる。それを伝えるという行為によって、イーファのヴェルド神への負の感情が増してしまわないか心配だったのだ。
 しかしイーファは、すっきりとした表情で言う。

「昔、私たちを封印する時に創造主様が言ったの。おそらく私がヴェルド神に会うのはずっと先で、自分の悲劇は過去の事になっているだろうって。起こった事は事実だけど、私が目覚めたあともずっと引きずっては駄目だよって」

 瀬川雄太はそれをゲートキーパー全員に伝えたという。神に会った場合の役割を与えはするが、いつまでも過去に囚われてはならないと。

「そうか……伝言はあくまで過去の事と捉えて、イーファたちには幸せになってほしい。瀬川雄太はきっと、そう思っていたんだな」

 瀬川雄太はゲートキーパーたちを家族のように大切にしていたのだと、タクマは感じた。
 瀬川雄太からゲートキーパーという存在を託された自分も、彼女たちを家族として迎え入れ、幸せにしたい。そう考えたタクマは、イーファに自分たち家族がトーランでどんな生活をしているのか話した。
 イーファはタクマの話をとても興味深そうに聞いていた。

「へー。引き取った子供たちや、行くあてのない人たちと暮らしているんだ。国境も大事だけど、タクマの家族たちも守らないとね!」

 頼もしいイーファの言葉にタクマはほっとする。
 しかし、ふとある事が気になってイーファに尋ねる。

「ところで、俺が死んだらゲートキーパーってどうなるんだ? 俺が死んだあとでも、ゲートキーパーは国を防衛できるのか?」

 半戦神はんせんしんであるタクマの寿命は、普通の人族よりもはるかに長い。しかし、永遠にヴェルドミールに生き続けられるわけではない。
 まだまだ先の事になるのは分かっているが、もし所有者が死ぬとゲートキーパーが機能しなくなってしまうなら、今のうちに対策しておきたい。タクマはそう思ったのだ。
 イーファは少し考えると、タクマに説明を始める。

「そうだね。そういう話もしなきゃいけないか。答えは、マスターさんが亡くなっても特に問題ない、だよ。私たちはマスターさんの魔力によって目覚めたけど、封印されない限りはマスターさんがいなくても活動できるんだ。私たちの活動に必要な魔力は、ヴェルドミールの自然界から吸収しているからね」

 自分がいなくなった場合でも、彼女たちは問題なく機能すると分かり、タクマはひと安心したのだった。



 5 瀬川雄太の許し


「ねえ、マスターさん。ヴェルド神は、いつまでああしているつもりなんだろ」

 イーファは、タクマに尋ねた。

「そうだな……」

 タクマは席を立ち、ヴェルドの方へ向かう。
 うなだれながら考え込んでいるヴェルドに、タクマは静かに声をかけた。

「ヴェルド様、大丈夫ですか」

 ヴェルドは力なく顔を上げる。いつもほがらかなヴェルドとはほど遠い、迷いに満ちた表情をしている。

「タクマさん……私は……」

 ヴェルドは後悔を口にしようとするが、タクマはそれをさえぎる。

「ヴェルド様、過去をいくら悔やんでも仕方ありません。失敗を教訓に、これからどうしていくのがいいか考えるべきではありませんか?」

 いくら神であっても、過去に戻る事はできない。反省する事は必要だが、立ち止まっていてもなんの解決にもならないのだ。実際に過去に縛られ、長く一人でいたタクマにはそれがよく分かっていた。だからこそ、あえてヴェルドにそう声をかけた。
 ヴェルドは少し表情をやわらげた。立ち直ったわけではないが、タクマの言わんとしている事は理解できたのだ。

「そうですね……答えを出すにはまだ時間がかかるかもしれません。ですが、それは一人になった時に大いに悩む事にします」

 タクマは、そう言ったヴェルドを見て頷いたあと、ナビとイーファを呼ぶ。
 ナビが心配そうにヴェルドに尋ねる。

「ヴェルド様、大丈夫ですか?」
「ええ、この問題は私が時間をかけて解決すべきだと分かりました。今は皆さんとの話し合いを進めなければ」

 ヴェルドはそう言うと、タクマたちにテーブルセットに座るよう促した。
 全員が着席したところで、タクマが改まった態度で口を開く。

「じゃあ、続きを始めましょうか。まずはイーファから、瀬川雄太が遺した伝言を」

 タクマに目配せされ、イーファはゆっくりと話を始める。

「うん。じゃあ、創造主様の言葉を伝えるね。さっきまでの話は私個人の思いだから、それは理解してほしいな。ここから話すのが、本当の創造主様の伝言だから」

 ヴェルドが静かに頷いたのを確認し、イーファは言葉を続ける。

「そのまま伝えるから、最後まで聞いてね。じゃあ……」

 イーファがそう言うと、その場にいる全員の頭の中に、瀬川雄太の声が聞こえてきた。


 ――ヴェルド神よ。まず最初に言っておかなければならないが、私はあなたをうらんではいない。いや、正確には、今は恨んでないと言うべきだろう。
 この世界に来てから十数年は、なぜ神は私に手を差し伸べてくれないのか、なぜ私はこんなに苦労しなければならないのかとずっと考えていた。
 しかしこの世界の事を調べた結果、神は完全無欠な存在ではないと悟ったのだ。
 私は幸いにして、自分の努力により、この世界で生き抜く力を得る事ができた。そして、自由を得、目標を得た。
 その目標とは、私と同じように神の加護を受けられない者が現れた時も、この世界で生きていける素地を用意する事だ。それが私の生きる目的となり、憎しみの心はいつしかなくなっていた。
 話したい事はたくさんあるのだが、今の話で私の気持ちは伝わったと思う。
 ヴェルド神よ、最後に私の願いを聞いてはくれないだろうか。
 これからこの世界にやって来る同郷の者たちには、自分の人生を謳歌おうかできる力と知識を与えてほしい。今の私が願う、唯一の事だ。


 瀬川雄太の伝言が終わると、イーファは大きく息を吐いた。

「……これが創造主様の伝言だよ」

 イーファの前で、ヴェルドは静かに泣く。

「申し訳ありません……彼の気持ちを考えたら、涙が……」

 つらい目にってもなお、神を許した瀬川雄太の言葉に、ヴェルドは感極まってしまったのだ。

「ヴェルド様、大丈夫ですか? もし時間が必要なら、俺たちはおいとましても……」

 タクマはそう提案するが、ヴェルドは首を横に振る。

「お気遣いはありがたいのですが、話を続けましょう。瀬川雄太さんのためにも、私たちが今すべき事に目を向けなければ」

 ハンカチで涙をぬぐったヴェルドは、イーファに向かって言う。

「まずはイーファ、瀬川雄太さんの伝言を運んでくれてありがとうございます。おかげで、神としてどうあるべきか改めて考える事ができました」

 ヴェルドに頭を下げられて、イーファはしばらく困ったような顔をしていた。しかし、すぐに笑顔になる。

「ううん、私も自分が気になっていた創造主様の過去を、ヴェルド神から聞けてよかったよ」

 イーファの顔を見て、ヴェルドも微笑む。だが、ヴェルドはすぐに表情を引き締めた。

「ですが、イーファに聞いておかなければならない事もあります。あなたはダンジョンコアに代わる防衛システムになりうると伺っています。ですが、本当に安全なのか確認しなければ、パミル王国の防衛を任せる事はできません。この空間に来たあなたを鑑定してみましたが……私の鑑定スキルは弾かれてしまいました」
「鑑定できない理由を知りたいの? それなら簡単だよ。鑑定できる者を、創造主様と同郷の人間に限定しているんだ」

 イーファはあっさりと答えた。
 それを聞いたヴェルドは、驚きのあまり目を丸くして固まる。神でも鑑定できないような制限をつけた、瀬川雄太の能力に仰天したのだ。

「私たちに限らず、創造主様は自分が作ったアイテムにはすべて同じ仕掛けをしていると言ってたよ。自分が遺すアイテムは、同郷の人に使ってほしいからって」

 瀬川雄太は、アイテムを鑑定できる者を異世界からやって来た人間に限定する事で、彼らだけがアイテムを使用できるようになると考えたのだろう。そう、タクマは推測する。
 タクマとヴェルドは、瀬川雄太は本当に同郷の人間のために生きていたのだと痛感した。
 タクマは瀬川雄太に、改めて敬意を抱く。

「確固たる意志がなければできない偉業だな。イーファ、君の創造主様はすごいよ」

 タクマのまっすぐな言葉に、イーファは満面の笑みを浮かべる。

「うん!! 私たちの創造主様はすごいんだ! さっき、ヴェルド神はゲートキーパーが安全な存在か心配してたみたいだけど……そこは問題ないよ!」

 機嫌きげんをよくしたイーファは、ゲートキーパーの機能を説明していく。

「創造主様のおかげで、私たちゲートキーパーは大きな力を持っているんだ。所有者に指定されたゲートは、どんな敵からも守る。そういう魔道具として作られた。だけど、使う人が残酷な命令を下しさえしなければ、罪のない人に危害を加えるなんて事はしないよ」
「なるほど……要は使う者の考えが重要なのですね」

 ヴェルドが頷くと、タクマが話を引き取る。

「俺はイーファに、パミル王国の国境線の防衛を任せる予定です。悪意を持って入国しようとする者や、犯罪者には対処してもらうつもりですが、私利私欲による争い事にゲートキーパーを利用するつもりはありません」

 ヴェルドはほっとした顔になる。

「これで、安心しました。ゲートキーパーを使う事に問題はなさそうですね。では、加えて念のために、私が諸国に神託しんたくを下しておきましょう。パミル王国には手を出さないようにと。こうしておけば、ゲートキーパーの力を行使するような事態を、多少は回避できるかもしれません」

 ヴェルドが神託という形で牽制けんせいをすれば、少なくとも敬虔な信者は手を出してこないだろう。タクマはそう考えて、ありがたくヴェルドの申し出を受ける。

「あとはパミル王国の皆さんと話し合って、ゲートキーパーの運用方法を決めてください。私は、少し考えたい事がありますので……」

 ヴェルドはタクマたちに帰るように促す。彼女は笑っているものの、まだどこか悲しげな表情をしていた。
 タクマは、ヴェルドが瀬川雄太の事で落ち込んでいるのだと察する。だが、ここは一人で考える時間を取った方がいいだろうと判断し、ヴェルドの言葉に従った。

「……分かりました。では、俺たちは失礼します。また、伺わせてください」

 タクマたちが神々の空間から去っていく間際、ヴェルドはイーファに尋ねる。

「イーファ、彼は……瀬川雄太さんは亡くなる時にどんな様子だったのですか?」

 イーファは、一瞬驚いた表情を浮かべたものの、すぐに笑顔になって返事をする。

「さっきの伝言を残して、笑顔でったよ! 最期は笑ってたんだ!」

 イーファの言葉は、ヴェルドにとってせめてもの救いになった。
 ヴェルドは、イーファの言葉を噛みしめるようにしながら、その場にたたずむのだった。



 6 謁見の間、再び


 タクマは女神像の前で目を開ける。神々の空間を離れ、王城の教会に戻ってきたのだ。
 すると、近くにいたコラルが、タクマに話しかける。

「ヴェルド様とは話せたのか?」
「ええ。ダンジョンコアに代わる魔道具を使用する事について、問題ないと言ってもらえました」
「そうか。国の防衛に関して見通しが立ったのだな」

 コラルとタクマは、並んで謁見の間へ歩いていく。
 その途中で、コラルがタクマに尋ねる。

「タクマ殿、代案となる魔道具というのは、本当に国を守る切り札になりえるのか?」
「ええ、それはもちろんです。魔道具を使用すれば、パミル王国の兵士の手を借りる事なく、国を守れるはずです」
「それはすごいな」

 二人は話しているうちに、謁見の間に到着した。
 コラルが、謁見の間の前に立つ衛兵に声をかける。
 衛兵はすぐに扉を開いた。
 中では、パミルが玉座に座って待っており、大きな声でタクマを歓迎する。

「タクマ殿、戻ったか! では、早速話し合いを再開しよう」

 謁見はタクマの退室によって一時中断していた。
 今は貴族たちが再び集まり、タクマから国の防衛方法を聞こうと待ち構えている。

(イーファ、とりあえずお前は周りから見えないようにな。それと、ちょっと頼みがある)

 それからタクマは、念話を使って自分の計画を説明した。するとイーファは楽しそうに反応する。

(面白い事考えるねぇ。いいよ、それでいこう!)

 こうしてイーファと打ち合わせをしたタクマは、パミルの前に進み出る。
 謁見で王と言葉を交わす時は跪くのが慣習なのだが、タクマはパミルから直々に「対等な関係であるため必要ない」と告げられていた。
 このためタクマは、玉座の前で立ったまま一礼する。

「お待たせして申し訳ありませんでした。国を防衛するための魔道具が手に入りました」
「おお、さすがはタクマ殿」

 嬉しそうなパミルの前で、タクマはアイテムボックスを探った。アイテムボックスの中には、イーファ以外のゲートキーパーたちが入っている。
 タクマは、まだ封印を解いていないゲートキーパーを一セット取り出した。ゲートキーパーは、フィギュアのような人形、そして付属品のくぎをセットにして使用するものなのだ。
 それを見て、パミルは首を傾げる。

「んん? なんだその人形は。それに、その釘のようなものは?」

 パミルはタクマが持っているゲートキーパーのセット――主にフィギュアの方をじっと見つめた。
 タクマは説明を続ける。

「この魔道具は、ゲートキーパーといいます。人形はゲートキーパーの本体で、この釘のようなもので効果が生じる範囲を指定します。ゲートキーパーには、所有者が指定した場所を死守してくれるという能力があるんです」
「ほほう、この人形が魔道具なのか。随分と可愛らしいな」

 パミルはタクマからフィギュアを受け取ると、舐め回すように眺める。
 イーファはパミルの視線に引いてしまい、気味悪がって言う。

(う、うわー。そんなにじろじろ見なくてもよくない?)

 タクマは苦笑いしつつ、イーファをなだめる。

(ま、まあまあ。きっとこんな精巧な作りのフィギュアは珍しいんだよ、多分)

 フィギュアに注目しているのは、パミルだけではなかった。

「人形と、釘……?」
「あんなもので、本当に国が守れるのか?」

 謁見の間に集まった貴族たちは、口々に呟く。もっと物々しい魔道具を期待していたのに、肩透かしを食ったように感じたのだ。
 コラルやザインも、呆気に取られたような顔をしている。
 謁見の間がざわめく中、パミルは正直な感想をタクマにぶつける。

「えーと、タクマ殿。そのだな、とても精巧で愛くるしい人形だというのは理解できた。だが、これは本当に魔道具なのか? 我々が思い浮かべる魔道具というのは、もっと武骨なデザインなのだが」

 パミルの言う通り、ヴェルドミールに存在する魔道具は武具のようなシンプルでいかめしいデザインのものがほとんどだった。
 貴族たちも、パミルに同調するように頷き合っている。
 周囲がざわつく中、タクマはパミルに説明を続けた。

「これが魔道具なのは確かですよ。俺が鑑定しましたし、きちんと起動できました。パミル様の言われた通り愛らしい見た目ですが、機能は凶悪です。敵だと認識した対象を、確実に殲滅してしまうんです」

 それを聞いて、貴族の一人が慌てて言う。

「ま、待て待て! もし魔道具が暴走し、パミル様に何かあったらどうするつもりだ!」

 貴族たちは、パミルが持っているフィギュアが既に起動されたものだと勘違いしていた。
 タクマは笑いながら解説する。

「起動したのは別のゲートキーパーですよ。パミル様に渡したのは起動前のものです。動いてない魔道具じゃ、暴走しようがありません」

 貴族たちはそれを聞き、いったんほっとした様子だ。しかしすぐに再び、先ほどと変わらない必死な口調でタクマに詰め寄る。


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