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第4章 魔法学校実技試験
第43話 嵐の前の静けさ
しおりを挟む完全に突き放された男は加奈子を追いかけた。
そして思い切って加奈子に尋ねた。
「お、俺も戦闘できるように、戦えるように仲間にしてくれませんか?」
加奈子は振り返り、しばし男を見つめた。
『あなたに聞くけど、今の世が変わった事は理解できましたか?』
『そして、これからどう生きていきたいか教えて下さいな』
「どうって・・・ 流れに乗りたい?みたいな感じかな?」
『・・・』
『お調子者さんかな?』
「だ、駄目ですか?」
加奈子はチラリと小学校の向こう、中学校の校庭を見た。
かなりの人間が校庭で何かをしているのが見える。
多分、戸弩力組が頑張っているんだろう。
『あそこで皆さん、レベルを付けた方ばかりで訓練しているのでそこへ行かれたらよろしいかと』
見ず知らずの男性を仲間にするほど、加奈子の偽善心は高くない。
それよりも、どんな人間性かもわからないのに、仲間にして問題が起きる方が嫌である。
「えっ?ここじゃ無理なんですか?」
『・・・』
『出来ない事は無いけれど、私たちはこれからやる事もありますので』
「お、俺も手伝いますので、ここで鍛えてもらえませんか?」
加奈子は少しうんざりとしてきた。
基本的に、あんまり男が好きじゃないのかも知れない。
戸弩力や徳太郎は特別なんだろう。
「加奈子さ~ん、どうしたんですか~?」
なかなか来ない加奈子を心配して麗菜と明日桜が近寄ってきた。
『この方がこのパーティに入れて欲しいと言うので、お断りをしている所です』
男に聞こえる様にハッキリと意思表示をしてみる。
「おじさん一人くらい増えた所であんま問題は無いんじゃ~ないっすか?」
麗菜は男の顔をジッと見て尋ねる。
「あなたは何が出来ますか?今のあなた自身の特技を聞かせて下さいな」
「お、俺はゲームくらいしか取り柄は無いけど・・・」
『・・・』
面倒くさいので断るつもりが、何やら眷属たちは容認しようとしているようだ。
「どんなゲームがお得意ですか?」
「き、基本はRPGやけど、SLGも好きかな」
「課金勢?無課金やり込み勢?それともガチ勢ですか?」
「どっちかと言えば、ガチ勢かな~」
「結婚はされてます?ご家族は?」
「バ、バツイチで家族は神戸には居ません」
「これからやるとしたら、どんな職業を目指しますか?」
「俺は・・・ 鉾か槍か戦斧か長柄の殴棒かなぁ」
「刀や剣は?体術とか?」
「いや、中距離で力任せに戦う方が得意かな?」
(((その身体で?)))
「い、今、身長と体重はどんくらい?」
見るからに細身で力も無さそうなのに、力任せが得意とか?理解出来ない明日桜が聞いた。
「えっと~ 178㎝で55㎏くらいかな?」
「ほっそっ!」
「だから市販の服やズボンはサイズが合わなくてw」
服もズボンもかなり大きめのサイズを着ているのは、細身を隠すためだと思っていた。
だが、身体廻りを合わせれば、服もズボンも丈が短すぎるようだ。
丈を合わせればブカブカな感じになってしまう。
「加奈子さん、この人をレベル付きにしませんか?」
『ん~まぁいいですけど・・・』
加奈子からの言質を取ったので麗菜はその男を引き連れてマンションの1階エントランスに向かう。
明日桜はジンガの頭を撫でながら加奈子に物申す。
「加奈子さん、あの人を仲間にするのが嫌そうだったけど?」
『ん~まぁ何て言うのか、私って男性不審なのかも知れないですね』
「でも、こんな所で出会うって縁ですよね」
『縁・・・ 縁なのかなぁ?』
「昨日、戸弩力さんと話してるのを聞いちゃってたんだけど、加奈子さんは強い"運"を持ってるって話だったんですよね。
だったらこんな所で偶然出会う縁ってのも、その運に導かれたもんじゃないかなって思う」
『・・・』
「麗菜さんとちょっと前に話してたんです。
自分たちが今ここに居るのも、加奈子さんの運に導かれて集まった人達なんだろうねって」
『・・・』
「だからあんなヒョロポンな男でも何かしら有意義な存在なのかも知れない?かな?」
『わかったわ、でも仲間にするのなら火の地獄を味わってもらわないとねw』
「あはは、あれはなかなか地獄ですw」
レベルが付いた男に、最低限のスキルと、最高の火熱耐性を覚えさせた。
「ハァハァハァ・・・ 2度も死ぬ思いをするなんて・・・」
「今、生きてるって事でしょw」
マンションの1階には100や200ではきかないくらいのゴブリンが居た。
老人ホームの方にも数えきれないくらいのゴブリンが居るので、そっちに男と麗菜を引き連れて加奈子は颯爽と臨んでいった。
建物内で火絨毯は拡げられないので、小さめの火弾を撃ち込み殲滅していく。
麗菜は二股の槍で軽くゴブリンを屠って行く。
身長がさらに伸び、やっとそこらの格闘家並みの筋肉が付いたが、撫で肩の為、そんなにガッチリは見えない男は、先言通りにフロアモップの先の房糸部分を取り除いた、杈の様な長柄武器で戦っている。
あまり殺傷力は高くないが、麗菜とペア狩りしているため特に問題は無いようである。
加奈子は同じフロアだが、少し離れてソロ狩り状態である。
(ふふふ、また何かドロップしたわ)
ちょこちょこゴブリンからは綺麗な瓶に入った薬を落としていたが、フロアボスだったかも知れない大きくて、明らかに他よりも強いゴブリンを倒した時、オレンジの宝珠を落として逝った。
(出会った時のヤツよりも何倍も強いこのゴブリンを雑魚みたいにアッサリと倒せた…)
(今ならあいつとやっても勝てるんじゃないだろうか?…)
(いや、ヤツがあのままのはずは無いし、慢心は封印しないと…)
加奈子のステータスは、武闘でも魔法でもこんなフロアボスクラスなら敵対も出来ないくらい差が付いてしまっている。
キャリヤと差が付いているのかは、今の所不明である。
加奈子の眷属のオオカミ、フィルは子供達と同じ、マンション部分の1階に居た。
子供達の主である、明日桜と緑と共に戦う。
3匹と2人は、素早さと攻撃力に長けている為、戦い方は必然的に近接戦闘になってしまう。
すぐそばでは、雲国親娘がゴブリンから奪った中刀で迫力のある戦いを繰り広げている。
老人ホームの1階を殲滅した加奈子たちは、2階3階と上がってみたが上にはゴブリンは居なかった。
また1階に降りて、エントランスとは反対側からマンション1階に入りゴブリンを殲滅していく。
加奈子は1階廊下に火の絨毯を拡げながら先行で進んで行った。
麗菜と細男が後始末をしながら進んで行く。
『麗菜さん、ドロップを見かけたら拾って来てくださいな』
「はいっわかりました」
「お任せください」
「この短時間でこんなにレベルが上がって、なんか夢を見てるようです」
「私も実は、あなたがレベルを付けるほんの少し前にレベル付きになったんですよw」
「最初の3~4匹は気持ち悪かったけど、もうゴブリンを殺す事に何も思わなくなりました」
「人としてはどうかと思うけど、こんな世界で生きて行くには慣れていかないとね」
二人共あっという間にレベルも10を超えて余裕も出て来て、話をしながら敵を狩って行く。
だが、何度も加奈子に言われた言葉を思い出し、麗菜は男に告げる。
「常々心に止めておいて欲しいんだけど、慢心だけはしないでね」
「慢心ですか・・・」
「あの加奈子さんですら、その慢心で死に掛けたって言ってたからね」
「はぁ・・・ やっぱりやられたら死ぬんですよね・・・」
「それはそうと、職業はもう選択したの?」
「いえっ、出てるのは【棒術士】【棍術士】【鉾術師】の3つあるんですが、なかなかどれにするか決めきれなくて」
「焦らなくても、また違う職業も発生するしね」
加奈子がグングン先に進んで行くと、もう目の前にフィル達が見えた。
前方に火の絨毯を展開し、暫く戦闘を眺めている。
(みんな、ほんと危なげなくゴブリンくらいなら倒せてるね)
おおよそ1階のゴブリンを掃除し、加奈子はフィルを連れて2階に上がってみたが、やはりそこにはゴブリンの姿は無かった。
(ん~ ゴブリンって1階にしか居ないのかな?)
目に見える範囲にゴブリンが居なくなったので、天使軍はゾロゾロと外に出て行った。
男が一人増えている事に雲国母娘が少し訝し気な雰囲気を見せているので、加奈子が自己紹介をするように男に促した。
「今日からパーティに入れて頂いた 棒妻 洋路と言います」
「以後、宜しくお願いします」
軽く自己紹介が終わり、9番街と8番街の間に座って今の戦闘の感想を言い合う。
明日桜や緑も率先して話の輪に入っている。
とても楽しそうに話す皆の姿を見て、加奈子の心に嬉しい気持ちが溢れて来る。
そして思い切って加奈子に尋ねた。
「お、俺も戦闘できるように、戦えるように仲間にしてくれませんか?」
加奈子は振り返り、しばし男を見つめた。
『あなたに聞くけど、今の世が変わった事は理解できましたか?』
『そして、これからどう生きていきたいか教えて下さいな』
「どうって・・・ 流れに乗りたい?みたいな感じかな?」
『・・・』
『お調子者さんかな?』
「だ、駄目ですか?」
加奈子はチラリと小学校の向こう、中学校の校庭を見た。
かなりの人間が校庭で何かをしているのが見える。
多分、戸弩力組が頑張っているんだろう。
『あそこで皆さん、レベルを付けた方ばかりで訓練しているのでそこへ行かれたらよろしいかと』
見ず知らずの男性を仲間にするほど、加奈子の偽善心は高くない。
それよりも、どんな人間性かもわからないのに、仲間にして問題が起きる方が嫌である。
「えっ?ここじゃ無理なんですか?」
『・・・』
『出来ない事は無いけれど、私たちはこれからやる事もありますので』
「お、俺も手伝いますので、ここで鍛えてもらえませんか?」
加奈子は少しうんざりとしてきた。
基本的に、あんまり男が好きじゃないのかも知れない。
戸弩力や徳太郎は特別なんだろう。
「加奈子さ~ん、どうしたんですか~?」
なかなか来ない加奈子を心配して麗菜と明日桜が近寄ってきた。
『この方がこのパーティに入れて欲しいと言うので、お断りをしている所です』
男に聞こえる様にハッキリと意思表示をしてみる。
「おじさん一人くらい増えた所であんま問題は無いんじゃ~ないっすか?」
麗菜は男の顔をジッと見て尋ねる。
「あなたは何が出来ますか?今のあなた自身の特技を聞かせて下さいな」
「お、俺はゲームくらいしか取り柄は無いけど・・・」
『・・・』
面倒くさいので断るつもりが、何やら眷属たちは容認しようとしているようだ。
「どんなゲームがお得意ですか?」
「き、基本はRPGやけど、SLGも好きかな」
「課金勢?無課金やり込み勢?それともガチ勢ですか?」
「どっちかと言えば、ガチ勢かな~」
「結婚はされてます?ご家族は?」
「バ、バツイチで家族は神戸には居ません」
「これからやるとしたら、どんな職業を目指しますか?」
「俺は・・・ 鉾か槍か戦斧か長柄の殴棒かなぁ」
「刀や剣は?体術とか?」
「いや、中距離で力任せに戦う方が得意かな?」
(((その身体で?)))
「い、今、身長と体重はどんくらい?」
見るからに細身で力も無さそうなのに、力任せが得意とか?理解出来ない明日桜が聞いた。
「えっと~ 178㎝で55㎏くらいかな?」
「ほっそっ!」
「だから市販の服やズボンはサイズが合わなくてw」
服もズボンもかなり大きめのサイズを着ているのは、細身を隠すためだと思っていた。
だが、身体廻りを合わせれば、服もズボンも丈が短すぎるようだ。
丈を合わせればブカブカな感じになってしまう。
「加奈子さん、この人をレベル付きにしませんか?」
『ん~まぁいいですけど・・・』
加奈子からの言質を取ったので麗菜はその男を引き連れてマンションの1階エントランスに向かう。
明日桜はジンガの頭を撫でながら加奈子に物申す。
「加奈子さん、あの人を仲間にするのが嫌そうだったけど?」
『ん~まぁ何て言うのか、私って男性不審なのかも知れないですね』
「でも、こんな所で出会うって縁ですよね」
『縁・・・ 縁なのかなぁ?』
「昨日、戸弩力さんと話してるのを聞いちゃってたんだけど、加奈子さんは強い"運"を持ってるって話だったんですよね。
だったらこんな所で偶然出会う縁ってのも、その運に導かれたもんじゃないかなって思う」
『・・・』
「麗菜さんとちょっと前に話してたんです。
自分たちが今ここに居るのも、加奈子さんの運に導かれて集まった人達なんだろうねって」
『・・・』
「だからあんなヒョロポンな男でも何かしら有意義な存在なのかも知れない?かな?」
『わかったわ、でも仲間にするのなら火の地獄を味わってもらわないとねw』
「あはは、あれはなかなか地獄ですw」
レベルが付いた男に、最低限のスキルと、最高の火熱耐性を覚えさせた。
「ハァハァハァ・・・ 2度も死ぬ思いをするなんて・・・」
「今、生きてるって事でしょw」
マンションの1階には100や200ではきかないくらいのゴブリンが居た。
老人ホームの方にも数えきれないくらいのゴブリンが居るので、そっちに男と麗菜を引き連れて加奈子は颯爽と臨んでいった。
建物内で火絨毯は拡げられないので、小さめの火弾を撃ち込み殲滅していく。
麗菜は二股の槍で軽くゴブリンを屠って行く。
身長がさらに伸び、やっとそこらの格闘家並みの筋肉が付いたが、撫で肩の為、そんなにガッチリは見えない男は、先言通りにフロアモップの先の房糸部分を取り除いた、杈の様な長柄武器で戦っている。
あまり殺傷力は高くないが、麗菜とペア狩りしているため特に問題は無いようである。
加奈子は同じフロアだが、少し離れてソロ狩り状態である。
(ふふふ、また何かドロップしたわ)
ちょこちょこゴブリンからは綺麗な瓶に入った薬を落としていたが、フロアボスだったかも知れない大きくて、明らかに他よりも強いゴブリンを倒した時、オレンジの宝珠を落として逝った。
(出会った時のヤツよりも何倍も強いこのゴブリンを雑魚みたいにアッサリと倒せた…)
(今ならあいつとやっても勝てるんじゃないだろうか?…)
(いや、ヤツがあのままのはずは無いし、慢心は封印しないと…)
加奈子のステータスは、武闘でも魔法でもこんなフロアボスクラスなら敵対も出来ないくらい差が付いてしまっている。
キャリヤと差が付いているのかは、今の所不明である。
加奈子の眷属のオオカミ、フィルは子供達と同じ、マンション部分の1階に居た。
子供達の主である、明日桜と緑と共に戦う。
3匹と2人は、素早さと攻撃力に長けている為、戦い方は必然的に近接戦闘になってしまう。
すぐそばでは、雲国親娘がゴブリンから奪った中刀で迫力のある戦いを繰り広げている。
老人ホームの1階を殲滅した加奈子たちは、2階3階と上がってみたが上にはゴブリンは居なかった。
また1階に降りて、エントランスとは反対側からマンション1階に入りゴブリンを殲滅していく。
加奈子は1階廊下に火の絨毯を拡げながら先行で進んで行った。
麗菜と細男が後始末をしながら進んで行く。
『麗菜さん、ドロップを見かけたら拾って来てくださいな』
「はいっわかりました」
「お任せください」
「この短時間でこんなにレベルが上がって、なんか夢を見てるようです」
「私も実は、あなたがレベルを付けるほんの少し前にレベル付きになったんですよw」
「最初の3~4匹は気持ち悪かったけど、もうゴブリンを殺す事に何も思わなくなりました」
「人としてはどうかと思うけど、こんな世界で生きて行くには慣れていかないとね」
二人共あっという間にレベルも10を超えて余裕も出て来て、話をしながら敵を狩って行く。
だが、何度も加奈子に言われた言葉を思い出し、麗菜は男に告げる。
「常々心に止めておいて欲しいんだけど、慢心だけはしないでね」
「慢心ですか・・・」
「あの加奈子さんですら、その慢心で死に掛けたって言ってたからね」
「はぁ・・・ やっぱりやられたら死ぬんですよね・・・」
「それはそうと、職業はもう選択したの?」
「いえっ、出てるのは【棒術士】【棍術士】【鉾術師】の3つあるんですが、なかなかどれにするか決めきれなくて」
「焦らなくても、また違う職業も発生するしね」
加奈子がグングン先に進んで行くと、もう目の前にフィル達が見えた。
前方に火の絨毯を展開し、暫く戦闘を眺めている。
(みんな、ほんと危なげなくゴブリンくらいなら倒せてるね)
おおよそ1階のゴブリンを掃除し、加奈子はフィルを連れて2階に上がってみたが、やはりそこにはゴブリンの姿は無かった。
(ん~ ゴブリンって1階にしか居ないのかな?)
目に見える範囲にゴブリンが居なくなったので、天使軍はゾロゾロと外に出て行った。
男が一人増えている事に雲国母娘が少し訝し気な雰囲気を見せているので、加奈子が自己紹介をするように男に促した。
「今日からパーティに入れて頂いた 棒妻 洋路と言います」
「以後、宜しくお願いします」
軽く自己紹介が終わり、9番街と8番街の間に座って今の戦闘の感想を言い合う。
明日桜や緑も率先して話の輪に入っている。
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