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第4章 魔法学校実技試験
第43話 嵐の前の静けさ
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「もっとぉ! もっと私にくださぁああ~いぃ!」
「え、あ、うん……じゃあ、もう一発……」
「はひゅぅぅぅうううう!」
私の新技、アポカリプスで圧縮した空気を正拳突きで放つ空撃。
ちなみに正式名称は、いつものアオイさん命名によりドゥルクルフト・シュラークだが、恥ずかしいのでこう呼んでいる。
スピードを重視した衝撃系の風魔法と呼ぶべき攻撃で、相手が遠い程威力が落ちるという弱点はあるが、威力と連射性に優れ、何より、目に見えない衝撃ゆえの奇襲性から非常に使い勝手がいい。
実技試験で、目標に向かって魔法を放つ試験があるので、飛び道具的な魔法を考えなさいと言われ、ゲームキャラの気を放つみたいな技を真似たらそれっぽくなっただけとは思えない、素晴らしい出来のアポカリプス活用攻撃手段だ。
ちなみに、今は正拳突きで空撃を放っているが、最初はここぞとばかりに、思いっきり両手で気を放つポーズを完璧に真似しており、アオイさんに、うわぁ……みたいな目で見られた。
死にたい。今すぐ死にたい。
「もっと……もっとですぅ、レムリア様ぁ! もっと本気の一撃を、私にぃぃぃ!」
「えーと、じゃあちょっと応用で……」
威力を高める為、大き目のアポカリプスで空気を圧縮。
「……チェストォォオ!」
そして、飛び後ろ回し蹴りで一気に放つ。
うん、これならかなりの破壊力……
「はひゅぅ!? ご、ご褒美ぃぃぃぃいいい!!」
学園トップレベルの土魔法による強固な防御を貫いて、遠くまで……いやもう、校庭通り越して、学校敷地外まで飛ばされるアンナベルさん。
連射は効かず、モーションも大きいが、申し分ない破壊力で威力減衰も少なく、しいい攻撃だ。
……でも、明らかにヤバそうなので、とりあえず封印。
「ア、アンナベルさーん! 大丈夫~!?」
「あ~大丈夫そうだね。物凄い幸せそうな笑顔で、最高でしたぁって言ってるっぽい」
そこに、フェリルさんが話しかけてくる。
この距離からアンナベルさんの行動が見えるなんて、さすがハイエルフさん。
「そ・れ・よ・り、次はあたしだよね!」
「……っと!」
放たれた蹴りをかわすが、その後も蹴りのコンビネーションで攻めてくるフェリルさん。
さすが自称、世界一足癖の悪いエルフ。
小柄の弱点であるリーチを補いつつ、利点である運動性をフルに活かした戦闘法だ。
だけど……
「……大振り過ぎだよ!」
「くっ……!」
この世界は、遠くから放てる魔法が発達しているのと、人と争うより魔物と争う機会が多いせいだろう。
魔法のせいで近接戦の技術がまだ発達しておらず、魔物を倒せるような重い一撃しかしてこないせいで、簡単にいなせてしまう。
「……アンナっちじゃないけど、これは体が火照っちゃうなー!」
その後、両手を広げて風の魔力をまとい、魔力をまとった手と足で接近戦をしかけてくる。
(たぶん、寸前でかわしても風で斬られるよね……じゃあ、申し訳ないけど!)
「……へっ?」
周辺にアポカリプスを展開し、フェリスさんを左右から引き寄せることで動きを封じる。
「よい……しょっと!」
そのまま接近して組み、今回はアポカリプスなしで背負い投げ、もちろん地面に激突する寸前に引っ張って痛くないように。
どんなときも相手を思いやる、素晴らしきかな日本の武道。
「……たぶんこれ、生徒会長を地面に埋めた技だよねー?」
「えーと……」
「あーだいじょぶだいじょぶー。別にチクったりしないから」
そのまま大の字になるフェリルさん。
「でも、本気だったら地面に埋まってたってわけで、つまりはあたしの負けかー。アオイっち続いて2連敗……悔しいなー」
「いや、私の場合は固有魔法の力が強いだけで……って、フェリル!?」
「んー?」
「なんか、肌の色が変わってるんだけど!」
ハイエルフというか、ダークエルフになってる!
「あー、これは別に病気とかじゃなくて……わぷっ」
「う、打ち所悪かった!? とりあえずこれ、ルーゼンシュタイン家名物のいつでも濡れてるおしぼり! これで額を冷やして……って、これは熱の時の看病! えーと、回復魔法、回復魔法~!」
「あーだいじょぶだから、落ち着いてレムリアっち」
そう言いながら、右手を私に見せるフェリルさん。
「あれ? また肌の色が白くなってる?」
「……あたしは突然変異ってやつでさー。ハイエルフの中でも魔力が強いらしくて、その影響で本気で戦うと、肌の色がこうなるらしいんだ」
すると、フェリルさんの手だけでなく顔や足も白くなっていく。
「すっご……ていうか、かっこいい!」
「え、かっこいい?」
「うん! いわゆる、本気の戦闘になったら姿が変わるって事だよね!? まさに戦闘形態って感じでカッコイイし、浪漫だよ!」
……特に、本気になると痴女(遺憾でございますわ)になる私からすれば羨ましい。
「……ふふっ、あはははははっ!」
「えっ……えっ?
フェリルさんの爆笑とか初めて見たんだけど!
も、もしかして、そこまで打ち所が悪かったとか!?
「いや~急に笑ってごめんごめん。今までにない反応だったからさー」
「あっ……それなら良かった。ところでフェリルさ……ふむっ」
「……一度呼び捨てにしてくれたんだから、今後はさん禁止ー」
「え、わ、私、呼び捨てにしてた?」
「うん。これを機にさんそつぎょー。友達なんだからさ、そういう気づかいやめにしよーよ♪」
「友達……」
「わ、私も! アンナベルでもアンナでもアンでも好きに呼んでください! 友達でも、下僕でも、卑しい雌豚でもなんでもなりますから!」
いつの間にか戻ってきたアンナベルさんも言ってくれる。
「ありがとう、フェリル、アンナベル。改めて、これからも宜しくね」
「よろしくねー♪」
「は、はい! あの、ちなみに卑しい雌ぶ……」
「よーしアンナっち、それぐらいで止まっておこっかー」
「…………」
「アオイ様。主であるレムリア様が気になるのは分かりますが、私との訓練に集中を……ひぃ!?」
「……ごめんなさい、ちょっと不愉快な会話が聞こえたから。これからは『本気』で訓練するわ」
「い、いやあの、アオイ様に『本気』になられると、私なんて瞬殺というか、身が持たな……」
「……マジックテンペスト」
「ひぃぃぃいいい!」
「だ、誰か、アオイさんを止め……あ、また水分が」
向こうから轟音が聞こえてくる。
アオイさんがあんなになるまで相手するなんて、やっぱりエレオノーラさん、アオイさんに気に入られてるんだなぁ。
なんだかアオイさんを取られちゃった気がして寂しいけど、アオイさんに友達ができるのはいい事だよね。
それに、もしかしたらアオイさん経由で、エレオノーラさんが友達になってくれるかもしれない。
友達の友達は友達なのだから!(願望)
「……こんにちは」
「あ、エミル。生徒会の見回りご苦労様!」
「おー、勇者ちゃんだー。おっすー」
「こ、こんにちはです、勇者様」
「……勇者はやめてください。エミルでいいです。それよりレムリアは訓練ですか?」
「うん。みんなと一緒にね」
「……誘ってくれればいいのに」
「いや、エミルって今、生徒会で忙しいでしょう?」
……まあ、忙しくなった原因が、痴女(遺憾ですよ)襲来、つまりは私のせいなのが本当に申し訳ないけど。
「……エミル?」
「ふふっ、アオイっちだけじゃなくて、エミルっちも大変だー」
そう言いながら立ち上がるフェリル。
「ところでエミルっち。今からあたしたちの訓練、荒っぽくなるんだよねー。というわけで、ちょっと協力してくれない? 精霊魔法も見てみたいしさー」
「わ、私も! あの精霊の矢を味わ……見てみたいですぅ!」
「で、でも……」
「いいじゃんエミル! 大丈夫、ちょっとサボってもバレないから! それに、私もエミルと一緒にいたいし」
「……!? は、はいっ!」
「……もう少し弾を追加しようかしら」
「え、まだ増やすってひぃぃぃいい! 誰か、アオイ様を止め……あ、また水分が」
アオイさんの方もどんどん力が入った訓練になってる。
私も負けてはいられない。
『……魔法学校実技試験、確実に強敵との戦闘になるわ。可能な限り鍛えておきなさい』
あの地下ダンジョンを探索後、アオイさんは私にこう言った。
詳しい話を聞かせてもらってないが、魔王の武具を手に入れて終わり、というわけにはいかないのは確かだろう。
とりあえず今は……
「……それじゃあ、私も始めましょうか」
「あの、エミル? なんで精霊憑依してるの?」
「せっかくのレムリアとの時間ですから、可能な限り本気でいこうかと」
「あ、あのね、エミル。さすがにその状態のエミルは無理っていうか……」
「この子たちもレムリアと久しぶりに会って、遊びたいみたいで……ダメ、ですか……?」
「ぜ、全然いい! よーし、私、頑張っちゃうから!」
……魔法学校実技試験を、五体満足で受けれるように努力する事から始めようかな。
「え、あ、うん……じゃあ、もう一発……」
「はひゅぅぅぅうううう!」
私の新技、アポカリプスで圧縮した空気を正拳突きで放つ空撃。
ちなみに正式名称は、いつものアオイさん命名によりドゥルクルフト・シュラークだが、恥ずかしいのでこう呼んでいる。
スピードを重視した衝撃系の風魔法と呼ぶべき攻撃で、相手が遠い程威力が落ちるという弱点はあるが、威力と連射性に優れ、何より、目に見えない衝撃ゆえの奇襲性から非常に使い勝手がいい。
実技試験で、目標に向かって魔法を放つ試験があるので、飛び道具的な魔法を考えなさいと言われ、ゲームキャラの気を放つみたいな技を真似たらそれっぽくなっただけとは思えない、素晴らしい出来のアポカリプス活用攻撃手段だ。
ちなみに、今は正拳突きで空撃を放っているが、最初はここぞとばかりに、思いっきり両手で気を放つポーズを完璧に真似しており、アオイさんに、うわぁ……みたいな目で見られた。
死にたい。今すぐ死にたい。
「もっと……もっとですぅ、レムリア様ぁ! もっと本気の一撃を、私にぃぃぃ!」
「えーと、じゃあちょっと応用で……」
威力を高める為、大き目のアポカリプスで空気を圧縮。
「……チェストォォオ!」
そして、飛び後ろ回し蹴りで一気に放つ。
うん、これならかなりの破壊力……
「はひゅぅ!? ご、ご褒美ぃぃぃぃいいい!!」
学園トップレベルの土魔法による強固な防御を貫いて、遠くまで……いやもう、校庭通り越して、学校敷地外まで飛ばされるアンナベルさん。
連射は効かず、モーションも大きいが、申し分ない破壊力で威力減衰も少なく、しいい攻撃だ。
……でも、明らかにヤバそうなので、とりあえず封印。
「ア、アンナベルさーん! 大丈夫~!?」
「あ~大丈夫そうだね。物凄い幸せそうな笑顔で、最高でしたぁって言ってるっぽい」
そこに、フェリルさんが話しかけてくる。
この距離からアンナベルさんの行動が見えるなんて、さすがハイエルフさん。
「そ・れ・よ・り、次はあたしだよね!」
「……っと!」
放たれた蹴りをかわすが、その後も蹴りのコンビネーションで攻めてくるフェリルさん。
さすが自称、世界一足癖の悪いエルフ。
小柄の弱点であるリーチを補いつつ、利点である運動性をフルに活かした戦闘法だ。
だけど……
「……大振り過ぎだよ!」
「くっ……!」
この世界は、遠くから放てる魔法が発達しているのと、人と争うより魔物と争う機会が多いせいだろう。
魔法のせいで近接戦の技術がまだ発達しておらず、魔物を倒せるような重い一撃しかしてこないせいで、簡単にいなせてしまう。
「……アンナっちじゃないけど、これは体が火照っちゃうなー!」
その後、両手を広げて風の魔力をまとい、魔力をまとった手と足で接近戦をしかけてくる。
(たぶん、寸前でかわしても風で斬られるよね……じゃあ、申し訳ないけど!)
「……へっ?」
周辺にアポカリプスを展開し、フェリスさんを左右から引き寄せることで動きを封じる。
「よい……しょっと!」
そのまま接近して組み、今回はアポカリプスなしで背負い投げ、もちろん地面に激突する寸前に引っ張って痛くないように。
どんなときも相手を思いやる、素晴らしきかな日本の武道。
「……たぶんこれ、生徒会長を地面に埋めた技だよねー?」
「えーと……」
「あーだいじょぶだいじょぶー。別にチクったりしないから」
そのまま大の字になるフェリルさん。
「でも、本気だったら地面に埋まってたってわけで、つまりはあたしの負けかー。アオイっち続いて2連敗……悔しいなー」
「いや、私の場合は固有魔法の力が強いだけで……って、フェリル!?」
「んー?」
「なんか、肌の色が変わってるんだけど!」
ハイエルフというか、ダークエルフになってる!
「あー、これは別に病気とかじゃなくて……わぷっ」
「う、打ち所悪かった!? とりあえずこれ、ルーゼンシュタイン家名物のいつでも濡れてるおしぼり! これで額を冷やして……って、これは熱の時の看病! えーと、回復魔法、回復魔法~!」
「あーだいじょぶだから、落ち着いてレムリアっち」
そう言いながら、右手を私に見せるフェリルさん。
「あれ? また肌の色が白くなってる?」
「……あたしは突然変異ってやつでさー。ハイエルフの中でも魔力が強いらしくて、その影響で本気で戦うと、肌の色がこうなるらしいんだ」
すると、フェリルさんの手だけでなく顔や足も白くなっていく。
「すっご……ていうか、かっこいい!」
「え、かっこいい?」
「うん! いわゆる、本気の戦闘になったら姿が変わるって事だよね!? まさに戦闘形態って感じでカッコイイし、浪漫だよ!」
……特に、本気になると痴女(遺憾でございますわ)になる私からすれば羨ましい。
「……ふふっ、あはははははっ!」
「えっ……えっ?
フェリルさんの爆笑とか初めて見たんだけど!
も、もしかして、そこまで打ち所が悪かったとか!?
「いや~急に笑ってごめんごめん。今までにない反応だったからさー」
「あっ……それなら良かった。ところでフェリルさ……ふむっ」
「……一度呼び捨てにしてくれたんだから、今後はさん禁止ー」
「え、わ、私、呼び捨てにしてた?」
「うん。これを機にさんそつぎょー。友達なんだからさ、そういう気づかいやめにしよーよ♪」
「友達……」
「わ、私も! アンナベルでもアンナでもアンでも好きに呼んでください! 友達でも、下僕でも、卑しい雌豚でもなんでもなりますから!」
いつの間にか戻ってきたアンナベルさんも言ってくれる。
「ありがとう、フェリル、アンナベル。改めて、これからも宜しくね」
「よろしくねー♪」
「は、はい! あの、ちなみに卑しい雌ぶ……」
「よーしアンナっち、それぐらいで止まっておこっかー」
「…………」
「アオイ様。主であるレムリア様が気になるのは分かりますが、私との訓練に集中を……ひぃ!?」
「……ごめんなさい、ちょっと不愉快な会話が聞こえたから。これからは『本気』で訓練するわ」
「い、いやあの、アオイ様に『本気』になられると、私なんて瞬殺というか、身が持たな……」
「……マジックテンペスト」
「ひぃぃぃいいい!」
「だ、誰か、アオイさんを止め……あ、また水分が」
向こうから轟音が聞こえてくる。
アオイさんがあんなになるまで相手するなんて、やっぱりエレオノーラさん、アオイさんに気に入られてるんだなぁ。
なんだかアオイさんを取られちゃった気がして寂しいけど、アオイさんに友達ができるのはいい事だよね。
それに、もしかしたらアオイさん経由で、エレオノーラさんが友達になってくれるかもしれない。
友達の友達は友達なのだから!(願望)
「……こんにちは」
「あ、エミル。生徒会の見回りご苦労様!」
「おー、勇者ちゃんだー。おっすー」
「こ、こんにちはです、勇者様」
「……勇者はやめてください。エミルでいいです。それよりレムリアは訓練ですか?」
「うん。みんなと一緒にね」
「……誘ってくれればいいのに」
「いや、エミルって今、生徒会で忙しいでしょう?」
……まあ、忙しくなった原因が、痴女(遺憾ですよ)襲来、つまりは私のせいなのが本当に申し訳ないけど。
「……エミル?」
「ふふっ、アオイっちだけじゃなくて、エミルっちも大変だー」
そう言いながら立ち上がるフェリル。
「ところでエミルっち。今からあたしたちの訓練、荒っぽくなるんだよねー。というわけで、ちょっと協力してくれない? 精霊魔法も見てみたいしさー」
「わ、私も! あの精霊の矢を味わ……見てみたいですぅ!」
「で、でも……」
「いいじゃんエミル! 大丈夫、ちょっとサボってもバレないから! それに、私もエミルと一緒にいたいし」
「……!? は、はいっ!」
「……もう少し弾を追加しようかしら」
「え、まだ増やすってひぃぃぃいい! 誰か、アオイ様を止め……あ、また水分が」
アオイさんの方もどんどん力が入った訓練になってる。
私も負けてはいられない。
『……魔法学校実技試験、確実に強敵との戦闘になるわ。可能な限り鍛えておきなさい』
あの地下ダンジョンを探索後、アオイさんは私にこう言った。
詳しい話を聞かせてもらってないが、魔王の武具を手に入れて終わり、というわけにはいかないのは確かだろう。
とりあえず今は……
「……それじゃあ、私も始めましょうか」
「あの、エミル? なんで精霊憑依してるの?」
「せっかくのレムリアとの時間ですから、可能な限り本気でいこうかと」
「あ、あのね、エミル。さすがにその状態のエミルは無理っていうか……」
「この子たちもレムリアと久しぶりに会って、遊びたいみたいで……ダメ、ですか……?」
「ぜ、全然いい! よーし、私、頑張っちゃうから!」
……魔法学校実技試験を、五体満足で受けれるように努力する事から始めようかな。
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