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5巻
5-2
しおりを挟む◇ ◇ ◇
「おとうさんだー! おかえりー!」
自宅に戻ると、食事を終えたばかりの子供達がタクマ達を迎えてくれた。ゲール達も嬉しそうに迎えてくれる。
「ああ、ただいま」
近くに寄ってくるゲール達や子供達を撫でてから、リュウイチ夫妻を呼び出してもらう。
「出掛けていたんですね。おかえりなさい」
「ただいま。ちょっと話があるんだ」
タクマは二人に座ってもらい、話を切り出した。夢の中でヴェルドと話した内容を、二人に話していく。
「はあ……話は分かりました。ですが、禁忌とされている魔法や禁術を、僕達がもらっても大丈夫でしょうか」
「それに関しては、ヴェルド様がお前達に合ったものを厳選してくれるそうだ。危険なものはないと思うぞ」
タクマの言葉に、二人は言いにくそうに話し出す。
「タクマさんがそう言うなら大丈夫でしょうが……ヴェルド様ってちょっと抜けているような印象があるんですよね……」
リュウイチは、ヴェルドが選ぶ事に不安があるようだ。
「タクマさんが選んでくれるんだったら普通に安心できるんですけど」
「確かにヴェルド様はちょっと残念なところはあるけど、お前達にマイナスな事はないと思うんだがな。まあ不安は分かるから、いきなり付与をするのではなくて、決まった時点で俺が確認するよ」
「それだったら安心かもしれません。タクマさんに任せきりで申し訳ないんですけど、僕達には何が危険か判断できないので」
タクマはしっかりと確認する事を約束した。
「でも、良いのですか? タクマさんがもらえば良かったんじゃあ……」
「これ以上化け物にはなりたくないんだよ。ただでさえ力を抑えるのに必死なんだ。禁術なんてもらったら身に余るよ」
そう言ってタクマは、二人に能力の付与を了解させるのであった。
5 大人会議と二柱再び
タクマは二人に能力の付与を了解させたところで、主要な住人を集めてもらった。カイル、ファリン、カリオ、アークスの四人だ。
「なんだよ。また面倒事か?」
元暗殺者のカリオは、面倒くさそうにタクマを見る。
「そうだな……うん。ちょっと面倒な依頼を相談された。最悪みんなにも関係する可能性があるから話しておこうと思ってな」
タクマはコラルから説明された事をみんなに話していく。メルトの村出身の元門番で、先日タクマの家に住むようになったばかりのカイルが口を開く。
「なあ、異世界人のお前が教会の総本山に行くのはまずくないか?」
カイルの言葉にカリオも同意する。
「そうだぜ。言うなれば、ヴェルド神に加護を受けているのが明白な奴が、ヴェルド神の信仰をしている中枢に行くわけだろ?」
更に執事のアークスと、カリオの妻のファリンも言う。
「タクマ様。教会の総本山では、ヴェルド様の加護を持つ者がいないそうです。そんな中、加護を受けているタクマ様やヴァイス達が行くと、祀り上げられる可能性があります」
「私達にも絡んでくる可能性があるわね」
四人の意見を聞いたところで、タクマが口を開く。
「やっぱりそうだよな。俺自身も嫌な予感はしてるんだ。だから俺一人で行って、みんなの安全は、精霊のアルテとヴァイス達に任せようと考えてる。俺自身は単独でも大丈夫だろうし」
自分の見解を話すと、カイルが口を挟んだ。
「それをヴァイス達が納得するのか? お前単独で危険な場所に行かせるのは、絶対に反対するだろ。せめてタクマの腕に隠れられるレウコンくらい連れていくとかしないと」
「確かにそれは言えてるか。後で相談する事にしよう。今回はコラル様の護衛依頼なんだ。今、世界の情勢は若干混乱しているだろうから、強い護衛が必要らしい」
情勢が混乱していると言ったところで、全員に「その原因を作ったお前が言うな!」的な目を向けられたが、華麗にスルーして話を続ける。
「教会の総本山に俺が行くのは確かに危険だ。だが、俺達が世話になっているトーランの領主であるコラル様の事を考えると、行くしかないと考えているんだ。コラル様は自分の仕事と、俺が丸投げした仕事で忙しいだろうからな。空間跳躍を使用して早く終わらせてあげたいんだ」
タクマがそう言うと、コラルには全員世話になっている自覚があるらしく黙ってしまった。誰も口を開けなくなった状況で、アークスが言う。
「タクマ様、この依頼はまだ先なのですよね? でしたら、しっかりと時間を使って話し合いましょう。今日はこの辺で切り上げませんか? 煮詰まっても良い案は出ませんし」
「そうだな。みんなもそれで良いか? それぞれ良い案を考えてみてくれ。俺はリュウイチ達を連れて、これから教会に行ってくるよ」
それぞれが次の話し合いまでに案をまとめるという事で解散となった。
話が終わってトーランへと移動したタクマとリュウイチとミカはそのまま礼拝堂へ行った。タクマは予め二人に注意をしておく。
「今度の付与は通常の能力とは違うものだ。力を得たからといって馬鹿な真似はしないでくれよ」
「大丈夫です。僕達もガキではないですから。調子に乗ったりはしないですよ」
「タクマさんを怒らせる方が怖いわ」
「……まあ、分かっているならいいか。付与される前にどんな能力か確認はするから、その辺は安心していてくれ」
「「はい」」
タクマ達はヴェルド像の前に片膝をついて祈りを捧げた。
◇ ◇ ◇
いつもの空間に移動したのは良いのだが、タクマ達の目に、ヴェルドが正座をしている光景が飛び込んできた。
ヴェルドの前には二つの影がある。
「……」
「タ、タクマさん。見間違いでなければ神様が正座して説教……」
「言うな……俺もびっくりしてる……」
ヴェルドミールの民が見たら卒倒するような光景に、タクマはため息を吐きながら近づいていく。
「タクマさんよくいらっしゃいましたね。あなたもヴェルド神の隣にお座りなさい」
そう言ってにっこりと笑ったのは鬼子母神。彼女に促されるまま、タクマはヴェルドの隣に正座をした。
もう一つの影、伊耶那美命は驚いているリュウイチ達に向かって優しく話しかける。
「あなた達とは後ほどお話しさせていただきますから、あちらのテーブルでゆっくり待っていてもらえますか?」
「は、はい! 分かりました……」
リュウイチ達が離れていくと、鬼子母神様が口を開いた。
「あなた達とは、すこーしお話をしないといけませんね」
二柱は目だけ笑っていない表情で、タクマとヴェルドを見据えるのだった。
「「は、はい……」」
6 お説教
「まったく、たとえ器に合った能力を渡すからといって、禁忌・禁術に指定している魔法を押しつけるとはどういうつもりです。戦闘向きではないとはいえ、使い方によってはとても危険でしょう。その辺は考えたのですか?」
鬼子母神はため息をつきながら、タクマとヴェルドに語りかける。
ヴェルドは委縮してしまっているようでオロオロとするばかりだ。仕方がないので、タクマは自分の考えを述べる事にした。
「確かに、安易に禁術指定されたものを押しつけようとした事に関しては認めます」
タクマは押しつけようとした事をあっさりと白状した。どうせバレているのだ。隠すだけ無駄と諦めて、正直に認めた方が良いと判断したというわけである。
「ですが、ヴェルドミールに来た時点で、そちらの世界には戻れないですよね? だったら不安に思う彼らには、まずは力が必要です」
それからタクマは次のような事を話した。
ヴェルドミールは日本とは違い、命を落とすリスクが相当に高い。町から出なければそこまで危険ではないが、身を守るにはヴェルドから授けられた能力では足りない。そこに、ヴェルドから禁忌魔法や禁術のスキルを渡すという話を持ちかけられたので、その中から使えそうなのを厳選して、彼らに渡そうとしていたのだ。
一通り聞いた鬼子母神が頷いて言う。
「タクマさんとしては自分に面倒が来るのも嫌だったけど、危険の少ない能力であれば彼らに与えても問題がないと判断したと」
「ええ、彼らは私の所で住む事ですし、問題ないと判断しました」
タクマは自分を落ち着かせながら意図を話していく。その間ヴェルドはといえば、タクマに説明を丸投げして俯いていた。
「なるほど。言われるまでもなく、考えたうえでの判断ですか……」
「確かに、自分に降りかかる面倒事が嫌だという気持ちはありましたよ。だからといって、何も考えずに提案するわけはないでしょう」
そう言ってタクマは鬼子母神の目をしっかりと見る。
「嘘はない目をしていますね。だったら何で、ヴェルド神と一緒に悪巧みをするような怪しげな雰囲気を醸し出していたのですか?」
「ノリ……ですかね」
「紛らわしい事をするから私達が来たのです。普通に話していれば問題ないではないですか」
鬼子母神はため息を吐きながらタクマを見る。
「タクマさんの考えはちゃんと理解できました。危険に関しては自分が対応する気だったのも聞けて良かったです。対応策も考えていたようですから、これ以上は言うのをやめましょう。タクマさんに対するお説教は終わります」
立ち上がるように促されたタクマはしびれかけた足で立ち上がり、リュウイチ達の方へ歩いていった。
「さて、ヴェルド神。あなたはタクマ殿に説明を任せるとはどういう考えなのですか? 神であるあなたが人であるタクマさんの陰に隠れて説明をしないなど駄目でしょう」
鬼子母神は懇々とヴェルドを諭していく。自分が守るべき民の後ろに隠れているなどあってはならないのだ。
じっくりとヴェルドが叱られているのを横目にしながら、タクマはリュウイチと話し始めた。
「ああ、びっくりした。まさかこの歳で正座をしてお説教とは……」
「まあ、仕方ないんじゃないですか? 押しつける気だったのは事実だったんですから」
リュウイチは複雑な表情をしている。結果的に見れば、自分達の存在も怒られる理由になってしまったのだから。
「まあ、お前達に力が必要なのも事実なんだ。禁忌とされている魔法にしろ、禁術にしろ、所詮は力でしかないんだ。よく言うだろう? 力は力でしかない。使う者の気持ち一つで危険なものにも便利なものにもなるって」
苦笑いをしながら話すタクマに、リュウイチ達は大きく頷いた。
「そうですね。地球でも同じような考えはありましたね。使う者がしっかりとした判断で使用しなければ、安全なものでも命の危険が出てくる可能性はありますし」
リュウイチが力についてしっかりと分かってくれた事に安心していると、鬼子母神の傍で厳しい表情をしていた伊耶那美命がタクマ達に近寄ってきた。
「あちらはもうしばらくかかりそうです。ですので、こちらに座っても良いでしょうか?」
「どうぞ」
「ふう、怒るのも疲れます……あ、自己紹介がまだでしたね。私の名は伊耶那美命。あなた達がいた日本の神です。今回は大変な目に遭われましたね。助ける事ができずに申し訳ありませんでした」
伊耶那美命の名を聞いて二人は固まってしまった。それからリュウイチは、すがるようにしゃべり出す。
「あ、あの! タクマさんやヴェルド様に言われてはいるのですが、本当に僕達は帰れないのでしょうか」
伊耶那美命はとても悲しい顔で答える。
「とても言いにくいのですが、こちらのヴェルドミールという世界からあなた達の住んでいた日本へは戻る事ができません。これは世界の存在しているレベルに関係しています。ヴェルドミールという世界は地球のある世界よりも低いレベルなのです。上から下には行けるのですが、逆は無理なのですよ」
「で、でも!」
「私達がここに来る事ができるのに、とお思いですよね? 私達は実体ではないのです。見てください」
そう言って伊耶那美命は自分の手を見せる。
すると、その手が透けているのが分かった。
「神の力を器にして意識をこちらに飛ばしているのです。なので、生身のあなた達が戻る事は無理なのです……」
悲しそうな目で申し訳なさそうに語りかける。
リュウイチとミカはその姿を見て、自分がどれだけ無茶を言っているかを理解したようだった。
「すみません……僕達自分勝手な事を……」
「ごめんなさい……」
「お気になさらないでください。あなた達がそう言うのは分かります。誰だって故郷に帰りたいのですから」
お互いに頭を下げ合っていると、ようやくヴェルドへのお説教は終了したようだ。
スッキリとした様子の鬼子母神とは反対に、ヴェルドの表情は疲れ切っていた。
鬼子母神がリュウイチ達の表情を見て言う。
「あら。その様子だと話したようね。伊耶那美命から話は聞いたと思いますから、私からはありません。今度はヴェルド神が仕切っていくのですよ」
長い説教も終わり、ようやく本題であるリュウイチ達の能力付与へと移る事になった。
7 新たな能力
鬼子母神に促されたヴェルド様は、気を取り直して話し始めた。
「さっそくですが、リュウイチさんとミカさんには、この世界で禁術に指定されている能力を付与させていただきます。ただ、あなた達が先日得た能力を生かすようなものを厳選しました。まずは資料を見てください」
ヴェルドは、二柱、タクマ、リュウイチ夫妻に、羊皮紙のような書類を配り、説明を始める。
「まずはリュウイチさんです」
リュウイチに用意されたのは、生産に特化した能力――金属加工(極)だった。
金属加工スキルは、レベルによって金属を加工しやすくなるが、この(極)はすべての金属を加工可能なうえ、加工途中で属性魔法を付与できる。
通常は、金属加工を終わらせてから完成品に付与を行うが、このスキルなら制作途中でも素材自体に属性を付与できるようになる。そうすれば、完成時にも更に属性を重ねられるようになるらしい。ただ、加工中の属性付与は、膨大な魔力を必要とするため、現時点では使えない。
「リュウイチさんはまだこちらに来たばかりで、魔力が足らないでしょうから今の時点では危険なスキルではありません。しっかりと力をつけ、勉強をしてから使えば危険なものではないです」
資料にも危険はないと書いてあるのだが、一つ気になる点があった。
「この資料には、加工時に属性付与を行って完成時に更に重ねがけを行うと、神器まではいかなくともそれに近い能力になるとあるのですが」
「それは、リュウイチさんが能力を十全に使いこなす事ができた場合です。加減さえすれば、流通している武器や道具よりもちょっと強い程度に抑えられると思います」
自重しなければ危険な武器を作る事も可能だが、力を使いこなせて調整できれば問題ない能力という事らしい。
「どうだ? かなり強力な能力ではあるが、そこまで危険ではないんじゃないか?」
そう尋ねると、資料とにらめっこをしながら聞いていたリュウイチは顔を上げる。
「はい。タクマさんが言ったように、力の使い道さえ間違えなければ大丈夫だと思います」
リュウイチはもらう能力に納得をしたようだ。
続いてミカの番である。
「ミカさんに与える能力なのですが、正直ミカさんの素質に合うものはありませんでした。でもミカさんは、タイヨウ君の事とタクマさんが引き取って育てている子供達の事を、いつも大事に思っています。ですから、ミカさんには神聖結界という能力を与えます。これにはスキルレベルと呼べるものはありません。タクマさんが使う結界の下位互換に値するものです。タクマさんの結界は人や物すべてを範囲指定できますが、こちらは生物のみにかける事ができます。子供達を守りたいミカさんには一番良い能力だと思います」
資料を見てみると、神聖結界は悪意や殺意を持って近づいた者を雷撃で気絶させる事ができるとあった。また、神聖結界をかけられている者達の位置が直感で分かるようになるそうだ。使用魔力はそこまで多くなく、リスクは少ない。ただし問題があって――
「ヴェルド様。ミカに与える神聖結界は、かなりのリスクが伴いますね。その名の通り神聖な能力なので教会に知られると、俺同様に目をつけられる可能性があります」
「ええ、ミカさんにはその可能性が出てしまうので、私からもう一つ能力を与えます。それはステータス隠蔽(極)です。通常のステータス隠蔽では、鑑定のレベルが(大)だった場合にバレる可能性がありますが、(極)であればバレる事はありません」
確かにステータス隠蔽(極)があれば、ヴェルド様の言う通り大丈夫そうだ。タクマはミカの方に顔を向ける。
「俺はスキル隠蔽がセットであれば、リスクも少ないと思うが……」
「ええ、バレないようなスキルがあるならば、もらっても大丈夫だと思います」
タクマの意見にミカも了承してくれた。
タクマ達を静観していた鬼子母神が頷きながら、ヴェルドに言う。
「しっかりリスクも考えた選択でしたね。だったら尚更あのようなやり取りは必要ないじゃないですか」
「は、はい……申し訳ないです……」
ヴェルドはノリで、タクマと悪巧みをするようなやり取りをしてしまった事を反省しているようだ。二柱に恐縮しながらリュウイチ達に話しかける。
「お二方とも納得してくれたようなので、さっそく付与を行います。ただ、どちらも強力な能力なので多少の苦痛を伴いますよ。覚悟はできていますね?」
「「は、はい!」」
二人ともタクマに予め言われていたので即答だった。
ヴェルドは二人の頭に手を翳して付与を始める。ヴェルドの手が光り、二人の体に光が吸収されている。そんな光景を見ていると、二人が脂汗をかいているのが分かった。辛うじて立ってはいられるが、相当な負荷がかかっているようだ。
数分その光景が続き、終わる頃には二人ともクタクタに疲れ切っていた。
「「はあ! はあ! はあ!」」
肩で息をする二人に、ヴェルドは優しく語りかける。
「付与は終わりました。これであなた達も強大な力を得ました。ですが、力に溺れる事なく平和に暮らしてくださいね」
「はい……あ、ありがとうございます……」
そして、タクマがこれでようやく終わりかと思っていると、予想外の言葉が二柱から発せられるのであった。
8 タクマ、種族が変わる
鬼子母神はタクマの方へ顔を向けて口を開く。
「さあ、お二人の能力付与は終わりました。次はタクマさんの番ですね」
「はい?」
タクマは思わず間抜けな声を出してしまった。
「危険なものではなかったですけど、二人にリスクを負わせたのです。あなたも多少なりともリスクを負わねばなりませんよね」
二柱は、タクマが今回何のリスクも負わなかったのをお気に召さないようだ。
鬼子母神はヴェルド様に話を振る。
「ヴェルド神。お二人をターゲットにする前は、禁忌魔法や禁術の扱いはどうするつもりだったのですか?」
「は、はい! 当初の考えは、あまりに危険なものに関しては私が責任を持って処分する予定でした。ただ、生活に役に立つものや人のためになるものは、タクマさんに託そうと考えていました」
「タクマさんに丸投げするつもりだったのですね。では当初の予定通り、比較的安全なものをタクマさんにお任せしてはどうでしょう?」
「私としては願ったり叶ったりですが、タクマさんはこれ以上の能力を望んでいませんし……」
ヴェルドはタクマの不安を知っているので、無理やり付与する気はなかったのだが。
「ですが、タクマさんも自分で言っていたでしょう? 力は力でしかないと。使いどころをしっかりと分かっていれば、能力をたくさん持っていても問題ないはずです。そうでしょう?」
鬼子母神はタクマの方へ顔を向け同意を求める。
鬼子母神の言葉は、タクマがリュウイチ達に言って聞かせた事だった。自分で言った事が自分に返ってきてしまった形になる。
「そうですね……その通りです……」
タクマは同意するしかなかった。
「タクマさんもそう言っていますし、託せるものは託してしまいましょう。どんなものを託そうとしていたのですか?」
鬼子母神と伊邪那美命は、ヴェルドと付与する能力を話し始めた。
タクマはため息を吐いて思案する。
(これで俺も化け物か……ただでさえ能力がありすぎて使いこなせていないのに……とりあえずやるべき事を終わらせたらどっかで修業でもしよう。そうしないと力に振り回されそうだ)
タクマは、話し合いの間に、自分の行動を決めた。
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