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第一章
14話
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「まぁ及第点ですよ」
長々と説教を終えたあと、偉そうにそう言った赤髪に思わず眉を顰める。及第点とは何のことを言ってるんだろうか。そう思って赤髪を見つめれば、私の心を呼んだかのように説明する。
「マリア様との噂ですよ。もっと酷いものが来ると想像してたのですが、貴方もお茶会で暴れたりはしなかったようですしね。」
その言い方では私が意味もなく気分で暴れているみたいじゃないか…。ムカついて机をバンッと叩けば「ほら、そういうところですよ」と指摘される。
「陛下の番とはいえ、王妃が暴れん坊なわがまま姫なのは困りますからね。これからも気をつけてください」
この男は本当に一言も二言も余計なことしか言わないな。
イライラは収まらないが、これ以上この男と話していてもさらにイライラが募るだけだ。
前に比べて自分のストレスだと感じるものは避けるようになった。
だからかは知らないが、以前より赤髪も面倒臭いのは変わらないが態度は少し軟化したように感じる。
それでも嫌いなことに変わりはないし、こいつも誘拐犯の1人だ。
やっぱり不快だと赤髪を見れば赤髪は何を思ったのかあの男の話をし始める。
この国の人は必ずあの男を褒める。
曰く、この国を大国にしたのは陛下のおかげだ。
曰く、あれほどの美に優れたものはいない。
等と、褒め称える言葉を私に言ってくる。
だが、この国では出来た王様だろうが、美しかろうが、やってる事はゴミクズでしかない。
またしてもイライラしてくる。
あの男は公務が忙しいらしく、あの日以来会いに来ることは無かった。会いたいとは思わないが、あれだけ愛を囁くくせにその程度かとも思う。
結局のところ、番という物が好きなのであって、私の気持ちが欲しいとは思わないのだろう。現に尊重の欠片もない。
嫌なことを考えてしまって、少々気持ちが萎えてしまうが、気を取り直して魔法の練習をする。
最近空いた時間に魔法の練習をするのが私の日課になりつつある。魔法が使えなかった以前に比べ火と風の魔法は少し使えるようになった。あれからヴィルに色々と教えて貰って私が使えるのが水魔法だとわかった。
まだコップの水を浮かす…ということしか出来ないが、それだけでもものすごい体力を使う。心にも何となく疲れが出るのだ。
だからこそヴィルの言っていた心の状態に左右されると言うのも納得出来たのだが。
水属性の魔法は攻撃というよりは守りに特化しているらしく、教えてもらったのは防御魔法が多かった。少なくとも誰が的かも分からない私からしたら助かる魔法だ。
といっても自分の身を守れるくらいの魔法はまだ使えないが…。
「ふぅ…」と息を吐いて浮かしていた水をコップに戻す。
まだこんなしょぼい魔法しか出来ないが、繰り返していくうちに浮かせられる水の量も増えてきたので進歩した方だろう。
自分が魔法を使っていることに少し嬉しくなっていればノックとともにあの男の声が聞こえた。
扉の前にずっと立たれるのも嫌なので「どうぞ」と声をかければすぐに扉が開いた。
「久しいな…愛しい我が番よ」
毎度毎度人たらしと呼ばれそうなほどの甘く蕩けた美貌を私に向けてくるこの男。元の世界の時もここまでのイケメンはいなかった。そんなイケメンが自分に甘い言葉を吐くせいで意識したくないのに胸が勝手にドキドキしてしまう。
そんな思いなどこの男にも他の奴らにも知られたくないので絶対に表には出さないが。
「なんの用ですか」
いつも通り冷たく男に声をかければ先程までの甘い表情を一瞬にして泣きそうなほどの表情に変える。毎度の事ながら、この私が悪いことをしたかのような態度を出すのはやめて頂きたい。
そう言ったら益々顔を歪めさせるだろうから口には出さず、考えるだけに留める。
「ただ我が番に会いたかった…それだけだ。どうしてその様な冷たい態度をとるのだ?我が番になるというのは光栄なことだというのに…」
「そうですか、じゃあ次は優しくしてくれる後宮にいったらどうですか?」
あまりにも上からなこの男にムカッときて後宮の話をすれば今度は都合の悪そうな顔をする。
一国の王がこんな表情を表に出していいのか。
そもそもなぜ申し訳ない顔ではなく、都合の悪そうな顔なのだ。まるで浮気がバレたかのように表情をする男に何故だかまたイラつきが募る。
「後宮は…仕方ないのだ…!番を守る為なんだ…。すまない…」
別に責めている訳では無いのにつらつらと言い訳を始める男に益々イライラが募る。
「何から守るっていうですか?そもそも貴方が私をこの世界に召喚しなかったら私は安全でいられたんじゃないんで「ダメだ!!!」」
イライラして思っている事を口に出せば先程まで申し訳なさそうにしていた癖にバンッと机を叩き、今度は怒りの表情を浮かべこちらを見てくるではないか。
何がダメなのか。結局自分の都合じゃないか。
それに番が関わると理性を失うとは聞いたが番が関わると情緒不安定にもなるのだろうか。
「そ、そうだ!我が番よ。もうすぐ我が番を皆に公表出来るのだ。表立って我等は一緒に入れるのだ。2週間後に夜会が開かれる。楽しみにしててくれ」
こちらの返事は不要かのようにそう言い残して逃げるように去った男に怒りを通り越してもはや呆れが出てきた。
──もう何がしたいの…?
長々と説教を終えたあと、偉そうにそう言った赤髪に思わず眉を顰める。及第点とは何のことを言ってるんだろうか。そう思って赤髪を見つめれば、私の心を呼んだかのように説明する。
「マリア様との噂ですよ。もっと酷いものが来ると想像してたのですが、貴方もお茶会で暴れたりはしなかったようですしね。」
その言い方では私が意味もなく気分で暴れているみたいじゃないか…。ムカついて机をバンッと叩けば「ほら、そういうところですよ」と指摘される。
「陛下の番とはいえ、王妃が暴れん坊なわがまま姫なのは困りますからね。これからも気をつけてください」
この男は本当に一言も二言も余計なことしか言わないな。
イライラは収まらないが、これ以上この男と話していてもさらにイライラが募るだけだ。
前に比べて自分のストレスだと感じるものは避けるようになった。
だからかは知らないが、以前より赤髪も面倒臭いのは変わらないが態度は少し軟化したように感じる。
それでも嫌いなことに変わりはないし、こいつも誘拐犯の1人だ。
やっぱり不快だと赤髪を見れば赤髪は何を思ったのかあの男の話をし始める。
この国の人は必ずあの男を褒める。
曰く、この国を大国にしたのは陛下のおかげだ。
曰く、あれほどの美に優れたものはいない。
等と、褒め称える言葉を私に言ってくる。
だが、この国では出来た王様だろうが、美しかろうが、やってる事はゴミクズでしかない。
またしてもイライラしてくる。
あの男は公務が忙しいらしく、あの日以来会いに来ることは無かった。会いたいとは思わないが、あれだけ愛を囁くくせにその程度かとも思う。
結局のところ、番という物が好きなのであって、私の気持ちが欲しいとは思わないのだろう。現に尊重の欠片もない。
嫌なことを考えてしまって、少々気持ちが萎えてしまうが、気を取り直して魔法の練習をする。
最近空いた時間に魔法の練習をするのが私の日課になりつつある。魔法が使えなかった以前に比べ火と風の魔法は少し使えるようになった。あれからヴィルに色々と教えて貰って私が使えるのが水魔法だとわかった。
まだコップの水を浮かす…ということしか出来ないが、それだけでもものすごい体力を使う。心にも何となく疲れが出るのだ。
だからこそヴィルの言っていた心の状態に左右されると言うのも納得出来たのだが。
水属性の魔法は攻撃というよりは守りに特化しているらしく、教えてもらったのは防御魔法が多かった。少なくとも誰が的かも分からない私からしたら助かる魔法だ。
といっても自分の身を守れるくらいの魔法はまだ使えないが…。
「ふぅ…」と息を吐いて浮かしていた水をコップに戻す。
まだこんなしょぼい魔法しか出来ないが、繰り返していくうちに浮かせられる水の量も増えてきたので進歩した方だろう。
自分が魔法を使っていることに少し嬉しくなっていればノックとともにあの男の声が聞こえた。
扉の前にずっと立たれるのも嫌なので「どうぞ」と声をかければすぐに扉が開いた。
「久しいな…愛しい我が番よ」
毎度毎度人たらしと呼ばれそうなほどの甘く蕩けた美貌を私に向けてくるこの男。元の世界の時もここまでのイケメンはいなかった。そんなイケメンが自分に甘い言葉を吐くせいで意識したくないのに胸が勝手にドキドキしてしまう。
そんな思いなどこの男にも他の奴らにも知られたくないので絶対に表には出さないが。
「なんの用ですか」
いつも通り冷たく男に声をかければ先程までの甘い表情を一瞬にして泣きそうなほどの表情に変える。毎度の事ながら、この私が悪いことをしたかのような態度を出すのはやめて頂きたい。
そう言ったら益々顔を歪めさせるだろうから口には出さず、考えるだけに留める。
「ただ我が番に会いたかった…それだけだ。どうしてその様な冷たい態度をとるのだ?我が番になるというのは光栄なことだというのに…」
「そうですか、じゃあ次は優しくしてくれる後宮にいったらどうですか?」
あまりにも上からなこの男にムカッときて後宮の話をすれば今度は都合の悪そうな顔をする。
一国の王がこんな表情を表に出していいのか。
そもそもなぜ申し訳ない顔ではなく、都合の悪そうな顔なのだ。まるで浮気がバレたかのように表情をする男に何故だかまたイラつきが募る。
「後宮は…仕方ないのだ…!番を守る為なんだ…。すまない…」
別に責めている訳では無いのにつらつらと言い訳を始める男に益々イライラが募る。
「何から守るっていうですか?そもそも貴方が私をこの世界に召喚しなかったら私は安全でいられたんじゃないんで「ダメだ!!!」」
イライラして思っている事を口に出せば先程まで申し訳なさそうにしていた癖にバンッと机を叩き、今度は怒りの表情を浮かべこちらを見てくるではないか。
何がダメなのか。結局自分の都合じゃないか。
それに番が関わると理性を失うとは聞いたが番が関わると情緒不安定にもなるのだろうか。
「そ、そうだ!我が番よ。もうすぐ我が番を皆に公表出来るのだ。表立って我等は一緒に入れるのだ。2週間後に夜会が開かれる。楽しみにしててくれ」
こちらの返事は不要かのようにそう言い残して逃げるように去った男に怒りを通り越してもはや呆れが出てきた。
──もう何がしたいの…?
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