69 / 73
第4章 魔法学校実技試験
第60話 勇者との戦い
しおりを挟む
「シルフ!」
「……っ!」
エミルの後ろに顕現した風の精霊シルフ。
その加護を受けたエミルは、超高速で移動し、その動きはもはや分身しているかのようにすら見える。
「マッチ!」
「ボボボー!」
私の後ろ……おそらくエミルが移動した場所から感じる凄まじい熱波。
火の精霊により、上級魔法を超える火球が作られているのだろう。
(……これが、勇者の戦いなんだ)
勇者であるエミルは、この世界を構成する根源である、炎や水、風や土、そして光を司る精霊から加護を受けているだけでなく、その力を借りる精霊魔法を使うことができる。
つまりエミルが炎を出したいと思えば、自然の理である精霊がそれに応えて炎を、それも上級魔法を遥かに超える威力の炎を繰り出せる。
精霊の加護による人間を超えた身体能力、最強の魔法を連発、そして奥の手である、ヤミヒカでは魔王を一撃で葬った精霊の矢。
人の限界を超えた存在、勇者。
――だからこそ、私は戸惑ってしまう。
「……えっ!?」
私に向かって放たれた大火球を、頭上に発生させたアポカリプスに飲み込ませる。
来ると分かっていれば、あの程度は避けるまでもない。
反応するまでもないスピード……防ぐまでもない魔法……
(……勇者って、こんなものなの?)
「……このっ!」
エミルはすぐさま追撃の体制を取るが、あまりにも遅い。
だが、とりあえず回避行動を取ろうと体を動かそうとするが、私の足を盛り上がった地面が捕獲する。
おそらく土の精霊ノーム、畑耕し君の力だろう。
だが、こんなの障害にもならない。
アポカリプスを足に纏わせるように発生させ、岩のみを重力で圧し潰す。
そのまま、ボールを蹴るかのように球体の重力球をエミルに放つ。
「ぐっ……!」
もろに直撃し、アポカリプスの重力効果で弾き飛ばされるエミル。
だがシルフによる体の制御、ノームの力で足に岩を生やして地面に突き刺すことでブレーキをかけ、壁に激突する寸前でなんとか踏ん張る。
「くっ……!」
エミルはすぐに、精霊たちを展開するが……
(……やろうと思えば、3回は倒せたな)
正直な感想はこれだ。
分かりやすすぎる死角狙い、死角に移動してから攻撃までの遅さ、捕獲の甘さと反撃への対応、どれも大したことないというか、いくらなんでも弱すぎる。
思い当たる理由は、エミルはとにかく戦い慣れしていないことだろう。
私なら、電流を流した水を散弾として飛ばすとか考えるが、そういうことをしてこない。
「……こうなったら!」
そしてエミルは、全ての精霊を宿す最強の精霊魔法、精霊憑依を使い、魔王の武具をまとった私のように、服装や姿が変わる。
そして、5色の光を放つ精霊の弓と矢を構える。
(……さすがにあれは喰らえないな)
そう考えて、先ほどのように重力球を放つが、結界のようなものに弾かれる。
どうやら精霊憑依すると私の魔王モードと同じで防御壁が張られているらしい。
「……いけっ!」
放たれる精霊の矢。
魔王すら一撃で葬る精霊の矢、完全にピンチなのだが……。
「えっ……!?」
私はアポカリプスの重力操作で、エミルの後ろへと移動する。
精霊の矢は、その名のとおり矢……あれはもう、アニメで出てきそうなぶっといビームだが、結局は何かを放つもの。
撃つと分かっていれば、高速移動で回避するのは簡単だ。
「くっ……」
しかも精霊の矢を放つと、さすがにエミルも消耗するようだ。
「……行って」
隙の逃さず、小さいアポカリプスを連続で絶え間なく放つ。
エミルの防御壁によって防がれるが、徐々に完全に防ぎきれなくなってきている。
やはり、消耗しているのは間違いない。
このまま消耗させて背負い投げでも入れれば、エミルにも勝ててしまうだろう。
(とはいっても、エミルを倒す気なんてないし、ここは撤退して、幽鎧帝を……)
「……余所見しないでください!」
そう言いながら、反撃の隙を見つけて巨大な風の刃を放ってくるエミルだが、これもアポカリプスに飲み込ませる。
「私はあなたとここで戦う気はないの。多少は痛い目をみてもらったし、私はこれで……」
『――だーめ♪』
「え……?」
――去ろうとした瞬間、私の頭にどこかで聞いたような女の子の声が響いた。
「……っ!」
エミルの後ろに顕現した風の精霊シルフ。
その加護を受けたエミルは、超高速で移動し、その動きはもはや分身しているかのようにすら見える。
「マッチ!」
「ボボボー!」
私の後ろ……おそらくエミルが移動した場所から感じる凄まじい熱波。
火の精霊により、上級魔法を超える火球が作られているのだろう。
(……これが、勇者の戦いなんだ)
勇者であるエミルは、この世界を構成する根源である、炎や水、風や土、そして光を司る精霊から加護を受けているだけでなく、その力を借りる精霊魔法を使うことができる。
つまりエミルが炎を出したいと思えば、自然の理である精霊がそれに応えて炎を、それも上級魔法を遥かに超える威力の炎を繰り出せる。
精霊の加護による人間を超えた身体能力、最強の魔法を連発、そして奥の手である、ヤミヒカでは魔王を一撃で葬った精霊の矢。
人の限界を超えた存在、勇者。
――だからこそ、私は戸惑ってしまう。
「……えっ!?」
私に向かって放たれた大火球を、頭上に発生させたアポカリプスに飲み込ませる。
来ると分かっていれば、あの程度は避けるまでもない。
反応するまでもないスピード……防ぐまでもない魔法……
(……勇者って、こんなものなの?)
「……このっ!」
エミルはすぐさま追撃の体制を取るが、あまりにも遅い。
だが、とりあえず回避行動を取ろうと体を動かそうとするが、私の足を盛り上がった地面が捕獲する。
おそらく土の精霊ノーム、畑耕し君の力だろう。
だが、こんなの障害にもならない。
アポカリプスを足に纏わせるように発生させ、岩のみを重力で圧し潰す。
そのまま、ボールを蹴るかのように球体の重力球をエミルに放つ。
「ぐっ……!」
もろに直撃し、アポカリプスの重力効果で弾き飛ばされるエミル。
だがシルフによる体の制御、ノームの力で足に岩を生やして地面に突き刺すことでブレーキをかけ、壁に激突する寸前でなんとか踏ん張る。
「くっ……!」
エミルはすぐに、精霊たちを展開するが……
(……やろうと思えば、3回は倒せたな)
正直な感想はこれだ。
分かりやすすぎる死角狙い、死角に移動してから攻撃までの遅さ、捕獲の甘さと反撃への対応、どれも大したことないというか、いくらなんでも弱すぎる。
思い当たる理由は、エミルはとにかく戦い慣れしていないことだろう。
私なら、電流を流した水を散弾として飛ばすとか考えるが、そういうことをしてこない。
「……こうなったら!」
そしてエミルは、全ての精霊を宿す最強の精霊魔法、精霊憑依を使い、魔王の武具をまとった私のように、服装や姿が変わる。
そして、5色の光を放つ精霊の弓と矢を構える。
(……さすがにあれは喰らえないな)
そう考えて、先ほどのように重力球を放つが、結界のようなものに弾かれる。
どうやら精霊憑依すると私の魔王モードと同じで防御壁が張られているらしい。
「……いけっ!」
放たれる精霊の矢。
魔王すら一撃で葬る精霊の矢、完全にピンチなのだが……。
「えっ……!?」
私はアポカリプスの重力操作で、エミルの後ろへと移動する。
精霊の矢は、その名のとおり矢……あれはもう、アニメで出てきそうなぶっといビームだが、結局は何かを放つもの。
撃つと分かっていれば、高速移動で回避するのは簡単だ。
「くっ……」
しかも精霊の矢を放つと、さすがにエミルも消耗するようだ。
「……行って」
隙の逃さず、小さいアポカリプスを連続で絶え間なく放つ。
エミルの防御壁によって防がれるが、徐々に完全に防ぎきれなくなってきている。
やはり、消耗しているのは間違いない。
このまま消耗させて背負い投げでも入れれば、エミルにも勝ててしまうだろう。
(とはいっても、エミルを倒す気なんてないし、ここは撤退して、幽鎧帝を……)
「……余所見しないでください!」
そう言いながら、反撃の隙を見つけて巨大な風の刃を放ってくるエミルだが、これもアポカリプスに飲み込ませる。
「私はあなたとここで戦う気はないの。多少は痛い目をみてもらったし、私はこれで……」
『――だーめ♪』
「え……?」
――去ろうとした瞬間、私の頭にどこかで聞いたような女の子の声が響いた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる