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第2章 邂逅
第21話 魔王組結成!
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「配下になりたい……一応聞くけど、貴方が配下になりたい『レムリア・ルーゼンシュタイン』は、私とレムリアのどっちかしら?」
「言うまでもないでしょう」
ああ、なるほど。
いきなり、レムリアの配下になりたいって言うから驚いたけど、アオイさん方か。
それなら納得。
「そちらの、レムリア嬢ですよ」
「でしょうね。聞くまでもなかったかしら」
ですよね、あはははは……
「なんでそうな……むぐっ!」
「……静かになさい」
口に人差し指を当てられ、強制的に発言を止められる。
「いや、そんなことしている場合じゃないですから! ちょっとドキッとしましたけど!」
「貴女のドキッとする判定はどうなってるのよ……まあいいわ。大体予想はつくけど、この子は想像すらできなさそうだから、ちゃんと伝えてあげてちょうだい」
「承知しました」
少し笑いながらこちらを見るヴラムと、やれやれとばかりに手を広げて笑っているスコール。
……むう。
スコールは私と同じ、難しい話のときはよく分かっていない側のはずなのに、その態度は少し納得がいかない。
「一言で言うならば、結末を見届けたいからです。テスタメント設立への助力、魔王復活の儀式……まあ、あんな儀式をしなくても、近いうちに魔王は復活するでしょうが、全てを始めた人間として、最後まで見届けたいのですよ」
「俺は今回の件で、色々と『首輪』が付いちまってねぇ。あんたに従って、反省してまーすって見せつけるのが、首輪を外す近道ってわけだ。ついでに、あんたに従えば、そこのオヤジが便宜を図ってくれるらしいんでね」
うん、清々しいほどの自分の目的優先。
そしてアオイさんが、「こいつ、殺していい?」みたいな目で、ヴラムを睨みつける。
「……一応、保護者みたいなものなので」
そんなアオイさんの目線を、ヴラムは絵に描いたような苦笑でかわしている。
なんというか、ヴラムも大変だなぁ。
「……まあ、良しとするわ。人手は足りていないのは事実だし、ヴラムは色々と便利で、駄狼は『戦力としては』役に立つでしょうから」
「あ、あの……いいんですか? 『色々な意味』で……」
「貴女とヴラムたちが一緒に行動する……テスタメントはなくなったけど、そっちがの方が、『色々な意味』でもいいんじゃないかしら?」
あ、そうか。
一応、主要人物が集まっていた方が、ゲームの再現にはなるのか。
もうこうなったら、グッドエンドを迎えるには、エミルの恋のキューピッドに徹するしかない! とか考えていたけど、そっちの方が良さそうだ。
ただ、ひとつ引っかかるのは……
「……彼らを配下に加えてよろしいですか、レムリアお嬢様?」
一応、私の了解も取ってほしいなと思っていた私に、皮肉たっぷりに笑いながら話しかけてくるアオイさん。
「……ええ! よくってよ!」
とりあえず、負けないように嫌味を込めて返しておく。
別に負け犬の遠吠えじゃないから!
「承諾いただけたようで何より。では、こちらができることをお伝えしておきましょうか」
その言葉を聞いたスコールがパチンと指を鳴らす。
すると、どこからか一斉にスコールと同じ一族と思われる人たちが現れる。
「まずは俺からだな。ここにいない連中も含めて、全員で89人。護衛から暗殺、愛猫探しから悪質な嫌がらせまで、なんでも命じてくれ」
「「「よろしくお願いします!」」」
ここにいるのは、全員で20人ぐらいかな。
男の人から女の人まで、2メートル超えの人から、小さな子供みたいな人もいる。
「よろしくお願いします。スコールの家族のみなさん」
「え……」
全員が一斉に不思議な顔をしてくる。
え、私何かしました?
この前スコールが、みんなのこと家族って呼んでたから言っただけなんだけど……
「スコール! この人、ボクたちのことスコールの部下じゃなくて、スコールの家族って呼んだ!」
「あの、家族っていうのはスコールの兄貴が勝手に言っているだけで、俺たち別に本当の家族ってわけじゃ……」
「あ、はい。知ってますよ。仲が良くて、本当の家族みたいな関係なんですよね? だったら、部下とかそういうので呼ぶのって、なんというか、嫌じゃないですか」
私も田舎の道場に通ってくれた人たちのこと、家族みたいに思ってたから分かる。
みんな今頃どうしてるかなぁ。
「……」
あれ……またしても、不思議な顔をされている。
しかも、小さな子たちが座っている私の膝に飛びこんでくる。
そして、スコールの方を向きながら、とても無邪気な顔で見ながら嬉しそうに喋りだす。
「スコール! この人間、いい人! いい人!」
「え、い、いい人?」
そんな風に呼ばれるような人間ではない気がするのだが……
「姉さん……!」
「あ、姉さん!?」
「ははっ! 早速、仲良くしてもらってるようで何よりだ! ま、うちの戦力はこんなもんだな」
「次は私ですね。私の戦力と呼ぶべき力は、吸血鬼の一族と宰相の力……と、言いたいところですが、私個人が提供する力は、学校での融通ぐらいしかできることはないですね」
「え……?」
「……戦力を、私たちに差し出す気はないということかしら?」
「ああ、違いますよ。本当に、今の私はこれぐらいしかないです」
そう言いながら、本当に困った顔をするヴラム。
「私、宰相を辞めましたから」
そして、とんでもないことを言いだした。
「な、何があったんですか!」
「まあ、簡単に言うと、テスタメントを不問にした代償ですね。テスタメント関係者の情報提供、追及も禁止。ただし、これ以降は便宜を図らないという条件を王に飲ませる代わりに、地位と家財と領土、全て渡しました。私に残っているのは、替えがきかなかった校長という立場だけです」
「そんな……」
「おや? 心配してくれるんですか? でしたら、給料を増やしていただきたいですね」
「もちろんです! 可能な限り増やします!」
「……日本茶飲み放題ぐらいで十分よ。どうせ宰相の後任は、貴方の一族なんでしょう? その気になれば、いくらでも援助してもらえるじゃない」
「その通りですが、レムリア嬢の為に一族を利用するかもしれませんが、個人で援助を受ける気もありません。なので当面は、教師寮での一人暮らしですね」
そんなことを話しながら、急に真面目な顔になり、話を続けるヴラム。
「……これは私のケジメです。『義務なんかより、みんなが自分らしく生きることを……自分がやりたい事を優先するためにね」
「あ……」
自分がヴラムに言った言葉を言われ、ちょっと気まずくなる。
「あの……生意気なことを言って……」
「いえ、むしろ感謝していますよ。その言葉のおかげで、私は自分のやりたいことと、義務に縛られた行動の無責任さに気付けましたから」
そう言いながら、ヴラムは空を見上げる。
「……私は本当に、もう何百年も、義務に縛られて生きてきました。魔王亡きあと、魔王が生まれないような平和な世界を目指す、それが、魔王と勇者の両方を見た者の義務。そう思って行動していましたが、どこかこう思っていたのでしょうね」
そう言いながら、ゆっくりと視線を戻し……
「……義務で『やってあげている』のだから、多少は適当になってもしょうがない、とね」
まるで感情を吐き出すように言葉を続ける。
「…………」
アオイさんが複雑な顔をする。
そういえば、アオイさんがヴラムのことを『肝心なところで強者の責任から逃れる最低なやつ』と言っていた。
おそらくこの逃げが、ヴラムのいう適当な部分なのかもしれない。
「思えば魔王復活の儀式も、適当の一つだったのでしょう。魔族と人間の関係、魔力を持つ者と持たない者の格差、今や問題だらけとなったこの国を、器となる人間に全てを押し付けたかったんだと思います」
「……だとしたら、レムリアの配下になるのは、同じ押し付けじゃないのかしら?」
「そうでしょうね。でも私は、アオイ嬢の知識と、レムリア嬢の人を惹きつける力は、この世界を変えると思っています。そんなお二人が作る世界を見てみたい、これが、義務ではない、今の私が一番やりたいことですから」
「いや、私に人を惹きつける力なんてないですけど?」
なんか凄いいいことを言っているところ申し訳ないが、あまりにもとんでもいことを言ってきたので、ついツッコミを入れてしまった。
現実で友達0、こっち来ても友達0の私に、なんてことを言うかなこの人は。
そんな私を見て、苦笑するヴラムに、またしても、やれやれとばかりに手を広げるスコール。
「…………会ったばかりの獣人の子を膝に乗っけながら、何言ってるんだか」
「え、何か言いました?」
「別に、何も言ってないわ」
そう言いながら、そっぽ向くアオイさん。
なんだこの、すべってしまったみたいな空気は。
むしろ友達0の私が泣きたいぐらいなのだが。
「貴方たちの戦力は分かったわ。配置についてはあとで知らせるから、暫くは待機していてちょうだい」
「テスタメントがなくなった今、今後はどう動くつもりですか?」
「魔王の武具を集めるわ」
「いいのかい? 魔王の力がさらに巨大になったら、お嬢ちゃんの精神が魔王の力に喰われるかもしれないぜ?」
「レムリアを魔王と認めなかった点から考えて、あれは何が起こるか分からない、危険な不確定要素そのものよ。どう使うかはともかく、手元には置いておきたいわ。勇者と戦うことになったときの切り札にもなるしね」
『それと、一応はゲームの展開に沿っておいた方がいい』と、目で語ってくるアオイさん。
さすがと思いつつ、全裸変身アイテムはもう要らないんだけどとも思う。
ちなみに、魔王の武具は変身が解けたあと黒い宝石になり、特注で作ってもらった腕輪にはめ込んであるが、できれば今後一切使いたくない。
まあ、使うとエミルの精霊憑依と同じで、姿形も少し変わるから便利なのだが。
「なるほどねぇ。いい判断だと思うぜ」
「話は決まったわね。オルドヌング・ナハト、改めて活動開始よ」
「え……」
アオイさんの言葉に、全員が固まる。
オルドヌング・ナハト……?
「……えーと、アオイ嬢、オルドヌング・ナハトとは?」
「テスタメントに変わる組織名よ。良い名前でしょ?」
なんだか活き活きとしているアオイさん。
そんなアオイさんには非常に申し訳ないのだけど……その……
「……言葉の意味は分からねえが、なんか恥ずかしさを感じる名前だな」
だ、誰もが言い辛そうにしていたことをズバッと言った!
この空気の読めなさ……さすがスコールと言うべきか。
「ど、どこがよ! 響き、格式の高さ、全てが完璧な名前じゃない!」
そう言いながら、私の方を見るアオイさん。
……ごめんなさい、アオイさん。
厨二好きである私も、さすがにそれを口に出すのは、ちょっと恥ずかしいです。
「……ここは、私たちの主であるレムリア嬢に決めてもらいましょう。」
「えっ!? いやあの、急にそんなこと言われても……」
「……適当に思いついたものでいいわよ。あとでオルドヌング・ナハトに変えることだってできるだろうし」
……まだ諦めてないんですかアオイさん。
「えーと……じゃあもう、魔王組とかでいいんじゃないですか?」
「……何よそれ。もう少しまともに……」
「まあ、分かりやすくていいんじゃねえか」
「テスタメントと違い、魔王の名前を全面に出していく形で違いを図る……たしかにこれぐらいでいいのかもしれませんね」
「なっ!?」
まさかの高評価。
まあ、高評価理由の9割が、オルドヌング・ナハトにしたくないからだろうが。
「……若干納得はいかないけど、まあ良しとしましょう」
若干どころか、心底納得いっていない顔になりつつ、お茶を飲むアオイさん。
拗ねているところが可愛いとか思ってしまうが、それを口に出すと絶対にひどい目にあいそうなので黙っておこう。
「……さて、難しい話はお終い。今日は貴方たちの歓迎会でもしましょうか。駄狼は、ここに来ていない者も連れてきなさい。ルーゼンシュタイン家名物、日本食を味合わせてあげるわ」
「なんだか分からないけど、ごちそう! ごちそう!」
「……今は食費も惜しいですし、助かりますね」
アオイさんの言葉に沸き立つ面々。
こうして魔王組……私たちの、新たな活動が始まることになった。
「言うまでもないでしょう」
ああ、なるほど。
いきなり、レムリアの配下になりたいって言うから驚いたけど、アオイさん方か。
それなら納得。
「そちらの、レムリア嬢ですよ」
「でしょうね。聞くまでもなかったかしら」
ですよね、あはははは……
「なんでそうな……むぐっ!」
「……静かになさい」
口に人差し指を当てられ、強制的に発言を止められる。
「いや、そんなことしている場合じゃないですから! ちょっとドキッとしましたけど!」
「貴女のドキッとする判定はどうなってるのよ……まあいいわ。大体予想はつくけど、この子は想像すらできなさそうだから、ちゃんと伝えてあげてちょうだい」
「承知しました」
少し笑いながらこちらを見るヴラムと、やれやれとばかりに手を広げて笑っているスコール。
……むう。
スコールは私と同じ、難しい話のときはよく分かっていない側のはずなのに、その態度は少し納得がいかない。
「一言で言うならば、結末を見届けたいからです。テスタメント設立への助力、魔王復活の儀式……まあ、あんな儀式をしなくても、近いうちに魔王は復活するでしょうが、全てを始めた人間として、最後まで見届けたいのですよ」
「俺は今回の件で、色々と『首輪』が付いちまってねぇ。あんたに従って、反省してまーすって見せつけるのが、首輪を外す近道ってわけだ。ついでに、あんたに従えば、そこのオヤジが便宜を図ってくれるらしいんでね」
うん、清々しいほどの自分の目的優先。
そしてアオイさんが、「こいつ、殺していい?」みたいな目で、ヴラムを睨みつける。
「……一応、保護者みたいなものなので」
そんなアオイさんの目線を、ヴラムは絵に描いたような苦笑でかわしている。
なんというか、ヴラムも大変だなぁ。
「……まあ、良しとするわ。人手は足りていないのは事実だし、ヴラムは色々と便利で、駄狼は『戦力としては』役に立つでしょうから」
「あ、あの……いいんですか? 『色々な意味』で……」
「貴女とヴラムたちが一緒に行動する……テスタメントはなくなったけど、そっちがの方が、『色々な意味』でもいいんじゃないかしら?」
あ、そうか。
一応、主要人物が集まっていた方が、ゲームの再現にはなるのか。
もうこうなったら、グッドエンドを迎えるには、エミルの恋のキューピッドに徹するしかない! とか考えていたけど、そっちの方が良さそうだ。
ただ、ひとつ引っかかるのは……
「……彼らを配下に加えてよろしいですか、レムリアお嬢様?」
一応、私の了解も取ってほしいなと思っていた私に、皮肉たっぷりに笑いながら話しかけてくるアオイさん。
「……ええ! よくってよ!」
とりあえず、負けないように嫌味を込めて返しておく。
別に負け犬の遠吠えじゃないから!
「承諾いただけたようで何より。では、こちらができることをお伝えしておきましょうか」
その言葉を聞いたスコールがパチンと指を鳴らす。
すると、どこからか一斉にスコールと同じ一族と思われる人たちが現れる。
「まずは俺からだな。ここにいない連中も含めて、全員で89人。護衛から暗殺、愛猫探しから悪質な嫌がらせまで、なんでも命じてくれ」
「「「よろしくお願いします!」」」
ここにいるのは、全員で20人ぐらいかな。
男の人から女の人まで、2メートル超えの人から、小さな子供みたいな人もいる。
「よろしくお願いします。スコールの家族のみなさん」
「え……」
全員が一斉に不思議な顔をしてくる。
え、私何かしました?
この前スコールが、みんなのこと家族って呼んでたから言っただけなんだけど……
「スコール! この人、ボクたちのことスコールの部下じゃなくて、スコールの家族って呼んだ!」
「あの、家族っていうのはスコールの兄貴が勝手に言っているだけで、俺たち別に本当の家族ってわけじゃ……」
「あ、はい。知ってますよ。仲が良くて、本当の家族みたいな関係なんですよね? だったら、部下とかそういうので呼ぶのって、なんというか、嫌じゃないですか」
私も田舎の道場に通ってくれた人たちのこと、家族みたいに思ってたから分かる。
みんな今頃どうしてるかなぁ。
「……」
あれ……またしても、不思議な顔をされている。
しかも、小さな子たちが座っている私の膝に飛びこんでくる。
そして、スコールの方を向きながら、とても無邪気な顔で見ながら嬉しそうに喋りだす。
「スコール! この人間、いい人! いい人!」
「え、い、いい人?」
そんな風に呼ばれるような人間ではない気がするのだが……
「姉さん……!」
「あ、姉さん!?」
「ははっ! 早速、仲良くしてもらってるようで何よりだ! ま、うちの戦力はこんなもんだな」
「次は私ですね。私の戦力と呼ぶべき力は、吸血鬼の一族と宰相の力……と、言いたいところですが、私個人が提供する力は、学校での融通ぐらいしかできることはないですね」
「え……?」
「……戦力を、私たちに差し出す気はないということかしら?」
「ああ、違いますよ。本当に、今の私はこれぐらいしかないです」
そう言いながら、本当に困った顔をするヴラム。
「私、宰相を辞めましたから」
そして、とんでもないことを言いだした。
「な、何があったんですか!」
「まあ、簡単に言うと、テスタメントを不問にした代償ですね。テスタメント関係者の情報提供、追及も禁止。ただし、これ以降は便宜を図らないという条件を王に飲ませる代わりに、地位と家財と領土、全て渡しました。私に残っているのは、替えがきかなかった校長という立場だけです」
「そんな……」
「おや? 心配してくれるんですか? でしたら、給料を増やしていただきたいですね」
「もちろんです! 可能な限り増やします!」
「……日本茶飲み放題ぐらいで十分よ。どうせ宰相の後任は、貴方の一族なんでしょう? その気になれば、いくらでも援助してもらえるじゃない」
「その通りですが、レムリア嬢の為に一族を利用するかもしれませんが、個人で援助を受ける気もありません。なので当面は、教師寮での一人暮らしですね」
そんなことを話しながら、急に真面目な顔になり、話を続けるヴラム。
「……これは私のケジメです。『義務なんかより、みんなが自分らしく生きることを……自分がやりたい事を優先するためにね」
「あ……」
自分がヴラムに言った言葉を言われ、ちょっと気まずくなる。
「あの……生意気なことを言って……」
「いえ、むしろ感謝していますよ。その言葉のおかげで、私は自分のやりたいことと、義務に縛られた行動の無責任さに気付けましたから」
そう言いながら、ヴラムは空を見上げる。
「……私は本当に、もう何百年も、義務に縛られて生きてきました。魔王亡きあと、魔王が生まれないような平和な世界を目指す、それが、魔王と勇者の両方を見た者の義務。そう思って行動していましたが、どこかこう思っていたのでしょうね」
そう言いながら、ゆっくりと視線を戻し……
「……義務で『やってあげている』のだから、多少は適当になってもしょうがない、とね」
まるで感情を吐き出すように言葉を続ける。
「…………」
アオイさんが複雑な顔をする。
そういえば、アオイさんがヴラムのことを『肝心なところで強者の責任から逃れる最低なやつ』と言っていた。
おそらくこの逃げが、ヴラムのいう適当な部分なのかもしれない。
「思えば魔王復活の儀式も、適当の一つだったのでしょう。魔族と人間の関係、魔力を持つ者と持たない者の格差、今や問題だらけとなったこの国を、器となる人間に全てを押し付けたかったんだと思います」
「……だとしたら、レムリアの配下になるのは、同じ押し付けじゃないのかしら?」
「そうでしょうね。でも私は、アオイ嬢の知識と、レムリア嬢の人を惹きつける力は、この世界を変えると思っています。そんなお二人が作る世界を見てみたい、これが、義務ではない、今の私が一番やりたいことですから」
「いや、私に人を惹きつける力なんてないですけど?」
なんか凄いいいことを言っているところ申し訳ないが、あまりにもとんでもいことを言ってきたので、ついツッコミを入れてしまった。
現実で友達0、こっち来ても友達0の私に、なんてことを言うかなこの人は。
そんな私を見て、苦笑するヴラムに、またしても、やれやれとばかりに手を広げるスコール。
「…………会ったばかりの獣人の子を膝に乗っけながら、何言ってるんだか」
「え、何か言いました?」
「別に、何も言ってないわ」
そう言いながら、そっぽ向くアオイさん。
なんだこの、すべってしまったみたいな空気は。
むしろ友達0の私が泣きたいぐらいなのだが。
「貴方たちの戦力は分かったわ。配置についてはあとで知らせるから、暫くは待機していてちょうだい」
「テスタメントがなくなった今、今後はどう動くつもりですか?」
「魔王の武具を集めるわ」
「いいのかい? 魔王の力がさらに巨大になったら、お嬢ちゃんの精神が魔王の力に喰われるかもしれないぜ?」
「レムリアを魔王と認めなかった点から考えて、あれは何が起こるか分からない、危険な不確定要素そのものよ。どう使うかはともかく、手元には置いておきたいわ。勇者と戦うことになったときの切り札にもなるしね」
『それと、一応はゲームの展開に沿っておいた方がいい』と、目で語ってくるアオイさん。
さすがと思いつつ、全裸変身アイテムはもう要らないんだけどとも思う。
ちなみに、魔王の武具は変身が解けたあと黒い宝石になり、特注で作ってもらった腕輪にはめ込んであるが、できれば今後一切使いたくない。
まあ、使うとエミルの精霊憑依と同じで、姿形も少し変わるから便利なのだが。
「なるほどねぇ。いい判断だと思うぜ」
「話は決まったわね。オルドヌング・ナハト、改めて活動開始よ」
「え……」
アオイさんの言葉に、全員が固まる。
オルドヌング・ナハト……?
「……えーと、アオイ嬢、オルドヌング・ナハトとは?」
「テスタメントに変わる組織名よ。良い名前でしょ?」
なんだか活き活きとしているアオイさん。
そんなアオイさんには非常に申し訳ないのだけど……その……
「……言葉の意味は分からねえが、なんか恥ずかしさを感じる名前だな」
だ、誰もが言い辛そうにしていたことをズバッと言った!
この空気の読めなさ……さすがスコールと言うべきか。
「ど、どこがよ! 響き、格式の高さ、全てが完璧な名前じゃない!」
そう言いながら、私の方を見るアオイさん。
……ごめんなさい、アオイさん。
厨二好きである私も、さすがにそれを口に出すのは、ちょっと恥ずかしいです。
「……ここは、私たちの主であるレムリア嬢に決めてもらいましょう。」
「えっ!? いやあの、急にそんなこと言われても……」
「……適当に思いついたものでいいわよ。あとでオルドヌング・ナハトに変えることだってできるだろうし」
……まだ諦めてないんですかアオイさん。
「えーと……じゃあもう、魔王組とかでいいんじゃないですか?」
「……何よそれ。もう少しまともに……」
「まあ、分かりやすくていいんじゃねえか」
「テスタメントと違い、魔王の名前を全面に出していく形で違いを図る……たしかにこれぐらいでいいのかもしれませんね」
「なっ!?」
まさかの高評価。
まあ、高評価理由の9割が、オルドヌング・ナハトにしたくないからだろうが。
「……若干納得はいかないけど、まあ良しとしましょう」
若干どころか、心底納得いっていない顔になりつつ、お茶を飲むアオイさん。
拗ねているところが可愛いとか思ってしまうが、それを口に出すと絶対にひどい目にあいそうなので黙っておこう。
「……さて、難しい話はお終い。今日は貴方たちの歓迎会でもしましょうか。駄狼は、ここに来ていない者も連れてきなさい。ルーゼンシュタイン家名物、日本食を味合わせてあげるわ」
「なんだか分からないけど、ごちそう! ごちそう!」
「……今は食費も惜しいですし、助かりますね」
アオイさんの言葉に沸き立つ面々。
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