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第2章 邂逅
第19話 反省会開始
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「……さて、話し合いを始めましょうか」
「はい……」
魔王を崇拝する秘密組織、『テスタメント』の本拠地兼秘密基地ともいえる場所である、ヴラムの屋敷の庭に集まる私たち。
ちなみに私の座っている場所からは、私がアポカリプスで破壊した屋敷が良く見える。
……うん、これ絶対嫌味だ。
ちなみに、おそらく跡地から掘り出したであろうボロボロの机には、うちで使っているやたら豪華なティーカップやら、高級お茶菓子が並んでいる。
……うん、これ絶対、「話したいことがありますので、必ず来てください♪」と何食わぬ顔で言ってきたヴラムへの、アオイさんからの嫌味だ。
「……その前に、聞きたいことがあるわ」
今回の一件で、本来の口調がばれたアオイさんは、もはや敬語を使おうともしない。
私にも、好きになさいと言ってくれているので、気が楽ではあるのだが、おそらく、アオイさんが質問したい内容のせいで、完全に気が楽になれない。
「お、いいねぇ。ちゃんと質問してくる奴は、伸びしろがある証拠だぜ」
そして、『質問したい内容そのもの』が、いつもの調子で答える。
「……なんで、この駄狼がいるのかしら?」
そんなスコールを思いっきり無視して、ヴラムを睨むアオイさん。
「その点については後ほど。まずはテスタメントの現状から話しましょう」
……やっぱりきた。
最も触れてほしくない話題だけど、まあ、そうなるよね。
「魔王の力を持つという点で、形式上とはいえ、長だったレムリア嬢による解散宣言……一応、本拠地であったこの館の崩壊……それらによる、脱退と離反……事実上、奇麗さっぱりの壊滅ですね♪」
「えっと……ごめんなさい」
「謝る必要なんてないわ。この程度で崩壊するなら、遅かれ早かれ崩壊したでしょう。それに、あんな下種共を集めていても、害悪でしかない」
「それは俺も賛成だねぇ」
「……その下種の中に、貴方も入っているのだけど?」
「おお、怖っ! これは口を挟まない方がよさそうだねぇ」
そうは言っているけど、全然態度を変えないところをみると、明らかに口を挟む気満々だ。
思いっきり殺しあった仲だけど、なんだかいつものスコールのままでちょっと安心した。
……とは言っても、あとでちゃんと謝ることから始めないといけないけど。
(でも……テスタメントについては、申し訳ないけどアオイさんの意見に概ね賛成なんだよね)
魔族による人間の軽視。
さらに、魔族内ですら起きている魔力持ちによる差別。
はっきり言って、ロクな人たちじゃない。
たぶんだけど、ヴラムみたいな人が抑えてなかったら、そもそも組織として成り立つことすらなかったんじゃないだろうか。
魔王復活とか色々言ってたけど、考えていることは、個人の野望や欲求ばっかりだったし。
(とはいうものの……これって、完全に『やらかし』だよね)
あんな組織だったとはいえ、テスタメントはいわゆる、『ヤミヒカ』の悪役たちの組織。
それが無くなるというのは、ゲーム内イベントの大半が消滅する事になり、それはつまり、何もしなければバッドエンド直行の『ヤミヒカ』の世界では致命的だ。
アオイさん曰く、大した問題ではないそうだけど、この後どうするべきなのだろうか。
「ちなみに、裏で色々と手を回しておきましたので、テスタメント関係者の素性は、『全員が謎』となっています。なので、テスタメント関連で追及されることはないので安心してください」
おお、それは助かる。
全部公になったら学校にも行けなくなる。
勉強はどうでもいいけど、エミルに会えないのはちょっと寂しい。
「組織がなくなってもあんな奴らを庇うなんて、貴方も物好きね」
「理由は他にもありますが、テスタメントへの義理を果たそうと思っただけですよ。とはいっても、今後はもう庇うつもりはありませんので、プライドの高いワズル公爵は、近いうちに勝手に行動を起こして自滅するかもしれませんね」
そう言いながら、アオイさんに匹敵する、わるーい笑いをするヴラム。
たまに、アオイさんとヴラムが、ロナードから腹黒要素を吸収したんじゃないかと思えてしまう。
「今後も残党の小規模な反発はあるでしょうが、まあ私や公爵の後ろ盾もなくなりますし、大した事はできないでしょう。ルーゼンシュタイン家の屋敷にも、嫌がらせに来ませんでしたか?」
「来たわよ。『丁重に』お引き取りいただいたけど」
ああ、屋敷の入り口で爆発やら、銃声がしたと思ったらそういうことだったのか。
丁重とはいったい……
「ただ、中には魔王としてじゃなくて、レムリアに付いてきたいって人もいたから、うちの領土で色々と手伝ってもらってるわ。うちの領土は、徐々にだけど魔力に依存しない体制ができてきているから、魔力が弱い魔族には、『こんな街』より居心地がいいでしょうね」
「……耳が痛いですねぇ」
宰相として、魔力至上主義の緩和に取り組んでいるものの、全然成果を出せていないヴラムが、してやられたとばかりに苦笑する。
テスタメントも、ヴラムの野望も、なんなら別館とはいえヴラムの住む家まで完膚なきまで破壊したのに、さらに攻めていくアオイさんのどSっぷり。
素敵すぎると思いつつ、ちょっとヴラムに同情する。
「本来なら、館とそこにあったものの賠償とか、今回の件で私に起きた悲劇や国王を誤魔化した巧みな話術などで、数時間お話したいところですが……」
お茶を飲みながら、負けじと嫌味を混ぜつつ話すヴラム。
だが、急に真面目な目になりこちらを見つける。
「……単刀直入に聞きましょう。貴方達は何者ですか?」
……やっぱりきた。
そりゃそうだよね。アオイさんは私のこと『葵』って呼んじゃったし、私もアオイさんのことを『レムリアさん』って呼んじゃったし。ていうか、今の私達、絶対に主人と執事には見えないし。
なんとか上手く誤魔化す方法を……
「え、えっとですね……」
「私たちは、体が入れ替わっているわ。私は、異世界人であるアオイ・ヒメカワの体を持つ、レムリア・ルーゼンシュタイン。レムリアが、レムリア・ルーゼンシュタインの体を持つ、アオイ・ヒメカワよ」
「そうそう、そうなんですよ~」
さすがアオイさん。
単純明快で分かりやすいですね~あははは~♪
「……何言ってるんですか~!」
「あまり騒がないで。体だけとはいえ、貴女はルーゼンシュタイン家の人間なのだから。もう少し気品を持ちなさい」
「あ……はい。えっと……何しちゃってくれてますの~!」
「……後で再教育。今日は眠れないと思いなさい。」
「ひ、ひどい! どちらかというと、今やらかしてるのって、アオイさん……ていうか、レムリアさんですよね! ねぇ!」
「じゃあ、貴女がこの状況を完璧に説明してみなさい。ちなみに私は貴女の執事だけど、今後もヴラムも呼び捨てにするわ。もちろん敬語も使わない。付け加えるなら、私はこの男がムカついたからって理由で、ぶん殴ってるわよ」
「ちょっ、何してくれてるんですか!」
「まあ、私はアオイ嬢だけじゃなくて、貴女にも殴られたり投げられたりしていますけど」
「ごめんなさい!」
「……そこは素直に謝るのね」
「おいおい、それを言うなら俺なんて殺されかけたんだぜ? いい年なんだから、女にやられたぐらいで文句言うんじゃねえよ」
「そうですよ! というわけで、できれば許してくれるとありがたいです!」
「……前々から思っていたけど、貴女って結構いい性格しているわよね。ああ、褒めてないわ。むしろ軽蔑してるから」
きっちり希望を潰しにくるアオイさん。
ちょっと軽く泣きたいが、今やるべきなのは言い訳だ。
この状況を上手く説明するとしたら……
「……うちの執事はちょっと、狂暴なんです。そんな執事が怖いので、自然と私が敬語になるんです」
「ははっ! そりゃ、敬語になるのもしょうがねえなぁ!」
お、スコールには好評だし、これは思ったより信憑性ありなのでは?
ヴラムも強く頷いてるし!
「やりましたよ、レム……アオイさん!」
「……そうね、よくやったわ。頭を撫でてあげるからこっちに来なさい」
「わーい……って、そんな本気の魔力溜めた手で撫でられた、頭破裂しますから! スイカもびっくりに爆発しますから!」
「まあ、この子への躾は後にするとして……貴方には、この子が今でも、レムリア・ルーゼンシュタインに見えるというの? それだったら、私を、妄言を吐く不敬な庶民として罰するといいわ」
「躾ってなんですか! あ、ちなみに、レムリアさんを捕まえるなら、私が相手しますから!」
そんな私たちを見て、ふかーい溜息をつくヴラド。
「……貴女たちのやり取りで、レムリ……混乱するので、アオイ嬢と呼びますか。アオイ嬢が言っていることが、嘘と言うには早計だということを理解しました。たしかに、魔王の力を得てからのレムリア嬢は、私の知るレムリア嬢とは違いましたし、明らかに様子がおかしかったですから」
そうそ……え?
そんなに様子がおかしかった?
そりゃ、完璧なレムリアインストールじゃなかったけど、個人的には80点ぐらいは取っていたと思うのだけど。
ここは抗議を……しようと思ったけど、おそらく私の考えていることを見抜いたアオイさんが、無言で「余計なことを言ったら殺すわよ?」みたいな目で睨んできたのでやめておく。
「詳しい説明を頂いても?」
「推測もあるし、言えない部分もあるわよ」
「それで構いませんよ」
「それならいいわ。まずは……」
「……」
「……安心なさい。伝わらない内容は外すし、必要なことしか話さないから」
「は、はい……」
……良かった。
さすがに、私の世界では、あなたたちは『ヤミヒカ』というゲームの登場人物として知られていますというのは、色々な意味で伝え辛い。
――そして、アオイさんは話し出す。
アオイさん……レムリア・ルーゼンシュタインは、儀式の際に魔王の声が聞こえた事。
そしてその瞬間に、ふたつの世界の私と『私』が、同じ内容を……『世界を変えたい』と考えた事。
その瞬間に世界が揺れ始め、目を開けたら互いの体が入れ替わっていた事。
おそらく魔王の力と魔力がそれぞれの体に宿っていること。
――順々に話していった。
「はい……」
魔王を崇拝する秘密組織、『テスタメント』の本拠地兼秘密基地ともいえる場所である、ヴラムの屋敷の庭に集まる私たち。
ちなみに私の座っている場所からは、私がアポカリプスで破壊した屋敷が良く見える。
……うん、これ絶対嫌味だ。
ちなみに、おそらく跡地から掘り出したであろうボロボロの机には、うちで使っているやたら豪華なティーカップやら、高級お茶菓子が並んでいる。
……うん、これ絶対、「話したいことがありますので、必ず来てください♪」と何食わぬ顔で言ってきたヴラムへの、アオイさんからの嫌味だ。
「……その前に、聞きたいことがあるわ」
今回の一件で、本来の口調がばれたアオイさんは、もはや敬語を使おうともしない。
私にも、好きになさいと言ってくれているので、気が楽ではあるのだが、おそらく、アオイさんが質問したい内容のせいで、完全に気が楽になれない。
「お、いいねぇ。ちゃんと質問してくる奴は、伸びしろがある証拠だぜ」
そして、『質問したい内容そのもの』が、いつもの調子で答える。
「……なんで、この駄狼がいるのかしら?」
そんなスコールを思いっきり無視して、ヴラムを睨むアオイさん。
「その点については後ほど。まずはテスタメントの現状から話しましょう」
……やっぱりきた。
最も触れてほしくない話題だけど、まあ、そうなるよね。
「魔王の力を持つという点で、形式上とはいえ、長だったレムリア嬢による解散宣言……一応、本拠地であったこの館の崩壊……それらによる、脱退と離反……事実上、奇麗さっぱりの壊滅ですね♪」
「えっと……ごめんなさい」
「謝る必要なんてないわ。この程度で崩壊するなら、遅かれ早かれ崩壊したでしょう。それに、あんな下種共を集めていても、害悪でしかない」
「それは俺も賛成だねぇ」
「……その下種の中に、貴方も入っているのだけど?」
「おお、怖っ! これは口を挟まない方がよさそうだねぇ」
そうは言っているけど、全然態度を変えないところをみると、明らかに口を挟む気満々だ。
思いっきり殺しあった仲だけど、なんだかいつものスコールのままでちょっと安心した。
……とは言っても、あとでちゃんと謝ることから始めないといけないけど。
(でも……テスタメントについては、申し訳ないけどアオイさんの意見に概ね賛成なんだよね)
魔族による人間の軽視。
さらに、魔族内ですら起きている魔力持ちによる差別。
はっきり言って、ロクな人たちじゃない。
たぶんだけど、ヴラムみたいな人が抑えてなかったら、そもそも組織として成り立つことすらなかったんじゃないだろうか。
魔王復活とか色々言ってたけど、考えていることは、個人の野望や欲求ばっかりだったし。
(とはいうものの……これって、完全に『やらかし』だよね)
あんな組織だったとはいえ、テスタメントはいわゆる、『ヤミヒカ』の悪役たちの組織。
それが無くなるというのは、ゲーム内イベントの大半が消滅する事になり、それはつまり、何もしなければバッドエンド直行の『ヤミヒカ』の世界では致命的だ。
アオイさん曰く、大した問題ではないそうだけど、この後どうするべきなのだろうか。
「ちなみに、裏で色々と手を回しておきましたので、テスタメント関係者の素性は、『全員が謎』となっています。なので、テスタメント関連で追及されることはないので安心してください」
おお、それは助かる。
全部公になったら学校にも行けなくなる。
勉強はどうでもいいけど、エミルに会えないのはちょっと寂しい。
「組織がなくなってもあんな奴らを庇うなんて、貴方も物好きね」
「理由は他にもありますが、テスタメントへの義理を果たそうと思っただけですよ。とはいっても、今後はもう庇うつもりはありませんので、プライドの高いワズル公爵は、近いうちに勝手に行動を起こして自滅するかもしれませんね」
そう言いながら、アオイさんに匹敵する、わるーい笑いをするヴラム。
たまに、アオイさんとヴラムが、ロナードから腹黒要素を吸収したんじゃないかと思えてしまう。
「今後も残党の小規模な反発はあるでしょうが、まあ私や公爵の後ろ盾もなくなりますし、大した事はできないでしょう。ルーゼンシュタイン家の屋敷にも、嫌がらせに来ませんでしたか?」
「来たわよ。『丁重に』お引き取りいただいたけど」
ああ、屋敷の入り口で爆発やら、銃声がしたと思ったらそういうことだったのか。
丁重とはいったい……
「ただ、中には魔王としてじゃなくて、レムリアに付いてきたいって人もいたから、うちの領土で色々と手伝ってもらってるわ。うちの領土は、徐々にだけど魔力に依存しない体制ができてきているから、魔力が弱い魔族には、『こんな街』より居心地がいいでしょうね」
「……耳が痛いですねぇ」
宰相として、魔力至上主義の緩和に取り組んでいるものの、全然成果を出せていないヴラムが、してやられたとばかりに苦笑する。
テスタメントも、ヴラムの野望も、なんなら別館とはいえヴラムの住む家まで完膚なきまで破壊したのに、さらに攻めていくアオイさんのどSっぷり。
素敵すぎると思いつつ、ちょっとヴラムに同情する。
「本来なら、館とそこにあったものの賠償とか、今回の件で私に起きた悲劇や国王を誤魔化した巧みな話術などで、数時間お話したいところですが……」
お茶を飲みながら、負けじと嫌味を混ぜつつ話すヴラム。
だが、急に真面目な目になりこちらを見つける。
「……単刀直入に聞きましょう。貴方達は何者ですか?」
……やっぱりきた。
そりゃそうだよね。アオイさんは私のこと『葵』って呼んじゃったし、私もアオイさんのことを『レムリアさん』って呼んじゃったし。ていうか、今の私達、絶対に主人と執事には見えないし。
なんとか上手く誤魔化す方法を……
「え、えっとですね……」
「私たちは、体が入れ替わっているわ。私は、異世界人であるアオイ・ヒメカワの体を持つ、レムリア・ルーゼンシュタイン。レムリアが、レムリア・ルーゼンシュタインの体を持つ、アオイ・ヒメカワよ」
「そうそう、そうなんですよ~」
さすがアオイさん。
単純明快で分かりやすいですね~あははは~♪
「……何言ってるんですか~!」
「あまり騒がないで。体だけとはいえ、貴女はルーゼンシュタイン家の人間なのだから。もう少し気品を持ちなさい」
「あ……はい。えっと……何しちゃってくれてますの~!」
「……後で再教育。今日は眠れないと思いなさい。」
「ひ、ひどい! どちらかというと、今やらかしてるのって、アオイさん……ていうか、レムリアさんですよね! ねぇ!」
「じゃあ、貴女がこの状況を完璧に説明してみなさい。ちなみに私は貴女の執事だけど、今後もヴラムも呼び捨てにするわ。もちろん敬語も使わない。付け加えるなら、私はこの男がムカついたからって理由で、ぶん殴ってるわよ」
「ちょっ、何してくれてるんですか!」
「まあ、私はアオイ嬢だけじゃなくて、貴女にも殴られたり投げられたりしていますけど」
「ごめんなさい!」
「……そこは素直に謝るのね」
「おいおい、それを言うなら俺なんて殺されかけたんだぜ? いい年なんだから、女にやられたぐらいで文句言うんじゃねえよ」
「そうですよ! というわけで、できれば許してくれるとありがたいです!」
「……前々から思っていたけど、貴女って結構いい性格しているわよね。ああ、褒めてないわ。むしろ軽蔑してるから」
きっちり希望を潰しにくるアオイさん。
ちょっと軽く泣きたいが、今やるべきなのは言い訳だ。
この状況を上手く説明するとしたら……
「……うちの執事はちょっと、狂暴なんです。そんな執事が怖いので、自然と私が敬語になるんです」
「ははっ! そりゃ、敬語になるのもしょうがねえなぁ!」
お、スコールには好評だし、これは思ったより信憑性ありなのでは?
ヴラムも強く頷いてるし!
「やりましたよ、レム……アオイさん!」
「……そうね、よくやったわ。頭を撫でてあげるからこっちに来なさい」
「わーい……って、そんな本気の魔力溜めた手で撫でられた、頭破裂しますから! スイカもびっくりに爆発しますから!」
「まあ、この子への躾は後にするとして……貴方には、この子が今でも、レムリア・ルーゼンシュタインに見えるというの? それだったら、私を、妄言を吐く不敬な庶民として罰するといいわ」
「躾ってなんですか! あ、ちなみに、レムリアさんを捕まえるなら、私が相手しますから!」
そんな私たちを見て、ふかーい溜息をつくヴラド。
「……貴女たちのやり取りで、レムリ……混乱するので、アオイ嬢と呼びますか。アオイ嬢が言っていることが、嘘と言うには早計だということを理解しました。たしかに、魔王の力を得てからのレムリア嬢は、私の知るレムリア嬢とは違いましたし、明らかに様子がおかしかったですから」
そうそ……え?
そんなに様子がおかしかった?
そりゃ、完璧なレムリアインストールじゃなかったけど、個人的には80点ぐらいは取っていたと思うのだけど。
ここは抗議を……しようと思ったけど、おそらく私の考えていることを見抜いたアオイさんが、無言で「余計なことを言ったら殺すわよ?」みたいな目で睨んできたのでやめておく。
「詳しい説明を頂いても?」
「推測もあるし、言えない部分もあるわよ」
「それで構いませんよ」
「それならいいわ。まずは……」
「……」
「……安心なさい。伝わらない内容は外すし、必要なことしか話さないから」
「は、はい……」
……良かった。
さすがに、私の世界では、あなたたちは『ヤミヒカ』というゲームの登場人物として知られていますというのは、色々な意味で伝え辛い。
――そして、アオイさんは話し出す。
アオイさん……レムリア・ルーゼンシュタインは、儀式の際に魔王の声が聞こえた事。
そしてその瞬間に、ふたつの世界の私と『私』が、同じ内容を……『世界を変えたい』と考えた事。
その瞬間に世界が揺れ始め、目を開けたら互いの体が入れ替わっていた事。
おそらく魔王の力と魔力がそれぞれの体に宿っていること。
――順々に話していった。
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