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第3章 勇者パーティー
第29話 カチコミ
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「……勝手な行動をして、申し訳ありませんでした」
「後50回は言っとけ」
「……はーい」
スコールに連行される形で、屋敷に戻ってくる。
トールくんを家に送るだけでこんなことになるとは……まあ、無事に帰れたから良し!
とりあえず今は、ラズリーのプリンを楽しむべき!
そう思いながらドアを開けて屋敷に入り……
「お帰りなさい、レムリア様~! さあ、そのご尊顔を! 私にぃぃぃい!」
「巴投げ!」
「……あああぁぁあああ!」
ついには屋敷内部にまで侵入するようになったロナードを、全力で放り投げる。
今日は色々あったけど、ようやくゆっくりできる。
「戻ったわ、ラズリー! 私にラズリーの手作りプリンを……!?」
そう思った私に、猛烈なプレッシャーが襲い掛かる。
「えっ……!?」
反射的に後ろに飛ぶが、いつのまにか現れた巨大な『何か』に阻まれた。
「な、なんだこいつら……!」
私と同じように後ろに飛んでぶつかっていたスコールが、その『何か』に驚いている。
そこに居たのは、羽根の生えた小さな少女を肩に乗せている、岩の巨人。
岩の巨人の横には、巨大な火球と、人の形をした水の塊がいて、全員が私を見ていた。
「……逃げろお嬢ちゃん!」
「え、どうして逃げるの?」
「こいつら、まともにやりあって勝てる相手じゃねえ!」
「大丈夫だって。この子たち、いい子なんだから」
「お、おい!」
「精霊の矢のとき姿は見たけど、一応初めましてかな? どうしてこんなところにいるの、畑耕し君」
そう呼んだ瞬間に、小さな土の人形のような姿になって胸に飛び込んできたので、受け止める。
そんな畑耕し君に続くように、マッチやランプ替わり、そしてシルフ(なぜかこの子だけ普通の名前らしい)が次々と私に飛び込んでくる。
「みんながここに居るってことは……ひっ!」
……さっき感じたプレッシャーが、さらに強くなっているのを感じる。
屋敷の中にいたであろうそれは、ゆっくりと私に近づき……
「……」
背後から、無言で私に抱き着いた。
「……もしかして、エミル?」
顔は見えないが、なんとなく分かる。
「……やっと会えました」
「エミ……いたたたたたた!」
とんでもない力で抱き締められてるんですけど!
これ、前からだったら背骨粉砕されている可能性あるんですけど!
「……放っておいたらどっか行っちゃうぐらいなら、このまま持って帰っちゃいましょうか」
「エ、エミル? エミルさん? あの、私ってば状況つかめてないんですけど! ていうか、お腹潰れるんですけど! なんなら吐きそうなんですけどー!」
////////////////////////
「……というわけで、レムリア。うちの子になりませんか」
「うん、とりあえず落ち着こうか、エミル」
「大丈夫です。今うちの孤児院は、寄付金だけじゃなくて、私が、対魔王騎士団? みたいなところの所属になったので、お給金のおかげで小金持ちです」
「よーし、少し落ち着きましょうか、エミル」
とりあえずエミルに解放してもらい、屋敷で話そうということになったが、相変わらずエミルの様子がちょっとおかしい。
「大丈夫です。うちは、やさぐれている子もいますが、根はいい子たちばっかりですよ」
「とりあえず、深呼吸して、落ち着いてみようか、エミル」
そして、私の横で言うとおりに、一生懸命に深呼吸するエミル。
本当にそういうところは可愛いなぁと思いながら頭を撫でる。
「どうしてもエミルさんがレムリア様に会いたいと仰ったので、連れて来ました!」
「お礼に、そこのお煎餅をどうぞ」
そう言いながら、自分にもご褒美をとばかりに見てくるロナードが言ってきたので、とりあえず、適当にご褒美を渡しておく。
それにしても、街のど真ん中に放り投げるぐらいの気持ちで投げたのに、すぐに屋敷に戻ってくるとは……私の知る、『ヤミヒカ』の攻略対象キャラ、ロナード・シュトロハイムの面影は皆無だが、『聖騎士』の名は伊達じゃない。
「落ち着いた、エミル?」
「はい。というわけで、うちに行きましょうか」
「うん、全然落ち着いてないね」
「それぐらいになさい。当家の主を連れて行くと言うなら、こちらにも考えがあるわ。貴女も早く拒否しなさい」
「あ、はい……」
たぶん、あの簡易スマホでラズリーから連絡がいったのか、領地視察に行っているはずのアオイさんが、この場を治めようとしてくれる。
だがエミルは、そんなアオイさんもジト目で見始める。
「……アオイさん。喋り方変わりましたか?」
「主を連れ去ろうとする方に、礼儀は必要ないでしょう?」
「いえ、私に対してではなく、レムリアに対してです。主に対して無礼なのでは?」
「私とレムリアの関係は、そのような一般常識を超えている、ということよ」
少し睨みつけてくるエミル、そしてなぜか一緒に頷いていたラズリーに、勝ち誇りつつも相手をあざ笑うかのような、完璧な悪役令嬢スマイルをかますアオイさん。
こういうところ、本当に素敵だ!
どうとでも捉えられるから誤魔化しにもなる完璧な回答をしつつ、微妙に真実を混ぜているところも含めて素敵すぎる!
「えっと、元々私って敬語苦手だから、私からお願いしたの。」
かといって、このままだとアオイさんが嫌な人認定されそうなので、フォローしておく。
「なるほど。でしたら、僕にも敬語は必要ないですよ。だって、僕とレムリア様の仲ですから!」
「いや、さすがに学校の先輩にそれは……」
ていうか、ちょっとキモい。
「……敬語についてはいいです。でも、レムリアを連れて帰るのは諦めません」
「……しつこいわね、貴女も」
ま、まずい、レムリアさんが懐に手を入れている!
確実に、魔導銃か、他の何かのヤバい系の武器を取り出そうとしている。
「エ、エミルはどうして、私を連れ帰ろうとしているの?」
平和が一番、武力解決なんてやめてという意味を込めて、改めて状況を確認しようと聞いてみる。
「……」
「え、あの……」
無言で私を睨むようにしつつ、顔を近づけてくる。
そして私の服に触れ……
「えい」
「……は?」
……思いっきり下に下ろした。
「……」
……肌色だ。
この世界に来て、もう何回この感想を思っただろうか。
とにかく私の視界に、肌色が一気に増えるのだ。
「あ……ああ……」
アオイさんは驚いている。
ラズリーは顔を紅くして目を背けている。
ロナードは手を合わせてガン見している。
「……怪我がありませんね。もしかして、下半身ですか? スカートの下も見せてもらいますね」
そう言いながら、エミルが残りのドレスを脱がせようとした瞬間、私は全力のアポカリプスを床に叩きつけていた。
/////////////////
次回はいよいよ、お約束展開!
一度は書いてみたかった……気合入れねば!w
「後50回は言っとけ」
「……はーい」
スコールに連行される形で、屋敷に戻ってくる。
トールくんを家に送るだけでこんなことになるとは……まあ、無事に帰れたから良し!
とりあえず今は、ラズリーのプリンを楽しむべき!
そう思いながらドアを開けて屋敷に入り……
「お帰りなさい、レムリア様~! さあ、そのご尊顔を! 私にぃぃぃい!」
「巴投げ!」
「……あああぁぁあああ!」
ついには屋敷内部にまで侵入するようになったロナードを、全力で放り投げる。
今日は色々あったけど、ようやくゆっくりできる。
「戻ったわ、ラズリー! 私にラズリーの手作りプリンを……!?」
そう思った私に、猛烈なプレッシャーが襲い掛かる。
「えっ……!?」
反射的に後ろに飛ぶが、いつのまにか現れた巨大な『何か』に阻まれた。
「な、なんだこいつら……!」
私と同じように後ろに飛んでぶつかっていたスコールが、その『何か』に驚いている。
そこに居たのは、羽根の生えた小さな少女を肩に乗せている、岩の巨人。
岩の巨人の横には、巨大な火球と、人の形をした水の塊がいて、全員が私を見ていた。
「……逃げろお嬢ちゃん!」
「え、どうして逃げるの?」
「こいつら、まともにやりあって勝てる相手じゃねえ!」
「大丈夫だって。この子たち、いい子なんだから」
「お、おい!」
「精霊の矢のとき姿は見たけど、一応初めましてかな? どうしてこんなところにいるの、畑耕し君」
そう呼んだ瞬間に、小さな土の人形のような姿になって胸に飛び込んできたので、受け止める。
そんな畑耕し君に続くように、マッチやランプ替わり、そしてシルフ(なぜかこの子だけ普通の名前らしい)が次々と私に飛び込んでくる。
「みんながここに居るってことは……ひっ!」
……さっき感じたプレッシャーが、さらに強くなっているのを感じる。
屋敷の中にいたであろうそれは、ゆっくりと私に近づき……
「……」
背後から、無言で私に抱き着いた。
「……もしかして、エミル?」
顔は見えないが、なんとなく分かる。
「……やっと会えました」
「エミ……いたたたたたた!」
とんでもない力で抱き締められてるんですけど!
これ、前からだったら背骨粉砕されている可能性あるんですけど!
「……放っておいたらどっか行っちゃうぐらいなら、このまま持って帰っちゃいましょうか」
「エ、エミル? エミルさん? あの、私ってば状況つかめてないんですけど! ていうか、お腹潰れるんですけど! なんなら吐きそうなんですけどー!」
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「……というわけで、レムリア。うちの子になりませんか」
「うん、とりあえず落ち着こうか、エミル」
「大丈夫です。今うちの孤児院は、寄付金だけじゃなくて、私が、対魔王騎士団? みたいなところの所属になったので、お給金のおかげで小金持ちです」
「よーし、少し落ち着きましょうか、エミル」
とりあえずエミルに解放してもらい、屋敷で話そうということになったが、相変わらずエミルの様子がちょっとおかしい。
「大丈夫です。うちは、やさぐれている子もいますが、根はいい子たちばっかりですよ」
「とりあえず、深呼吸して、落ち着いてみようか、エミル」
そして、私の横で言うとおりに、一生懸命に深呼吸するエミル。
本当にそういうところは可愛いなぁと思いながら頭を撫でる。
「どうしてもエミルさんがレムリア様に会いたいと仰ったので、連れて来ました!」
「お礼に、そこのお煎餅をどうぞ」
そう言いながら、自分にもご褒美をとばかりに見てくるロナードが言ってきたので、とりあえず、適当にご褒美を渡しておく。
それにしても、街のど真ん中に放り投げるぐらいの気持ちで投げたのに、すぐに屋敷に戻ってくるとは……私の知る、『ヤミヒカ』の攻略対象キャラ、ロナード・シュトロハイムの面影は皆無だが、『聖騎士』の名は伊達じゃない。
「落ち着いた、エミル?」
「はい。というわけで、うちに行きましょうか」
「うん、全然落ち着いてないね」
「それぐらいになさい。当家の主を連れて行くと言うなら、こちらにも考えがあるわ。貴女も早く拒否しなさい」
「あ、はい……」
たぶん、あの簡易スマホでラズリーから連絡がいったのか、領地視察に行っているはずのアオイさんが、この場を治めようとしてくれる。
だがエミルは、そんなアオイさんもジト目で見始める。
「……アオイさん。喋り方変わりましたか?」
「主を連れ去ろうとする方に、礼儀は必要ないでしょう?」
「いえ、私に対してではなく、レムリアに対してです。主に対して無礼なのでは?」
「私とレムリアの関係は、そのような一般常識を超えている、ということよ」
少し睨みつけてくるエミル、そしてなぜか一緒に頷いていたラズリーに、勝ち誇りつつも相手をあざ笑うかのような、完璧な悪役令嬢スマイルをかますアオイさん。
こういうところ、本当に素敵だ!
どうとでも捉えられるから誤魔化しにもなる完璧な回答をしつつ、微妙に真実を混ぜているところも含めて素敵すぎる!
「えっと、元々私って敬語苦手だから、私からお願いしたの。」
かといって、このままだとアオイさんが嫌な人認定されそうなので、フォローしておく。
「なるほど。でしたら、僕にも敬語は必要ないですよ。だって、僕とレムリア様の仲ですから!」
「いや、さすがに学校の先輩にそれは……」
ていうか、ちょっとキモい。
「……敬語についてはいいです。でも、レムリアを連れて帰るのは諦めません」
「……しつこいわね、貴女も」
ま、まずい、レムリアさんが懐に手を入れている!
確実に、魔導銃か、他の何かのヤバい系の武器を取り出そうとしている。
「エ、エミルはどうして、私を連れ帰ろうとしているの?」
平和が一番、武力解決なんてやめてという意味を込めて、改めて状況を確認しようと聞いてみる。
「……」
「え、あの……」
無言で私を睨むようにしつつ、顔を近づけてくる。
そして私の服に触れ……
「えい」
「……は?」
……思いっきり下に下ろした。
「……」
……肌色だ。
この世界に来て、もう何回この感想を思っただろうか。
とにかく私の視界に、肌色が一気に増えるのだ。
「あ……ああ……」
アオイさんは驚いている。
ラズリーは顔を紅くして目を背けている。
ロナードは手を合わせてガン見している。
「……怪我がありませんね。もしかして、下半身ですか? スカートの下も見せてもらいますね」
そう言いながら、エミルが残りのドレスを脱がせようとした瞬間、私は全力のアポカリプスを床に叩きつけていた。
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