くたばれ番

あいうえお

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第一章

15話 リュカ視点

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ここ最近調子が良い。

番が来てから以前に比べて調子も良くなった気がする。それにずっと恋い焦がれた愛しい番が自分にも現れたのだと思うと幸せな気分になれた。これも全部我が番のおかげだ。

我が番はまだ少しばかり現実を見れていない所があるが、きっといつか気持ちを返してくれるだろう。愛しい番に冷たくされるのは辛くはあるが、それでも今は俺のそばにいるのだ。
それに2週間後の夜会で遂に番を皆に公表する事が出来ることになったのだ。

竜族は番を皆に公表する儀式がある。
その儀式を行うことは竜族にとって誉れで、番を皆に認めさせるチャンスでもある。それが今回の夜会に行われるのだ。
反対派の貴族はまだいるにはいるが、それでもあらかたの反対派も鎮めた。
国民にもひっそりと噂を流して、夜会の儀式の後、大々的に発表するつもりだ。
俺は番が現れると思ってなかったから遠い話だと思っていたが、いざ自分がその立場になるとやる事が多くて大変だった。

そのせいで番にも会えず、いつの間にか後宮の女どもにお茶会に誘われたりしていた。
あそこは反対派貴族の娘達が多くいるため、とても焦ったがマリアが何とか納めたと後ほど聞いた。

そんなマリアに我が番はらしいが、それは私の胃を痛くした。
異世界人というものは今までも勇者召喚などで現れていたが、それが番だというのは前代未聞のことだ。番には誰が敵か分からない今、下手に敵を作って欲しくはなかった。
きっとそれは番には伝わらないのだろうが。

「ハイン、我が番の調子はどうだ?」

「未だに元の世界へと帰りたいと仰っていますよ。以前に比べて我儘は減りましたが。」

「そうか…」

ハインにも迷惑をかけていることに申し訳なくなる。我が番に男を近づけさせる訳には行かない。だが、番と結婚しているハインは別だった。
番のいるハインが手を出すことは絶対にありえないし、番もハインのことを少なからず嫌っているため、好きになる心配もない。
ハインには悪いが、このまま嫌われ役を行ってもらうしかない。
そういえば…とハインにふとした質問をぶつける。

「確かお前のところも人族の番だったよな?」

「そうですね、お互い一目惚れして今に到ります。」

「そうなのか…俺の顔はあまり人族からは好かれない顔なのか?もし違う顔なら我が番も惚れ込んでくれたのか…?」

今まで美しいと言われ続けた自分の顔だが、周りは竜族で、人族とは関わることがないため美醜が違うのかもしれない…。そう不安に思いハインに問いを投げれば彼はすぐ様それを否定した。

「いえ、ありえません!人族からも美しいと言われていますよ陛下は。ただ、彼女は異世界人だからこそ彼女の世界では美醜が違うのはあるかもしれないですね」

その言葉にまたも頭を抱えてしまう。
思えば我が番が異世界人なのが良くない。
人族の方は異世界人を崇めていると聞くし、実際人族の国【ロスト】に異世界人も人族から崇められ、功績を残している。
だからこそ人族は異世界人を歓迎しているし、あそこの国等は他国であろうと引き抜こうとする。
こちらとしては迷惑でしかない。

それこそ人族には召喚魔法はあまり推奨されてないらしく魔王が現れた時のみそれは行われている。それ以外での召喚は嫌悪されている。
実際こちらとしても召喚自体はあまり良くないことだと感じてはいるが、あちらも正義のために召喚し、こちらも番のために召喚したのだからだろう。

だからこそ他の国の奴らに我が番が異世界人だとはバレてはいけない。幸い番は精神を病んでいるとしてるため、侍女たちも「元の世界に帰りたい」という言葉も妄想の1部だと感じているし、問題は今のところは無い。
人族は番に対する衝動が無い分些か番について軽く考えているためバレれば平気で勧誘するだろう。
多少番というものに対して理解は示していても異世界人はそれ以上に人族には優先される。

今の我が番ではその提案に乗るのは目に見えている上、それを理由に戦争が起きるのは避けたい。
人族に負けるとは思わないが、理由が番にあるとなると暴君だと勘違いする国民も出てくる。

それでも俺は愛しの番を手放すつもりは無い。

だからこそ今度の夜会の儀式は重要だ。
そのために護衛も整えたし、しっかりと計画を立てた。
万が一の時のための計画も同時に進行している。

とにかく素晴らしい儀式になるだろうとにこやかな気分で俺は公務に取り組んだ。




──しかし、この時の俺はこの計画が益々番との亀裂を生むことになるとは考えてもいなかった。
あの頃は彼女も自分も精神がまだ幼かったのだ。だが、どうすれば良かったのか自分にも未だに分からないままだ。
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